ショパール マニュファクチュール創設20周年 成熟と革新の軌跡

2016.12.02

BASELWORLD 2016 MODELS

ショパール マニュファクチュールの創設20周年を迎えた2016年。ショパールはバーゼルワールドで3つのL.U.Cをリリースした。
マイクロローター採用の96系を載せた「L.U.C XPS 1860」と永久カレンダー搭載の「L.U.C パーペチュアル ツイン」、そして「L.U.C パーペチュアル クロノ」である。
数多くの傑作ムーブメントを擁するショパールだが、その中でも、96系とパーペチュアルカレンダー、そしてクロノグラフの設計は抜きんでている。
ショパール マニュファクチュール創設20周年を飾るにふさわしい新鋭モデルだ。

L.U.C XPS 1860
定番「L.U.C XPS」のデザインを1940年代風に改めたモデル。18Kローズゴールドモデルとステンレススティールモデルが存在するが、これは後者。ムーブメントはこの価格帯の中ではかなり優秀だ。自社製のステンレススティール製ケースも、かつてのものに比べて面が整うようになった。自動巻き。SS(直径40mm)。104万円。
Cal.L.U.C 96.03-L
旧キャリバー名3.96。1.96の仕上げを改め、平ヒゲとトリオビス緩急針を足した基幹ムーブメントである。3.96から設計は変わっていないが、細部が改良された結果、針飛びなどが抑えられた。直径27.4mm、厚さ3.3mm。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。

L.U.Cコレクションのデザインを監修するギィ・ボーブ氏。2009年以降、L.U.Cに独自性と正統性を与えるべく、リ・デザインに取り組んできた。いわく「L.U.Cの基本デザインは、2007年のクロノ ワンから変わっていない」とのこと。しかし、ラグやベゼルの立体感を増した結果、時計の完成度は以前に比べてさらに改善された。「時計のデザインで重要なのは、長く使えること。そして、L.U.Cのデザインで重要なのは、視認性が高く、ユニークであること。加えて、デザインにはショパールの歴史を反映させたかった」。

 2016年のバーゼルワールドでお披露目されたLUCは3つ。まずは、ベーシックな「LUC XPS 1860」。18Kローズゴールドモデルは96・01-L(旧1・96)、SSモデルは96・03-L(旧3・96)を載せている。マイクロローターにダブルバレル、ラチェット式の巻き上げ機構という設計は同じだが、前者の仕上げはジュネーブ・シールに準拠したものとなっている。また96・01-Lはヒゲゼンマイも巻き上げだ。対して後者は、受けの面取りがダイヤモンドカットとなり、ヒゲゼンマイは平ヒゲ、緩急調整装置は微調整が可能なトリオビスに変更されている。仕上げを望む人にお勧めできるのは前者だ。少なくとも同価格帯の量産機で、96・01-Lに比肩する仕上げを持つものはない。しかし「量産型」の96・03-Lも地板に施されたペルラージュは極めて密であり、主立った部品にはきちんと筋目処理が施されている。加えて言うと、携帯精度は96・01-Lに同等だ。良質な実用機が欲しい人には良い選択肢になるだろう。

「LUC パーペチュアル ツイン」も実は魅力的な選択肢である。ベースとなったのは永久カレンダーの「LUC ルナ ワン」。そこからムーンフェイズと昼夜表示を省き、ケースをSSに改めた、いわば〝実用機〟が本作である。他社がリリースする100万円クラスの永久カレンダーに比べると高価だが、このモデルの永久カレンダーはルナ ワン同様、瞬時送りであり、12時位置のビッグデイトのおかげで視認性も良好だ。言うまでもなくベースムーブメントと付加モジュールは完全な自社製であり、初出から10年近く経っているため、いっそうの信頼性も期待できる。質と機能を考えればLUCにおける“wonderful buy”のひとつだろう。なお、本作が搭載する96・22-Lは、96系と同じく複雑だがLUCの重要な個性のひとつであるラチェット式の自動巻き機構を採用し、ホワイトタイプのローターを用いている。加えて、針合わせの感触なども細かくチューンナップされた。96系の設計を愉しみつつも、さらなる実用性を期待したい人にこそお勧めできるムーブメントである。

ボーブ氏によるスケッチ。「以前のL.U.Cはドーフィンハンドを使っていました。視認性は高いのですが、それはどこにでもあるデザインです。そこで私たちは、コンパスを模したドーフィンハンドを採用しました」。

そして、「LUC パーペチュアル クロノ」は、その永久カレンダーモジュールをクロノグラフの03系に搭載したもの。ベースムーブメントは自動巻きを外した手巻き版だが、そもそも03系は、手巻きに耐えうるような設計になっているためまったく問題ない。さらにムーブメントの見た目を改善すべく、一部の受けは抜かれ、ジュネーブ・シールに準拠した仕上げが与えられた。

 これらのモデルは、外装も秀逸である。ショパールの得意とするケースは、かつて鍛造のみで仕上げていた。しかし、より平滑な面を与えるため、現在は鍛造の後に、表面を切削するようになった。結果は、かつてのLUCと比べれば明らかだ。ケースサイドはフラットになり、ラグの稜線は明確に出るようになった。文字盤と針も同様に良質である。これらは自社製ではないが、一流好みのショパールらしく、文字盤や針を提供する「パートナー」にはスイスきってのサプライヤーが名を連ねる。

 20年を経て、さらに充実したLUC コレクション。良質な内外装に加えて、普段使いが十分可能という点も、大きな魅力と言えるだろう。

L.U.C
パーペチュアル ツイン

2005年に発表された永久カレンダーウォッチのルナ ワン。その設計を転用した実用的なモデルが本作である。ケースがSSに改められたほか、ムーンフェイズと昼夜表示なども省かれた。しかし特徴的な瞬時送り式のカレンダー機構は不変だ。内容を考えれば価格は非常に戦略的である。自動巻き。SS(直径43mm)。30m防水。281万円。
Cal.L.U.C 96.22-L
瞬時送り式の永久カレンダー機構を搭載。ベースムーブメントはマイクロローター自動巻きの96系。自動巻き機構はラチェット式を採用し、ホワイトタイプのローターを搭載する。直径33mm、厚さ6mm。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。

L.U.C
パーペチュアル クロノ

クロノ ワンから自動巻き機構を省き、そこにルナ ワンの永久カレンダー機構を加えたコンプリケーション。瞬時送り式永久カレンダーにフライバック付きのクロノグラフを合わせた時計は、市場にいくつもない。文字盤には手彫りでギヨシェ装飾が施される。手巻き。18KフェアマインドRG(直径45mm)。30m防水。限定20本。1042万円。
Cal.L.U.C 03.10-L
自動巻き機構を外し、ジュネーブ・シールに準拠した仕上げを与えられたクロノグラフムーブメント。地板と受けはジャーマンシルバー製。細かなモディファイの結果、信頼性もさらに向上した。緩急針のないヴァリナー・テンプを採用する。直径33mm、厚さ8.32mm。42石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。