SIHH2017 詳報 パート2

FEATURESIHH2017
2017.02.13

Vingt-8 ISO
搭載するのはベースのキャリバー28のギアを組み直し、約40パーツ(12石)を追加した新しい28。動力を極力消費しないベゼルの精密な稼働と軽量化により1時間で1回転させる手腕は見事だ。写真は9時を指し示している。時分針が重なったところが毎正時だ。製作者のヴティライネン氏自身も「まだ読み取りには多少の時間を要する」とのこと。洋銀製のプレートとブリッジ、13㎜を超える大型のテン輪を備えるナチュラル脱進機など、ムーブメントは実に美しく、観賞に値する。文字盤中央はギョーシェにグランフーエナメル仕上げ。手巻き(Cal.28)。1万8000振動/ 時。約65時間のパワーリザーブ。Pt(直径39㎜)。日常生活防水。予価1400万円前後。年産30〜35本。


ヴティライネン

 昨年からSIHHに出展する独立時計師の雄、カリ・ヴティライネン氏のプライベートブランドがヴティライネンだ。2011年に発表した「Vingt-8」に搭載した自社製キャリバー28の完成で表現方法の幅を広げ、今や文字盤工房さえ傘下に収めるほどの成功を収めている。順風満帆ともいえる彼のキャリアを飾る傑作が今年誕生した。「Vingt-8 ISO」だ。2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者、ダニエル・カーネマンが説く人間のふたつの行動パターンのうち、システム2(Slow thing)の考えに共鳴したヴティライネンは、とっさの判断(システム1 First thing1)ではなく、熟考した上での判断を時計の時刻読み取りに求めるというアイデアを新作に盛り込んだ。分針とベゼルが常に等角(Isogonic=ISO)を維持しながら回転を続け、15分で90度、30分で180度、45分で270度というそれぞれの正時から角度を変えながら、文字盤上で時をトリッキーに刻んでいくという仕組みだ。時分針が重なる地点が毎正時となる。ナチュラル脱進機を採用するムーブメントの審美的な作り同様、極めて深淵な作風だ。

Vingt-8 パワーリザーブ
Vingt-8にパワーリザーブインジケーターを追加装備したモデルの新しい文字盤。18KWGのインデックスと針には液体を使ったウェットタイプのブラスト処理でホワイトを採用。4タイプのギョーシェパターンを刻む手の込んだ作りだ。手巻き(Cal.28-R)。1万8000振動/ 時。約65時間のパワーリザーブ。Pt(直径39㎜)。日常生活防水。予価1350万円前後。

Vingt-8
ヴティライネン流のモダンな意匠の文字盤表現を取り入れたモデル。複雑なギョーシェパターンを刻んだ文字盤に、ブルースティールとオレンジを組み合わせた時分秒針と12の赤いインデックスをレイアウトしている。バランス感覚は秀逸だ。手巻き(Cal.28)。1万8000振動/ 時。約65時間のパワーリザーブ。18KWG(直径39㎜)。日常生活防水。予価1100万円前後。


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