英国趣味を標榜する読者は多いだろう。文化やスポーツ、ファッションアイテムなどに、心惹かれる英国ものがあふれている。そんな英国趣味を香りで楽しめるのがジョー マローン ロンドンのフレグランスだ。今回は敏腕編集者であり、エッセイストでもある麻生綾氏が、同ブランドと英国のハンツマンとのコラボレーションアイテムを例に男の香りを指南する。
Text by Aya Aso
村山千太:写真
Photograph by Senta Murayama
[クロノス日本版 2025年5月号掲載記事]
香りも英国趣味

ブランド初のメンズコラボレーション。いわゆる“男臭い”フレグランスではないため、香りを付け慣れたハンサムな女性からの支持も厚い。〈左から〉深夜のたしなみに寄り添う魅惑の香り「ウィスキー & シダーウッド コロン」、スモーキーかつスエードのようにしなやかで洗練された香りの「アンバー & パチョリ コロン」、パンクと伝統のような相反する文化の共存を表した、いかにも英国的な「バーチ & ブラック ペッパー コロン」、朝の一杯の紅茶にカルダモンを加えた「アッサム & グレープフルーツ コロン」。各100ml、各3万2890円(税込み)。
日本人の英国好き、英国贔屓の歴史は古い。何を隠そう筆者自身、ブリティッシュ・ロックの薫陶をめいっぱい受けた世代なので、英国、とりわけロンドンは学生の頃より憧れの地だった。そして実際に訪れてみた際に肌で感じた、人種のるつぼと明確な階級社会の共存、さらには礼儀正しさの奥に潜むなかなか強烈な皮肉とブラックユーモア。いやもう、興味深すぎて英国がますます大好きに(笑)。
そして大人になるにつれ、その吸引力(あ、そういえばダイソンもイギリス!)はいぶし銀的な輝きをさらに増していく。残念ながら私は紳士ではないので身につけることはないのだが、ファッションであれば例えばジョン・ロブの靴、バーバリーのコート、ダンヒルのオーダーシャツ、車なら資本が海外に流出してしまったものもあるとはいえロールス・ロイス、ベントレー、アストンマーティン、エンタメならシャーロック・ホームズ、ハリー・ポッター、007、大英博物館、アスコット競馬場……などなど。ほんと、それこそ小説からロイヤルに至るまで、その魅力の源泉を挙げていったらキリがない。
さて、そんな英国趣味を香りで展開しているのがジョー マローン ロンドンである。しかも今春、ご存じ「背広」の語源ともなったサヴィル・ロウ通りに店を構えるビスポークテーラー、ハンツマンとのコラボレーションを発表。これがとても素敵なのだ。
香りは全部で4種類。4本並べることでボトルの前面に「HUNTSMAN」と完成するタイポグラフィがあるので、できるならコンプリートしたいところ。具体的な香り立ちについてはぜひ店頭でお試しいただきたいのだが、ウィスキー & シダーウッド、アンバー & パチョリ、バーチ & ブラック ペッパー、アッサム & グレープフルーツ、と、落ち着きと躍動感という相反するテイストが絶妙にマッチした香りがそろう。
ちなみに複数を同時にまとう“レイヤリング”も可能で、例えばこのハンツマン同士、あるいは既存の人気製品「ウッド セージ & シー ソルト コロン」(より爽やかに)や「ブラックベリー & ベイ コロン」(よりフルーティーに)などとの重ね付けもお勧め。ただ、その場合は同じ箇所には付けず、濃く深く感じる香りを足元などの下半身に、軽い方を上半身にさっと吹くのが「なんだかいい匂いの人」完成の奥義である。
そんなわけで英国ものに呼ばれがちな皆さま、香りにおいても英国趣味をぜひご堪能ください。
著者プロフィール
麻生綾
美容編集者/エッセイスト&コピーライター。東京育ち。女性誌の美容ページ担当歴30余年、『25ans』『婦人画報』(ともにハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』(コンデナスト・ジャパン)各誌で副編集長、『etRouge』(日経BP)で編集長も務めた。趣味も美容、そして美味しいもの探し、鬱アニメ鑑賞、馬の骨活動。