ムーンフェイズ再発見[個性派月齢図鑑]

2017.06.28

吉江正倫、矢嶋修:写真 Photographs by Masanori Yoshie, Osamu Yajima
広田雅将、篠田哲生、鈴木幸也(本誌)、河合雅士(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota, Tetsuo Shinoda, Yukiya Suzuki (Chronos-Japan), Masashi Kawai (Chronos-Japan)

デイト表示と同じように、ムーンフェイズ表示は暦を知る代表的な機構でありながら、その実用性は決して高いものとは言えない。
それでも今なお各ブランドが新しい試みに挑戦し、時計愛好家を魅了するのはなぜだろうか?
1000年を超えるほど永きにわたり月齢表示の正確さを保証するムーンフェイズをはじめ、実際の月に見立てて立体的に月相を表示する方法や、ムーンディスクに星空をイメージさせる素材や装飾を用いて審美性を高めるなど、その進化のベクトルは多様化の一途をたどっている。
ここではその過程で生まれた個性的なムーンフェイズ表示機構を搭載したモデルを厳選して紹介する。

ジャガー・ルクルト デュオメトル・スフェロトゥールビヨン・ムーン
3887年間に1日の誤差しか生じない高精度なムーンフェイズ機構を搭載する「デュオメトル」の最新作。約20度傾いているトゥールビヨンのキャリッジは、約23.4度傾いている地球の地軸を連想させる。手巻き(Cal.389)。2万1600振動/時。Pt(直径42mm)。世界限定75本。予価25万ユーロ。問ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

3時位置に配した濃紺の星空をイメージさせるムーンディスクはラピスラズリで仕立てられ、優雅に仕上げられている。グレイン仕上げの控えめな文字盤の中にあって、9時位置に配された多軸トゥールビヨンとは異なる存在感を発揮し、文字盤にアクセントを与えている。


ドゥ ベトゥーン DB25 S ジュエリー
文字盤にちりばめられたダイヤモンドがオリオン座を表現し、ケースサイドにはバゲットカットしたブルーサファイアをセット。華やかに用いられた貴石が星空の輝きを具現化している。手巻き(Cal.2105)。2万8800振動/時。18KWG(直径40mm)。価格未定。問サイプレストレーディング Tel.06-6459-4140

立体的なムーンフェイズ表示機構を持つモデルをバリエーション豊かに取り揃えているドゥ ベトゥーン。その中でもダイヤモンドとブルーサファイアをセッティングした3Dムーンボールで月相を表現する左のモデルは特に絢爛華麗。貴石の輝きによって月と夜空の煌めきを表現している。


コンスタンチン・シャイキン ルノホート プライム
ロシアの独立時計師であるコンスタンチン・シャイキンによって開発されたタイムピース。1970年に月面着陸した旧ソ連初の月面無人探査機であるルノホート1号の偉業をモチーフに製作された。手巻き(Cal. KL1 04-0)。2万1600振動/時。18KRG(直径50mm)。日本未入荷。

文字盤の中心に据えられた直径12mmの球状ムーンフェイズがひときわ目を引く。南洋真珠のムーンボールの外側をブラックロジウムコーティングされたカバーが回転することで月相を表現。2次元のムーンフェイズよりも現実に近い月相の再現を可能にした。