チタン製のケースを採用した高級腕時計5本を紹介する。加工技術の進歩やグレード5チタンの採用によって、高級腕時計の素材としてより身近になったチタン。軽量性と耐食性、抗アレルギー性に優れるだけでなく、審美性をも獲得したチタンの魅力に迫る。
Text by Tsubasa Nojima
［2024年6月03日公開記事］
高級腕時計への普及が進むチタン素材
加工技術の進歩に伴い、多くのブランドが腕時計の素材として採用するようになったチタン。グレード2が主流であった一昔前のチタン製の腕時計と言えば、やや黒ずんだサンドブラスト仕上げの外装のイメージが強かったが、高級感のある仕上げを与えやすいグレード5チタンが普及するにつれ、ステンレススティールに遜色ない審美性を備えたチタン製の腕時計も珍しくなくなってきた。
チタンの主な特徴は、軽量性と耐食性、抗アレルギー性に優れている点にある。大ぶりなスポーツウォッチの場合、金無垢はもちろん、ステンレススティールでも長時間着用するのは疲れてしまう。しかしチタンケースを使用すれば、軽快に着用することが可能だ。また、海水などに晒されても錆びにくく、耐久性も期待できる上、ニッケルなどを含まないチタンでは、金属アレルギーも引き起こしにくい。これらの特徴は、チタン合金であるグレード5に比べ、純チタンであるグレード2の方が優れているとされているが、反面、硬度に関してはグレード5に分がある。
高級腕時計の実用性を向上させるチタン。この素材を活用した代表作を紹介しよう。
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGA211
高い人気を誇る雪白パターンダイアルのモデル。スプリングドライブ特有の秒針の動きや、太く堂々とした時分針など、シンプルな中にも見どころが満載。自動巻きスプリングドライブ（Cal.9R65）。30石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース（直径41mm、厚さ12.5mm）。10気圧防水。90万2000円（税込み）。
日本を代表する高級時計ブランドが、グランドセイコーだ。シンプルなデザインが魅力の「ヘリテージコレクション」に属するSBGA211には、ブライトチタン製のケースとブレスレットが採用されている。ブライトチタンは、ステンレススティールと比べて約30％軽量であることに加え、耐食性に優れ、さらに高い硬度と白く輝く審美性を備えた独自のチタン合金だ。
ダイアルには、雪白パターンと呼ばれる型打ちが施され、グランドセイコーのスプリングドライブモデルが製造される長野県の厳しい冬を想起させる。雪面のような色味は、ホワイトの塗料を用いたものではなく、銀めっきを施し、光の乱反射を利用して再現したものだ。ブルースティール秒針の流れるような運針やパワーリザーブインジケーターが、静謐な情景にアクセントを生んでいる。
搭載する自動巻きスプリングドライブムーブメントは、シースルーバックを通して鑑賞することが可能だ。クォーツ譲りの優れた精度を発揮していることに加えて、約72時間のパワーリザーブを備えている。
シチズン「ザ・シチズン」Ref.AQ4100-57B
ザ・シチズンの2025年新作。軽量な外装や優れた精度など、デイリーユースにぴったりなスペックを備えている。光発電エコ・ドライブ（Cal.A060）。フル充電時約1.5年駆動。Tiケース（直径38.3mm、厚さ12.2mm）。10気圧防水。41万8000円（税込み）。
ブランドを象徴するイーグルの羽ばたきをモチーフとした、躍動感あふれるシルバーダイアルが特徴の2025年新作。エッジの効いたラグがアクティブな印象をもたらすケースと、ヘアライン仕上げを施したブレスレットには、スーパーチタニウムが採用されている。この素材は、チタンをベースに独自の表面硬化技術であるデュラテクトプラチナを施したものであり、ステンレススティールに比べて約40%軽く、5倍以上の表面硬度を誇る。チタンでありながらもライトシルバーに輝く色味も特徴だ。ダイアルの3時位置には日付表示を配し、10気圧の防水性を備えたケースによって、オンオフ問わずさまざまなシーンで着用することが可能な汎用性も魅力。
さらに、光発電エコ・ドライブによって、定期的な電池交換をすることなく動き続ける利便性を備えており、かつ年差±5秒以内という優れた精度も特徴である。手厚いサポートが用意されているザ・シチズンならではの特典として、MY CITIZEN シチズン オーナーズクラブへの登録を行うことで、メーカー保証が10年に延長される。
オメガ「シーマスター ダイバー300M 007 エディション」Ref.210.90.42.20.01.001
実際に劇中にも登場した“ボンドウォッチ”。外装の仕上げやカラーリングなど、ヴィンテージ感あふれるデザインが魅力だ。自動巻き（Cal.8806）。35石。2万5200振動／時。パワーリザーブ約55時間。Tiケース（直径42mm）。300m防水。155万1000円（税込み）。
1993年に誕生したオメガの「シーマスター ダイバー300M」は、複数のモデルチェンジを経て愛されるロングセラーだ。ドットとバーを組み合わせた視認性に優れたインデックス、外周にファセットを施した逆回転防止ベゼル、10時位置のヘリウムエスケープバルブ、優雅な曲線のラグなどのアイコニックな意匠は、プロフェッショナルのダイバーだけではなく、多くの時計愛好家に選ばれている。
「シーマスター ダイバー300M 007 エディション」は、2021年に公開された作品、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の劇中で着用された“ボンドウォッチ”だ。ケースにはグレード2チタンを採用し、マットな仕上げがツール感を強調している。ダイアルとベゼルは、ブラウンを基調としてベージュカラーの蓄光塗料を塗布することで、ヴィンテージ調の風合いを見せる。ケースバックに刻まれたブロードアローにも注目だ。
ムーブメントは、コーアクシャル脱進機を採用したマスター クロノメーター認定のCal.8806を搭載する。
ゼニス「クロノマスター スポーツ」Ref.95.3100.3600/39.M3100
モノトーンでまとめられた「クロノマスター スポーツ」。チタン製の外装を採用することで、長時間の着用でも負担にならない取り回しやすさを獲得している。自動巻き（Cal.エル・プリメロ3600）。35石。3万6000振動／時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース（直径41mm）。10気圧防水。161万7000円（税込み）。
ゼニスを代表する人気コレクション、「クロノマスター スポーツ」のチタンモデル。ケースやブレスレット、プッシャー、リュウズに至るまでグレード5チタンを採用している。ヘアライン仕上げを基調としつつ、ラグのエッジやベゼルの外周などをポリッシュで磨き分けることで、ステンレススティールに遜色ない上品さが与えられている。
ダイアルは、外装に調和したシルバーカラー。カラフルなトリコロールカラーのインダイアルが特徴のクロノマスター スポーツだが、本作ではアンスラサイト、グレー、シルバーの3色とすることで、モノトーンの落ち着いた印象に仕上げている。ブレスレットにはワンタッチで長さを変更することが可能な微調整機構が備わっており、体調や気温に合わせた最適な設定で着用することが可能だ。
Cal.エル・プリメロ3600は、毎秒10振動の自動巻きクロノグラフムーブメント。センターのクロノグラフ針は10秒で1周し、1/10秒まで正確に計測することができる。
G-SHOCK「MRG-B5000 Series」Ref.MRG-B5000D-1JR
初代5000系のデザインを採用した「MR-G」。丹念な仕上げによる審美性と、G-SHOCKならではの多機能性を両立させたスポーツウォッチだ。タフソーラー。フル充電時より約10カ月駆動（パワーセービング時約22カ月）。Tiケース（縦49.4×横43.2mm、厚さ12.9mm）。20気圧防水。42万9000円（税込み）。
G-SHOCKの最上級ラインである「MR-G」のフルメタルモデル。スクエア型のベゼルは、G-SHOCKの初代モデルから受け継がれているデザインだ。ベゼルは25個のパーツに分割され、ひとつひとつのパーツを磨き上げることで、シャープな造形を可能としている。フルメタルでありながらもG-SHOCKならではの耐衝撃性も健在であり、ベゼルパーツの間に緩衝体を組み込んだマルチガードストラクチャーが採用されている。
外装に複数の種類の金属を使用していることも特徴だ。ケースには64チタンをベースとした高硬度チタン、バンドには優れた加工性を誇るDAT55、ベゼルトップには、プラチナと同等の輝きを放つとされるコバリオンを採用している。
光発電機能や電波受信機能、Bluetooth接続によるモバイルリンク機能の他、ワールドタイムやタイマー、ストップウォッチ、アラームなどの多機能性も魅力だ。LEDバックライトも備わっており、暗所で起動することによって、簡単に時刻を読み取ることもできる。
