セイコー プロスペックス「マリンマスター 1968 ヘリテージ JAMSTEC コラボレーション限定モデル」の見どころは表情豊かなグラデーション文字盤

2026.07.08

セイコー プロスペックスは、砕氷船が北極海の氷を割り進むことで作られる「航路」から着想を得たグラデーション文字盤が特徴の「マリンマスター 1968 ヘリテージ JAMSTEC コラボレーション限定モデル」を発表した。文字盤全体に割れた氷を思わせるテクスチャーを設け、かつ澄んだ海のようなブルーのグラデーションを施している。本作が企画されることとなった経緯や、セイコーとJAMSTECとの関係性に触れつつ、着用感をはじめとした本作の完成度について解説する。

セイコー プロスペックス

佐藤しんいち:文
Text by Shin-ichi Sato
[2026年7月8日公開記事]


氷を切り開きながら北極海を進む様子をテーマとしたマリンマスターの限定モデルに注目

 今回注目するのは、国立研究開発法人海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)とのコラボレーションモデルとなる「マリンマスター 1968 ヘリテージ JAMSTEC コラボレーション限定モデル」である。本作は、セイコー プロスペックスのハイエンドシリーズである「マリンマスター」の中でも、1968年発表のモデルをトリビュートしたデザインをベースとして、海氷に覆われた北極海を切り開いてゆく様子を文字盤に表現している。文字盤のセンターは深く澄んだ海から着想を得たブルーであり、両サイドへ向かって海氷を表現したホワイトへと変化するグラデーションに仕上げている点が魅力となっている。それでは、本作のベースモデルの系譜と、JAMSTECとセイコーの関係性、そして北極海をテーマとした理由について解説しつつ、着用感や各所の仕上げについて深掘りしてゆこう。

セイコー マリンマスター 1968 ヘリテージ

セイコー プロスペックス「マリンマスター 1968 ヘリテージ JAMSTEC コラボレーション限定モデル」Ref.HBF002J
自動巻き(Cal.8L45)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42.6mm、厚さ14.1mm)。300m空気潜水用防水。世界限定1000本(うち国内250本)。55万円(税込み)。2026年7月10日(金)発売予定。

「マリンマスター 1968 ヘリテージ」につながる系譜をおさらい

 セイコーのダイバーズウォッチは1965年に誕生し、早くから南極地域観測隊で使用されて、信頼性を高めていった歴史を持つ。1968年に発表されたモデルでは、世界最高水準の毎秒10振動のハイビートムーブメントを搭載し、300m空気潜水に対応するようになる。また、頑強でエッジの効いたケースや、ケースサイドからラグにかけてのライン、4時位置のリュウズなど、その後のセイコーダイバーズウォッチのデザインに大きな影響を与える、様々な要素を備えていた。

300mダイバーズ

セイコーにとって、そして国産腕時計にとっても初となるダイバーズウォッチがリリースされた1965年から3年後、300m空気潜水用防水に加えて、3万6000振動/時の自動巻きムーブメントを備えたモデルが登場した。

 この1968年モデルを着想源とするのが、「マリンマスター 1968 ヘリテージ」である。

 マリンマスターとは、現在のセイコーダイバーズウォッチのフラッグシップであることを示す名だ。これまでセイコーは、開発のための試験装置の中だけでなく、海洋においてマリンマスターをテストし、フラッグシップと呼ぶにふさわしい性能であることを証明してきた。その中でも有名なのが、2014年に行われた飽和潜水用モデル(Ref.SBBN013とRef.SBDX011)を無人探査機「かいこう7000Ⅱ」に搭載して深海へと沈めるというものだ。猛烈な水圧に耐えながら、スペック値の水深1000mを大きく超える3000mまで作動する様子が動画に残されている。この試験および動画撮影に協力したのが、JAMSTECである。

 JAMSTECは海洋研究を通じて、地球環境や生命への理解を深める活動を行う国立研究開発法人である。地球環境の把握、海洋資源の利用、地震や火山活動に関する調査研究に加え、探査機や観測機器の運用、技術開発にも取り組んでいる。

 JAMSTECとセイコーは1980年代より協力関係を構築している。また、セイコーは、大いなる海への感謝の気持ちを込め、売り上げの一部をJAMSTECへの支援に充てており、海洋研究を通じた環境保護に貢献してきた。この支援の一環として、2025年からセイコーは、JAMSTECの北極域研究への支援を新たに開始している。

 マリンマスター 1968 ヘリテージ JAMSTEC コラボレーション限定モデルは、このようなセイコーとJAMSTECの関係と、近年の北極域研究への支援という背景を取り入れたモデルであるのだ。

極地探査の砕氷船が切り開く航路にインスピレーションを得たグラデーション文字盤

 2026年は、日本初の砕氷機能を備えた北極域研究船「みらいⅡ」が竣工する節目の年である。みらいⅡが北極域の研究に参加することで、海氷に覆われた海域でのデータ収集が可能となり、新たな成果が得られることが期待されている。

 今般のコラボモデルの文字盤は、これまでのセイコーによる支援活動や、みらいⅡの竣工を背景として、砕氷船が北極海に広がる氷を割りながら進み、そこに生まれる航路からインスピレーションを得たものだ。文字盤全体には割れた氷が広がるような、エッジが立ってランダムな形状のパターンが施されている。文字盤のセンターが深いブルーで、両サイドに向かってホワイトに変化するグラデーションとなっており、これは、氷の割れ目から澄んだ北極海がのぞき見える様子を表現している。

 筆者は本作の写真を見た際に、グラデーションの巧みさに好印象を持っていた。さらに実物を手に取ってみて、想像していたよりも立体的で表情豊かである点に驚いた。少し暗い環境では、センター部分のブルーが濃く、テクスチャーはほとんど見えない。この状態から、文字盤に光が当たるとブルーが明るく見え、その奥の割れた氷のようなテクスチャーが浮かび上がってくる。ホワイトへのグラデーションは、色が明るくなるのと併せて、テクスチャーがくっきりと見える様になっており、表情が変化してゆく点が特徴となっている。

 ベゼルインサートはブルーのセラミックス製で、特有の艶のある質感はモダンで美観に優れる。このブルーは発色が良く、本作がテーマとする澄んだ北極海にマッチしていて好印象であった。さらに、インデックスもくっきりとしていてコントラストは良好だ。

セイコー プロスペックス

オックスフォードシャツと組み合わせた着用例。優れた外装仕上げや、表情豊かなグラデーション文字盤など、デイリーユースに選びたくなるデザインで、幅広いコーディネートに合わせてみたくなる。ただし、ケース径42.6mm、厚さ14.1mmと大ぶりなので、袖への収まりには割り切りが必要だ。

エッジの効いたケース造形と、良好な着用感

 ケースはシャープなエッジと、研磨が施された平滑な面による、インパクトのある仕上がりだ。品質の高いこの研磨は、セイコーが得意とするザラツ研磨によるもので、本作を手にしたくなるストーリー性も備えている。防水性能は300mで、本格的なダイビングにも対応するものとなっている。

 本作の着用感について述べる前に断っておくと、筆者の手首は周長約18cmであり、大ぶりな本作のフィッティングに際して有利となる体格を持っている。そんな筆者が着用してみると、ズッシリとした存在感があるにもかかわらず、バランスが良くて着用感に優れているのを感じた。

 詳しく観察してみると、ラグ部分の手首からの浮きは少なくてフィット感が良いことと、大ぶりなケースと、太くて厚みのあるブレスレットの重量バランスが取れていることが効いているようだった。また、ケースの裏側は、ケースのサイドに向かって大きく斜面が取られており、着用した際に手の甲などへの干渉を回避している。短時間の着用であったが、手の甲にケースやリュウズが刺さったりすることなく、肌への当たりが優しいことが好印象であった。

セイコー プロスペックス

着用状態でケースサイド側から見た様子。手首周長約18cmの筆者であれば、ラグ部の浮きがなく、フィット感に優れていることが分かる。もう少し手首の細いユーザーにもフィットしそうである。また、ケースエッジ部分の斜面に施されたザラツ研磨は、平滑でキレがあり、本作のデザインの重要な構成要素となっている。

待望のスリムな長さ調整機能付きバックルが新採用

 着用感を語るうえでもうひとつ特筆すべきは、新開発の長さ調整機能付きバックルの搭載である。バックルの裏側には長さ調整用のスイッチがあり、ここに爪を引っ掛けて引っ張ると、ブレスレット全長が伸びる方向に固定部が動く仕組みだ。ブレスレット長さを縮める側にはスイッチの操作を必要とせず、着用してバックルを閉じた状態でも縮めることができる。着用状態のまま微調整できるので、タイトフィットを狙うことができる点は大きなメリットとなっている。

セイコー プロスペックス

筆者待望のスリムな長さ調整機能付きバックル。薄く、コンパクトな仕立てで、長さ調整も簡単だ。縮める側にはスイッチでの操作を必要とせず、着用状態で調整可能なので、タイトフィットを狙いやすい。

 この長さ調整機能付きのバックルは、板金製のシンプルでコンパクトなバックルに近いサイズ感となっている。大きく厚いバックルは、デスクワーク時にデスクと接触して不快感の原因となる。そのため、本作のようにコンパクトであること、特に薄い仕立てであることは、デイリーユースでの満足感の向上につながる。

完成度の高い自動巻きムーブメントCal.8L45を搭載

 搭載されるムーブメントは自動巻きのCal.8L45である。このムーブメントはセイコーの中で最新世代にあたり、本作以外にはキングセイコー「VANAC(バナック)」などに搭載される。パワーリザーブは約72時間であり、セイコーの現行メカニカルムーブメントとして最も安定した精度である日差+10~-5秒を実現するなど、申し分ないスペックだ。さらに、ダイバーズウォッチへの搭載を想定して開発されたため堅牢な仕立てとなっており、この堅牢さは日常生活における安心感につながっている。

レギュラーモデルとしてブラック文字盤モデルも発表

 JAMSTECとのコラボレーションモデルの発表と同時に、マリンマスター 1968 ヘリテージのレギュラーモデルとしてブラック文字盤のRef.HBF001Jもデビューしている。本作の文字盤は荒めの梨地仕上げが特徴だ。筆者はこの質感を見て、スポーツカーのメーターや、往年の工業用機械を思い浮かべ、ストイックな本作のテイストにマッチしていると感じた。コラボ限定モデルだけでなく、こちらも完成度の高い仕上がりであったので、要注目である。

セイコー プロスペックス

セイコー プロスペックス「マリンマスター 1968 ヘリテージ」Ref.HBF001J
自動巻き(Cal.8L45)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42.6mm、厚さ14.1mm)。300m空気潜水用防水。50万6000円(税込み)。2026年7月10日(金)発売予定。


フラッグシップにふさわしい完成度は店頭で要チェック

 今回の深掘りを通じて、マリンマスター 1968 ヘリテージ JAMSTEC コラボレーション限定モデルは、セイコーのダイバーズウォッチの系譜を引き継ぐケースデザインや、JAMSTECとの協力関係を反映した文字盤を持ち、本作の背景や世界観を楽しむことができる仕上がりであることが分かった。ケースに施されたザラツ研磨や、セラミックス製のベゼルインサートなど、外観品質も高い。性能面もフラッグシップにふさわしい300mの防水性能や最新世代のCal.8L45の搭載など、満足度が高い。

 スペック上ではケース径42.6mm、厚さ14.1mmと、大柄さに身構えてしまうかもしれない数値となっている。しかし、ケース形状や重量バランスの最適化、長さ調整機能付きのバックルの採用などによって、着用感に配慮した仕立てとなっている。本作のデザインに興味を持つ方や、セイコーダイバーズウォッチの歴史に心引かれる方は、ぜひ店頭でフィッティングしてみてほしい。



Contact info:セイコーウオッチお客様相談室Tel.0120-061-012


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FEATURES

セイコー プロスペックスが海洋研究開発機構(JAMSTEC)とコラボレーションした「マリンマスター」を発表

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