ノルケイン ビバーと若き才能たちが実現させた新世代のスポーツアイコン

FEATURE本誌記事
2022.10.07

2022年6月に緊急発表されたジャン-クロード・ビバー顧問就任の報に続き、ノルケインがまた驚くべきニュースをもたらした。ニューモデルの「ワイルド ワン」は、アイコンである「インディペンデンス」のスタイリングに沿いながら、軽量かつ高い耐衝撃性を備えたまったく新しいケース構造と、それを実現する新素材で成り立っていたのだ。若き才能に共感したビバーをメンターとして迎え入れたノルケインの、新たなスタートを象徴するモデルだ。

ノルケイン「ワイルド ワン」

Edited & Text by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2022年11月号掲載記事]


新たなスタートを象徴する、ノルケイン「ワイルド ワン」

ノルケイン「ワイルド ワン」

 いまスイス高級時計産業で、最もホットな存在と言えばノルケインだろう。ブライトリング出身のベン・カッファーがCEOとなって、2018年に起ち上げたばかりの独立系ブランドだが、創設メンバーにはシュナイダー家のテッド・シュナイダーや、元NHLプレイヤーのマーク・ストライトが名を連ねている。会長職は元ロベンタ・へネックスCEOのマーク・カッファーだ。

 ノルケインという若きブランドは、2年ごとに驚くべきニュースを運んでくる。創業2年後の2020年には、同じく新興のエボーシュメーカーであるケニッシと長期的なパートナーシップを発表。NN20/1とナンバリングされた11ハーフリーニュの新ムーブメントは、発表時点ではノルケインエクスクルーシブとして取り扱われた。

ノルケイン「ワイルドワン」

 その2年後となる今年、同社は顧問として、ジャン-クロード・ビバーを迎え入れたことを発表したのである。ビバーのサポートによって同社は、100%スイスメイドとなる新たなサプライヤーチームを構築。まったく新しいスポーツウォッチ像を提案する「ワイルド ワン」を生み出すに至った。

 ビバーのもたらした最大の福音は、コンセプトワークからデザイン、素材開発を担うこととなったビィウィ社とのコラボレーションだろう。交換用のストラップメーカーとしても著名だが、本業はラバー、工業用プラスティック、シリコンなどの総合メーカー。2020年代のスイス時計産業における新素材として登場したスーパービウィノバ®(斜面にも塗布可能な蓄光塗料)やチタカーボ®などの商標もすべてビィウィが所有するものだ。

ジャン-クロード・ビバー

約2年前から若きノルケインの才能たちをサポートし、2022年に正式な顧問契約を発表したジャン-クロード・ビバー。「ブランドの精神を体現した、軽量で高い耐衝撃性を持ったイノべーションの開発を提言し、自らもチームに加わりました」。

ディーン・シュナイダー

野生動物の保護活動を続けるノルケイナーのひとり、ディーン・シュナイダー。ノルケインは2021年7月、動物由来の部品を一切使用しないと宣言。新製品の開発ではレザーストラップを使用しない(既存モデルからは段階的廃止)と明言した。

 ビィウィがワイルド ワンのために開発した新素材は、表面に大理石のような模様を持つカーボン複合材「ノルテック」だ。重量はスティールの約6分の1、チタンでは約3分の1。軽量かつ高剛性というカーボン素材の特徴に加え、ノルテックはバイオ由来原料を約60%含むポリマーマトリックスを用いることで、さまざまな発色を可能としている。ワイルド ワンでは、ラバーで作られるラグ一体型のミドルケースを、ノルテック製のケージで覆うことで、従来にないスポーツウォッチを完成させた。ダイアル側のケージは、ベゼルとラグ上面が一体成形、ケースバック側も同様に、ラグ下面が一体成形となっている。このノルテック×ラバー製の外装に、チタンコンテナで覆ったNN20/1を載せているのだ。

ワイルドワンの展開図

従来機から約50%の軽量化を達成したワイルド ワンの展開図。両面にサファイアガラスを設けたチタンコンテナにムーブメントを載せ、ラバー製のショックアブソーバーとノルテックケージで象った外装パーツで覆う構造。耐衝撃性は約5000G。

 ケース単体の重量は約84gで、これはスティール製ノルケインウォッチの約半分。それでいて耐衝撃性は約5000Gをクリアする。チタンコンテナの製造とケースの組み立て(ケース両面のサファイアガラスはチタンコンテナに直接取り付けられる)はMRP社の担当。また0.05mmずつの高低差で3層のNNロゴを刻み込んだレーザーカットダイアルはモントレモ社、スケルトナイズが施された時分針はHMS社で製造。ミラネーゼパターンを刻んだヴィーガン認定のラバーストラップはもちろんビィウィ製となる。

Cal.NN20/1

2020年からノルケインエクスクルーシブとして供給されている小径のCal.NN20/1。直径は26mmで、C.O.S.C.クロノメーターを取得。耐衝撃性に優れた両持ちのバランスブリッジを備え、フリースプラング式の調速装置を搭載する。

 ワイルド ワンは、ローンチコレクションとして4モデルが同時発表されたが、そのうちの1本にはバーガンディカラーのノルテックケージを採用。ミドルケースやリュウズ表面のオーバーコート部分はラバー製なのだから、カラーバリエーションは無限に作れるといってもいい。今年はブラックとバーガンディのみだが、23年以降はノルテックのカラーバリエーションも増やすという。スイス屈指となるプレミアムサプライヤーとの密接な連携と、ジャン- クロード・ビバーのサポートを得た若き才能たちは、これからも進取の創造に挑んでゆくに違いない。

ノルケイン「ワイルド ワン」
ノルケイン「ワイルド ワン」
Wild ONE
ノルケインのアイコンである「インディペンデンス」のスタイリングを、超軽量のマルチマテリアルケースに凝縮させたニューモデル。自動巻き(Cal.NN20/1)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ブラックノルテック×カーキラバー(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。76万6700円(税込み)。
ノルケイン「ワイルド ワン」
ノルケイン「ワイルド ワン」
Wild ONE
特殊ラバー製のショックアブソーバー(ミドルケース)をブルーで成形したカラーバリエーション。ベゼル内周にもラバーが覗く。自動巻き(Cal.NN20/1)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ブラックノルテック×ブルーラバー(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。76万6700円(税込み)。
ノルケイン「ワイルド ワン」
ノルケイン「ワイルド ワン」
Wild ONE Hakuna Mipaka Limited Edition
サンドカラーのラバーを用いたディーン・シュナイダーとのコラボレーションモデル。ハクナミパカの砂で表現されたこの色は、表面に独特な斑点模様を見せる。自動巻き(Cal.NN20/1)。ブラックノルテック×サンドラバー(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。世界限定500本。78万8700円(税込み)。

ノルケイン「ワイルドワン」

Wild ONE Limited Edition
バーガンディカラーのノルテックケージを用いた限定モデル。特殊なポリマーマトリックスは約60%がバイオ由来成分で、さまざまな発色が可能となる。自動巻き(Cal.NN20/1)。バーガンディノルテック×グレーラバー(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。世界限定200本。79万9700円(税込み)。



Contact info: ノルケインジャパン Tel.03-6864-3876


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