ジラール・ペルゴ × バンフォード 蘇る時代を先取ったレガシーピース

2025.06.07

1791年創業の名門ジラール・ペルゴが誇る豊かなヘリテージを、現代の技術とクラフツマンシップで再構築するレガシー エディション。大成功した「キャスケット」に続く第2弾として見事に復活を遂げたのが「ディープ ダイバー」である。高級時計のカスタマイズで名を馳せる英国バンフォードとのコラボレーションによる、過去と現在をスタイリッシュにつないだ350本限定のコレクターズアイテムだ。

ジラール・ペルゴ「ディープダイバー」

ディープ ダイバー
機能的にもデザイン的にも1970年代を先取りした1969年初出の名機Ref.9108を、カスタマイズの天才バンフォードのスタイルを取り入れて大胆に復刻。インナー回転ベゼル、デイト表示を備え、ネイビーとオレンジのラバーストラップが付属。自動巻き(Cal.GP03300)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。Tiケース(縦40.3×横38mm、厚さ13.91mm)。200m防水。世界限定350本。213万4000円(税込み)。
奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
大野高広:文
Text by Takahiro Ohno (Office Peropaw)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年7月号掲載記事]


レガシー エディション第2弾として復刻された「ディープ ダイバー」

 ジラール・ペルゴが独自の自動巻きムーブメント「ジャイロマティック」を搭載した初の本格的ダイバーズウォッチ「ディープ ダイバー」を世に送り出したのは、1957年のこと。当時はダイビングがレジャーとして一般に広まり始めた時期で、時計業界は潜水時計の技術開発にしのぎを削っていた。その中でジラール・ペルゴは、いくつかのラグジュアリーブランドとともに、まさに時計史の先頭集団を突き進んでいたのである。

 世の中が宇宙開発競争に沸き、派手な原色文字盤や流線型のスペーシーなケース形状が時代のトレンドとなりつつあった69年、アイコニックな十四角形ベゼルとクッションケースをまとった「ディープダイバー Ref.9108」が登場。この野心的なデザインは6年後の75年に誕生するロレアートの八角形ベゼルを予感させるもので、当時の最先端を行くステートメントピースとして大評判となった。

ジラール・ペルゴ「ディープ ダイバー」

1969年のオリジナルモデルを踏襲するクッション型ケースはグレード5チタン製。かつては加工が難しかった難削材を、印象的なヘアラインに仕上げ、ラグやベゼルにポリッシュを施した。オリジナルにインスパイアされたリュウズをシンメトリーに配したサイドビューは、放射状ヘアラインの正面ルックスと同様に力強く、ダイナミズムに満ちあふれている。

 今回、レガシー エディション第2弾として復刻された新作は、69年モデルのケースフォルムを継承しつつ、ダイアルには71年版のディープ ダイバーが持つ大胆な美学が反映されている。ボリュームのあるケース表面には、オリジナルに準拠した放射状のヘアライン仕上げが施され、グレード5チタンの色味もスティールと酷似。オレンジ、ブルー、ホワイトのレトロポップな配色と、レトロフューチャーな数字のタイポグラフィによって、当時の雰囲気がモダンに昇華されている。こうした〝復刻すべき〞価値のあるヘリテージを豊富に有するブランドが、そのアーカイブに再び光を当て、過去と未来をつなげようとする創造的な試みは、極めて有意義な取り組みと言える。

ディープ ダイバーRef.9108の第2世代に当たる1971年モデル

ディープ ダイバーRef.9108の第2世代に当たる1971年モデル。腕の動きに反応しやすい両方向巻き上げ式のジャイロマティックやアイコニックな十四角形ベゼルを備えたクッション型ケースを継承しつつ、ブルー、オレンジ、ホワイトのポップな文字盤カラーを採用。このレトロフューチャーなダイアルデザインが今作のモチーフになった。

 さらに、この新作のもうひとつのトピックは、バンフォード ウォッチ デパートメントとのコラボレーションにある。バンフォードはラグジュアリーウォッチのカスタマイズを専門とする英国ロンドン拠点のブランドで、伝統的な時計ブランドとモダンなデザインセンスを融合させた高品質な仕事ぶりは、これまでも時計愛好家やファッションに敏感なユーザーに高く評価されてきた。従来は評価の定まった現行モデルにカスタマイズでイノベーションをもたらすことが多かったのに対し、今回のコラボレーションが特別なのは、半世紀以上前の名機のカスタマイズを復刻モデルとして手掛けたことだ。オリジナルモデルのダイアル6時位置にあった「Gyromatic」の表記を「BAMFORD」と控えめな色で置き換えたのが唯一の明確な痕跡だが、オリジナルが持つ70年代テイストのクラシカルな魅力を、都会的で洗練された表情にまとめ上げたのは、紛れもなくバンフォードの功績に違いない。

ジラール・ペルゴ「ディープ ダイバー」

2時位置のリュウズで操作するインナー回転ベゼルと、PVD加工のグレー針、アワーマーカーに配したオレンジの蓄光塗料は暗所でブルーに発光。一段凹ませてアワーマーカーを塗布するなど、手の込んだ仕上げと気遣いがディテールの隅々に行きわたる。

 ネイビーとオレンジが用意された2種類のラバーストラップも洒落ている。工具不要のクイックリリースシステムを備えたことで、実用性と快適性に加え、ファッション的なコーディネートの幅も広がった。ブルーメタライズ加工が施されたサファイアクリスタル製のケースバックからは、基幹ムーブメントである自社製GP03300の鼓動と、職人の手仕事が息づく精緻な仕上げがかすかにのぞく。

 過去の伝説を単なる復刻ではなく、バンフォードの視点で再構築した新作ディープ ダイバーは、審美性からムーブメントの仕様に至るまで、あらゆるディテールを磨き上げた新たなモデルである。それは、時代を超えて愛され続けるマスターピースの条件を見事に体現している。

ジラール・ペルゴ「ディープ ダイバー」

付属のオレンジストラップに交換してイメージチェンジ。鮮やかな色彩が手元をアクティブに装ってくれる。
ジラール・ペルゴ「ディープ ダイバー」

オリジナルのメタルバックから着想を得た、ローマ神話の“海の神”に由来するトライデントをあしらった「DEEP DIVER」のエンブレムを、ブルーのサファイアクリスタルバックに配置。ストラップにはクイックリリースシステムが搭載されており、レバーを操作するだけで工具なしでも簡単に着脱できる。



Contact info: ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791


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