争奪戦必至! KURONO TOKYOは何分で完売している? 人気モデルの〝瞬殺〟ランキングTOP5

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2022.12.14

独立時計師、浅岡肇のサブブランドであるKURONO TOKYO(クロノ ブンキョウ トウキョウ)。主にブランド公式サイトのみで販売される時計たちは、そのほとんどが数量限定ゆえ、入手難易度が高いことで知られている。発売の度に繰り広げられる争奪戦は、果たしてどれほどの激しさなのか。その実態に迫るべく、独自の調査に基づき、完売までの時間をランキング化した。また、最後に競争が熾烈を極める同ブランドをどのようにして購入するか、そのコツを記載する。

クロノブンキョウ 34mm

野島翼:文 Text by Tsubasa Nojima
2022年12月14日公開記事


KURONO TOKYOと浅岡肇とは?

 スイス独立時計師アカデミー(AHCI)の正会員として活躍し、今年11月には、厚生労働省が選出する卓越技能章、“現代の名工”に選出された独立時計師、浅岡肇。そんな浅岡のキャリアは、意外にも時計師ではなくデザイナーが起点である。

 東京藝術大学美術学部デザイン科を卒業した浅岡は、1990年代にプロダクトデザイナーとして活動を開始。3DCGをはじめとする当時の最先端技術を習得し、有名ブランドのグラフィックデザインも手掛けていく。

浅岡肇

東京時計精密の代表を務める浅岡肇。1965年、神奈川県茅ヶ崎市で誕生。幼少より機械いじりに興味を示していた浅岡は、プロダクトデザイナーの仕事を通じ、やがて世界的に有名な独立時計師となる。

 転機は、時計専門店「TiCTAC」より舞い込んだ時計デザインの依頼であった。この仕事を通じて、時計を作り上げるということに魅せられた浅岡は、独学で時計製作を開始。時計師としての基礎が形作られていった。

 その後の活躍は、多くの人が知るところである。時計師としての顔に注目されがちだが、キャリアの原点でもあるデザイナーとしての顔は、現在も失われてはいない。

 そんなデザイナーとしての一面が光るのが、浅岡肇のサブブランドKURONO TOKYO(クロノ ブンキョウ トウキョウ)である。2018年にCHRONO TOKYO(クロノトウキョウ)として日本国内で展開され、19年には海外向けにKURONO TOKYOのブランドが誕生している。

 設計とデザインを浅岡氏が担当し、協力会社によって製造される同ブランドの時計は、主に20~40万円代という価格帯ながら、妥協のないクオリティを与えられている。世界で実力を認められた独立時計師がデザインした時計を手頃な価格で入手できるとあって、今や世界が注目するブランドに成長した。


世界が注目するKURONO TOKYO。待望の“瞬殺”ランキングTOP5

 販売方法は、公式サイトによる通信販売を主とする。事前に販売開始日時が公開されるが、ほとんどのモデルは数量限定。限定数量は公開されているもので数十から数百本。それを世界中のコレクターが狙っているものだから、モデルによってはものの数分で完売してしまう。

クロノトウキョウ

 販売開始後のSNSには、運よく買えた者、残念ながら買えなかった者たちの悲喜こもごもの投稿であふれかえるのが恒例だ。年に数回行われるそのお祭り騒ぎは、ブランド立ち上げから数年が経過した現在でも、収まるどころかますます加熱しているように感じる。

 さて、1回でもこのレースに参加したことのある方であれば気にならないだろうか。“果たして、どのくらいの早さで売り切れてしまうのだろうか?”と。

 そこで今回、同ブランドの公式フェイスブックでの公表数値と、クロノス日本版による情報を基に、販売開始から完売までの早さを上位5モデルまでランキング形式でまとめた。

 あらかじめ断りを入れておくと、このランキングはブランド公式の見解(ランキング)ではない上に、もちろん特定のモデルの優劣や価値を表すものでもない。その点をご留意の上、どうか肩の力を抜いて、ゆるりと読んでいただけるとうれしい。


第5位:クロノグラフ2(約3分30秒で完売)

 第5位は、2021年に発売された「クロノグラフ2」。コンプリケーションシリーズに属する本作は、いわゆるパンダダイアルと逆パンダダイアルの2種が用意され、各色わずか68本が販売された「クロノグラフ1」のダイアルバリエーションにあたる。

クロノグラフ2

KURONO TOKYO「クロノグラフ2」
ツートンのブラックダイアルにカッパーカラーのスケールがクラシカルなクロノグラフ。コンパクトな38mm径のケースと、ヴィンテージクロノグラフに着想を得たディティールの数々は、多くのファンを虜にした。自動巻き(Cal.NE86)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径38mm、厚さ13.9mm)。3気圧防水。世界限定500本。41万8000円(税込み)。完売。

 コンパクトな38mm径のケースに、ヴィンテージクロノグラフを想起させるディティールを盛り込んだ「クロノグラフ1」は、2020年のGPHGクロノグラフ部門ノミネート作にも選出。同ブランドへの注目を更に高める結果をもたらした。

 ブラックダイアルを持つ「クロノグラフ2」はそんな背景を踏まえてか、限定数量500本と同社としては多めに用意されたが、ブランド公式フェイスブックの発表によると、その全量が3分30秒で完売。

 更には、二次流通市場でも高額で取引され、世界的に有名なオークションであるアンティコルムでは、定価の3倍を超える約132万円で落札されたほどの人気ぶりを見せつけた。

 ダイアルは中央と外周部をダークブラウン、その間をグロスブラックとしたツートン仕様。カッパーカラーのタキメーター兼パルスメーターは、一段下がったインダイアル上も歪みなくプリントされている。

 搭載するムーブメントは、セイコーの自動巻きクロノグラフCal.NE86。マジックレバーによる両方向巻上げと、コラムホイールと垂直クラッチを備えた実用的なムーブメントであったが、それゆえにケースは約14mmの厚さを持つこととなった。

 同種のムーブメントを搭載した時計を考えると、14mmは決して厚過ぎる訳ではない。しかし、コンパクトなケース径とのデザインバランスを更に突き詰めた結果、その執念は数値上および視覚的な薄型化を果たし、2022年の「クロノグラフ1 Mark2」に結実する。


第4位:クロノグラフ2ホワイト(約3分で完売)

 続いて第4位にランクインしたのは、「クロノグラフ2ホワイト」。生産本数は非公開ながら、クロノス日本版編集部の調査によると、完売までの時間は約3分。

クロノグラフ2ホワイト

KURONO TOKYO「クロノグラフ2ホワイト」
当初はブラックダイアルと同時発売の予定であったが、ムーブメント調達の都合上、登場が遅れたホワイトダイアルモデル。後発としてのメリットを生かし、より完成度を高めた状態でリリースされた。爽やかなダイアルは、サンドブラストしたベースに銀メッキを施し、さらにクリアを厚く吹くことで、深みのある光沢と耐候性を与えられている。自動巻き(Cal.NE86)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径38mm、厚さ13.9mm)。3気圧防水。数量限定。42万8000円(税込み)。完売。

 今作はその名の通り、第5位の「クロノグラフ2」のホワイトダイアル版として、2022年に発売されたモデルだ。ブラックダイアル同様のツートンカラーでありながら、スケールにレッドを取り入れることで爽やかな印象に仕上がっている。

 同ブランドのクロノグラフがここまでの人気を誇るのは、ヴィンテージウォッチコレクターでもある浅岡氏の知見がふんだんに盛り込まれているからだろう。ダイアルは外周に向かって緩やかなカーブを描くボンベ型を採用し、その上にはアクリル風防を思わせるボックス型サファイアクリスタルが取り付けられている。

 38mm径のケースは、現代のクロノグラフではなかなか見られないコンパクトサイズだ。そこから伸びる2本のプッシャーは、繊細さと操作性を兼ね備えるポンプ型。リュウズは従来の3針モデルよりも高さを抑えたものが採用されている。

 一段下がったインダイアルは、はっきりとした輪郭を持ち、それぞれ異なる形状を与えられた5本の針は、視認性を高めるための意匠だ。

 同ブランドのラインナップを見ても、当然ながら複雑機構を搭載したクロノグラフは高額な部類だ。しかしながらこれほどの注目を浴び続けているのは、それ以上に高いクオリティが、コレクターたちを満足させているからだろう。


第3位:グランド茜(約1分30秒で完売)

 第3位は、2020年に発売された「グランド茜」。漆ダイアルを採用したグランドシリーズは、同ブランドの上位機種にあたる。本作の製作本数は200本。公式フェイスブックの情報によると、それらが僅か1分30秒で完売したというのだから驚きだ。

グランド茜

KURONO TOKYO「グランド茜」
職人の手作業による漆ダイアルを与えられた、グランドシリーズの記念すべき1本目。茜色の夕日を想起させるダイアルは透き漆の技法を用いたもの。6時位置にモデル名の漢字を配しているのは、シリーズ共通の意匠だ。自動巻き(Cal.90S5)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径37mm)。3気圧防水。世界限定200本。35万円(税込み)。完売。

 機能はシンプルな時刻表示のみだが、ダイアルのデザインはそれまでと大きく異なる。インデックスは、細長いフォントのコンセントリックアラビア。6時位置には“茜”の文字がプリントされている。ミニッツサークルを廃することで、よりシンプルさを増したダイアルは、漆の質感を存分に堪能できるものだ。

 ダイアル上に広がるのは透き漆の技法を用いた波文パターン。透き漆は、その名の通り半透明の漆であり、これを何層にも塗り重ね研ぎあげることによって、強靭かつ透明感のある神秘的なダイアルに仕上げている。見る角度や光の当たり具合によって、多彩な表情を見せる、まさに工芸品と呼ぶにふさわしい1本だろう。

 ケースバックには、浅岡の落款をモチーフとしたデザインが施され、グランドシリーズならではの特別感を味わうことができる。


第2位:森(約1分で完売)

 2020年に発売された「森」が、第2位にランクイン。本作は、KURONO TOKYOのブランド創立1周年を記念したモデルだ。288本が生産され、クロノス日本版編集部が独自に入手した情報によると、なんと僅か1分足らずで完売したとのこと。

クロノブンキョウ 森

KURONO TOKYO「森」
KURONO TOKYOのブランド創立1周年を記念したモデル。ブランドを象徴するスタンダードなデザインと、トレンドであるグリーンダイアルの組み合わせは、世界的オークションでも高値で取引されるほどの注目作であった。2020年のGPHGチャレンジ部門ノミネート作。自動巻き(Cal.90S5)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径37mm)。3気圧防水。世界限定288本。1790USD。完売。

 ブランド中で最もシンプルな、クラシックシリーズに属する本作は、3・6・9・12時位置に長めのバーインデックスを配し、それらを3つのリングでつないだような、同ブランドを象徴するデザインを持つ。

「森」という名前が示す通り、見る者に安らぎを与えるグリーンダイアルには、繊細なサンバースト仕上げが施され、さながら木漏れ日のようだ。本作は2020年のGPHGチャレンジ部門にノミネートされ、世界的オークションであるクリスティーズでは定価の約6倍で取引される等、その人気の高さがうかがえる。

 なお、2022年には漆ダイアルを採用した「グランド森」が発売されたが、こちらは12分間の時間限定販売であった。透き漆を幾重にも施し、砥石と磨き粉を用いて研ぎあげられたダイアルは、多くの人の目を喜ばせたに違いない。

 あくまでも筆者の推測だが、あえて数量限定としなかったのは、「森」を入手できなかったファンにも十分に行きわたるようにという、ブランドの計らいなのではないかと思う。


第1位:34mm(1分未満で完売)

 そして第1位は、文字通り“あっ”という間に完売した「34mm」だ。2022年7月に発売された本作は、「森」同様に1分と待たずに売り切れてしまったという。モデル名が示す通り、ケースサイズはブランド最少の34mm。既存のラインナップには見られなかったレトロなカラーダイアルを特徴としており、全4色、各色80本の合計320本が用意された。

34mm クロノトウキョウ

KURONO TOKYO「34mm」
ヴィンテージウォッチの風合いを残しながら、普段使いに適したスペックを備えた小径モデル。4種類ものカラーバリエーションが用意され、渋谷で実機展示が行われる等、ブランドとしても初の試みを盛り込んだ意欲作である。自動巻き(Cal.90S5)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径34mm)。5気圧防水。各色80本限定。15万円(税込み)。完売。

 加えて本作はブランド初の試みとして、実機の展示も行われた。場所は、東京都渋谷のRAYARD MIYASHITA PARK TOKYO。渋谷という土地柄か、時計コレクターのみならず、行き交う多くの人々からも注目を集め、ブランドの存在感を示す機会にもなった。

 これまでのクロノブンキョウトウキョウとは一味違った、懐かしさと共に新鮮さも覚えるデザインと、展示による新規ファンの獲得が、結果として高い競争率につながったのではないだろうか。

 特別企画として製作された本作は、上述したケースサイズやカラーダイアルだけではなく、他にもいくつかの特徴を持つ。まずは、ブルーIP仕上げのシリンジ型時分針だ。これまでのポリッシュ仕上げのリーフ針とモダン針の組み合わせからは一転、蓄光塗料を塗布することによって、暗所での視認性も格段に高まった。

 ベゼルやラグの形状も改められているが、スペック面の向上にも一役買っているのが、ケースバックの仕様変更だ。スクリューバックである点は変わらず
、防水性が3気圧から5気圧へ強化されている。

 12時位置にプリントされたロゴも、従来のカタカナの“クロノ”から、筆記体の“Kurono”へと変更されている。本作のコンセプトは、ヴィンテージウォッチのテイストを持ちながら、普段使いに適した実用時計であること。そのことを節々から感じ取れるモデルに仕上がっている。何よりも、同時に4色発表されたということ自体が、ファンの頭を悩ませたに違いない。