細部の作りを追求した 復刻老舗スニーカー「42 Jackie」/コニサーズ・チョイス

LIFEIN THE LIFE
2020.08.29

市場から消えていた米国シューズブランド「ボールバンド」。クラシックな製法を踏襲しながら、快適なインソールに改良。シューズプロデューサー長嶋正樹氏の情熱が現代によみがえらせたスニーカーだ。

倉野路凡:文 Text by Rohan Kurano
吉江正倫:写真 Photographs by Masanori Yoshie


ボールバンド スニーカー 42 Jackie

ボールバンド スニーカー「42 Jackie」
ボールバンドのスニーカーはハイカットモデルの「42 Jackie」とローカットモデルの「16Charles」の2型で展開される。共にバルカナイズ製法で、トリプルクッションインソールを採用しており、アッパーの素材にはキャンバスとレザーがある。写真は「42 Jackie」のネイビーレザーモデル。2万2000円。


細部の作りを追求した 復刻老舗スニーカー

 ボールバンド(BALL BAND)」初の店舗が今年6月、東京にオープンした。ボールバンドとは日本ではあまり知られていないが、1891年、いわばスニーカーの黎明期に米国インディアナ州北部ミシャワカで創業した老舗シューズブランドだ。当初はラバーブーツを生産していたが、1950年代には“レッドボール”マークをアイコンとする同社のスニーカーが一世を風靡するようになる。しかし1970年代に合理化が進むようになると手の込んだ作りは時代に対応できず、市場から姿を消してしまう。再びボールバンドが登場するのは、2008年のこと。シューズプロデューサー長嶋正樹氏が商標登録後に一時復刻させ、本格的な復刻を2017年秋の展示会にて果たした。

 米国靴好きの長嶋氏は出張のたびにBFグッドリッチが生産していたジャックパーセルやPFフライヤーズ、ケッズなどを買い集めた。その中にボールバンドのスニーカーがあり、佇まいがとても気に入ったそうだ。

 このスニーカーの特徴は、1840年頃に発明された“バルカナイズ製法”にある。液体状のゴムを急加熱、硬化させて素材同士をダイレクトに圧着させる方法であり、アッパーとソールの異なる素材の一体化を可能とする。一般的な接着剤を使用するスニーカーに比べてしなやかで、屈曲運動にも強いのがポイント。しかし長年履いていると、屈曲する箇所のホクシングテープが“パカッ”と浮いて剥がれてしまう点がこの製法の唯一の欠点だ。そこでこのレザーモデルではホクシングテープ上部にステッチを施すことで剥離を防いだ。依頼した工場がオパンケ製法(カップ状のソールをアッパーに被せるように縫い付ける製靴法)のスニーカーも生産していたため、可能だったのだ。

 さらなる特徴は、トリプルクッションインソールだ。オリジナルを継承しながらも汗を下方に落とす仕組みなど、現代的な快適さをも加味。中央部を低反発、踵部を高反発に改良することでより疲れにくくしている。ヒールの高さを確保するため、インソールとカップインソールで10mmの高さをつけた。ちなみに、アッパーに定番のキャンバスではなく、柔らかなシュリンクレザーを用いたモデルでは、熱を加える製法ゆえ、レザー選びがことさら難しかったそう。シンプルでありながら、細部を追求したスニーカーをぜひおすすめしたい。


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