クロノス編集長、年差±1秒の新しい「ザ・シチズン」誕生を祝う/女性新米編集者のバーゼルワールド日誌 9

LIFE編集部ブログ
2019.04.05
 2018年、世界中の時計関係者に衝撃を与えた年差±1秒の超高精度クォーツムーブメント「Cal.0100(キャリバー ゼロイチゼロゼロ)」。多くの人が期待を寄せ、またシチズン自らも宣言していた通り、「Cal.0100」は腕時計への実装化を果たし、今回のバーゼルワールドで満を持してのお披露目となりました。
 これを祝い、シチズンのブースでは「Cal.0100」の開発者たちによるトークショーが開かれました。3月21、23日にはシチズン時計の時計開発部システム開発課の武笠智昭さん、同部設計課の森田翔一郎さんとともに、『クロノス日本版』編集長の広田雅将がステージに登壇。会場に集まった世界の時計ファンに向けてその魅力を語りました。





「Cal.0100」は、シチズンが創業100周年に向けて開発を進めた光発電エコ・ドライブのクォーツムーブメント。武笠氏や森田氏たち開発チームは、このクォーツに高振動で姿勢差誤差を生じさせないATカット型水晶振動子を採用し、回路には温度補正、衝撃時の針の自動補正機能、高耐磁性能といった要素を組み合わせ、4年近くの歳月をかけて年差±1秒という驚異的な精度を実現させました。この数値は、自立型のアナログ式発電腕時計としては世界最高精度を極めたもの。完成した「Cal.0100」は懐中時計のケースに収められ、コンセプトモデルとして2018年に発表されました。




 2019年へ向けた腕時計への搭載、量産化を目指し、開発チームはムーブメント設計の早い段階からデザイン部と協力。技術もデザインも最善を尽くすため、十分に練られた計画のもとプロジェクトは進行しました。そして再び「Cal.0100」は、装着性を求めた直径37.5mm、厚さ9.1mm(設計値)というケースサイズの、シチズン最高峰コレクション「ザ・シチズン」に搭載されるムーブメントとして改良が重ねられました。(デザイン面から再び最適化を目指した当時を、「設計者からすると大変だった」と笑って振り返るふたり)。





 完成した「ザ・シチズン」のディテールとして特筆されることに、その運針の美しさがあります。「秒単位で正確な時計」である光発電エコ・ドライブ電波時計を作って以降、秒針とインデックスが完全に重なることを命題とし、針付けの精度を上げてきた開発チーム。新しい「ザ・シチズン」の運針に関わる歯車とバネは、LIGA工法(微細構造物形成技術)によって緻密な成形が施され、歯車のバックラッシュが抑えられたことで、より正確な運針を実現しました。


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 またインデックスを1秒1秒しっかり指すために、手作業で先端が曲げられた真鍮製の分針と秒針には十分な長さが与えられています。広田はこの針の長さが示す技術力の高さについても詳しく言及。クォーツの振動数が3万2768Hzであることに対して、「Cal.0100」はその250倍以上にあたる838万8608Hzもの振動数を持ちます。クォーツムーブメントも機械式ムーブメントと同様に、振動数が上がれば精度は上がりますが、パワーリザーブが短くなるように、消費電力も上がります。開発チームは省電力化に加えて、輪列の負荷抵抗も徹底的に抑制。
その結果、フル充電時で約6ヶ月という稼働時間に加え、透過率を落として高級感を保ったエコ・ドライブの文字盤に、機械式時計に並ぶほどの太く長い針を取り付けることを可能としました。


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 広田曰くこの時計は、“電気自動車にしてスーパーカー”。
「チームで共有してきた『1秒の美学』への思いを存分にこの時計に込めることができました」と話すふたりに、「それを量産し、誰しもが手にすることを叶えたことは、新たなクォーツレボリューションとして歴史に刻まれることです」と、広田は賛辞を送りました。


写真:奥山栄一
文:高井智世