【meeting】フランツ・リンダー(ミドー プレジデント)

FEATUREその他
2018.07.11

Franz Linder
フランツ・リンダー

ミドー プレジデント。1967年、スイス生まれ。スイスのBB銀行、ベルナー・カントナル銀行、そして半導体メーカーのIDTを経て、95年、ミドーに入社。2002年より現職。ラインナップを統廃合するほか、中国市場に注力し、建築とのコラボレーションを強調することでミドーの業績とパブリックイメージを大きく改善した。
広田雅将(クロノス日本版):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

リアルウォッチファンを
増やすのが
ミドーの役割です

「ミドーは中国でリーディングブランドになりました。しかし、日本は最も重要なマーケット。だから日本市場に再参入を果たしました」。そう語るのはミドーのプレジデント、フランツ・リンダーだ。

「中国ではクラシックなモデルが売れるが、『オーシャンスター』や『マルチフォート』のようなスポーティーなモデルは日本でも支持されるでしょう。これらはレトロな見た目を持つだけでなく、アイコニックでもあります」

 今のミドーはスウォッチ グループの恩恵を受けて、良質な実用時計を作るに至った。加えて、彼が強調したように、ユニークなモデルが多い。実用時計だからといって、ユニークさを忘れていないところに、このブランドの面白さがある。しかし、2015年に再参入を果たして約3年ということもあり、日本での取り扱い店舗はまだ23のみだ。

「良い腕時計を作っていても、ビジビリティがないと認知されないので、取り扱い店舗を増やす予定です。ただ日本のマーケットは競争が激しいので、普及には時間が掛かるでしょう」。とは言いつつ、「取り扱い店舗をこの5〜10年で50〜100に増やしたい」と言うから、かなり野心的な計画だ。

「ブレゲなどのハイエンドブランドは居心地のよいブティックを作っていますが、私たちの顧客に望まれるとは限らないですね。というのも、ミドーはミドルレンジのブランドであり、普通の人々をターゲットにしているからです。普通の人にとって、ハイエンドなブティックの居心地は必ずしもよくないかもしれない。だからショップにドアは設けないつもりです。私たちはふらっと腕時計を見に来られるようなショップにしたいのです。顧客に対して、門戸は常に開けていたい」

 今の時計作りを続け、入りやすいショップを増やせば、なるほどミドーは日本でも支持されるに違いない。しかし、もうひとつ気になる点がある。2017年の1月1日に施行された、新しいスイスネス法だ。「ムーブメントの60%以上、外装の60%以上がスイス製(いずれもコストベース)でなければスイスメイドを名乗れない」という法律は、スイスのエントリークラスに大きな影響を与えつつある。現に、いくつかのブランドはモデル数を減らし、またリシュモン グループは、スイス製ではなくオランダ製の「ボーム」というブランドを立ち上げた。同じエントリークラスにあるミドーはどう対応するのか?

「私たちはスイスブランドです。今やオランダで製造したノンスイスのブランドなどもありますが、腕時計に1000ドル払う消費者ならば、スイスメイドを選ぶのではないですか。ブランドはクォリティに注力すべきであって、スイスメイドは、そのひとつの基準でしょう。私たちは以前もスイスメイドの基準を満たしていましたし、これからも変わりません」

 今後も、この価格帯とスイスメイドをキープすると語るリンダー。「最初に買った時計が、魅力的な機械式腕時計ならば、顧客はやがてリアルウォッチファンになってくれるかもしれません。そういう層を掘り起こすのが、ミドーの役割でもあると思っています」。

(右)往年の傑作を復活させたのが「マルチフォート デイト メーター リミテッドエディション」。直径40mmというサイズを感じさせないのは、大ぶりな専用のリュウズを与えたため。この価格では珍しい試みだ。ETAがミドー専用に開発したムーブメントを搭載する。この価格で、フリースプラング+ロングパワーリザーブは驚異的だ。自動巻き(Cal.80/C07.121ベース)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。SS+ローズゴールドPVD(直径40mm)。5気圧防水。重さ63g(レザーベルト込み)。世界限定1918本。15万円(税別)。(左)オリジナルの「マルチフォート デイトメーター」。


好事家を刺激するのが「コマンダー シェイド スペシャルエディション」。1970年代に発表されたコマンダーのほぼ完全な復刻版である。ドーム型の風防は、サファイアクリスタル製ではなく、昔懐かしいアクリル製。写真では確認できないが、風防中央に刻まれた「Mido」という刻印まで再現している。実用メーカーらしく、ミドーは時計の重さも公開する。本作は85g(メッシュベルト込み)。自動巻き(ETA2836-2)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS+ローズゴールドPVD(直径37mm)。5気圧防水。11万7000円(税別)。


Contact info: ミドー/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7190