インダストリアルかつ未来的なデザインを得意とするスイスの腕時計ブランド、セブンフライデーは、その独創的なスタイルで人気を集めてきた。「遊び心」にあふれたモデルが多い中、「PE1/01 M」は端正かつ抑制の効いた「静」デザインが際立つ一本である。本稿では、『ウォッチタイム』アメリカ版に寄稿するマーティン・グリーンが、その魅力を深掘りする。
「遊び心」と「静」の共存
セブンフライデーが手がける腕時計の魅力のひとつに、すべてのモデルに「遊び心」が備わっている点が挙げられるだろう。どのモデルにも目に留まる魅力があり、時間を確認するたびに、思わずニヤニヤ笑顔になってしまうのだ。

自動巻き(TMI Cal.NH35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(縦44×横44.5mm、厚さ12.55mm)。5気圧防水。24万2000円(税込み)。
文字盤に描かれたイラストのような、ひと目で分かるものもあれば、素材の選定やカラーリング、時刻表示の方法など、より洗練されたかたちで表現されているモデルもある。今回紹介する「PE1/01 M」は、同ブランドの中でも比較的抑え気味のデザインのシックな腕時計だ。
モノクロームの中に潜むディテール
この腕時計の「静」のデザインは、ほぼモノクローム調の配色からも見て取れるだろう。一見シンプルに見えるが、よく見ると文字盤には多くのディテールが詰め込まれている。文字盤の大部分を覆うブラックプレートには、セブンフライデーのロゴがエンボスで配され、それに加えて同じくエンボスのラインが奥行きをさりげなく演出するのだ。

中央には、ロジウム仕上げのプレートが配されており、ヘアライン仕上げが個性を際立たせている。
遊び心を感じさせる針と表示
9時位置のマーカーはワンダリングアワーのディスクを示すだけでなく、分針の目安としても機能する。この分針はエッフェル塔を思わせるデザインだ。分針のベースはクラシックカーのステアリングホイールのような形状で、その上に秒針が取り付けられている。
また、日付表示は文字盤の4時位置に控えめに設けられており、そのデザインはツタンカーメンの墓の入り口を思わせる。日付ディスクの位置が深く、影が落ちやすいという点は少々気になるが、奥行きと個性を加える要素として受け入れられるだろう。
装着感を考慮したケース設計
ケースはセブンフライデーらしい、ほぼスクエアな形状で、サイズは縦44×横44.5mmだ。数字だけ見れば大きな印象を受けるが、ラグがなく、角やケース底部も丸く仕上げられているため、装着感は意外に良好だ。
日本製ムーブメントの選択と裏蓋の工夫
ムーブメントは日本製の自動巻きTMI Cal.NH35を搭載。堅牢で信頼性も高いが、個人的には約41時間というパワーリザーブがやや物足りなく感じる。それでも、このモデルには適した選択といえる。
なお、このムーブメントが外観的な魅力に乏しいことをブランド側も理解しており、裏蓋はシースルー仕様ではない。その代わり、裏蓋にはNFCチップが内蔵されており、セブンフライデーのアプリ(iOS・Android対応)を通じて所有者登録や認証が可能となっている。アプリ上では、自身が所有する他のセブンフライデーの時計も一元管理できる。
クォリティの高い外装仕上げとブレスレット
仕上げの品質も高く、リュウズとケース側面にはセブンフライデーのロゴが刻印されている。レザーストラップ仕様も選べるが、メッシュブレスレットの出来が非常に良いため、こちらをおすすめしたい。ブレスレットは非常に快適な着け心地で、クラスプの位置を自由に調整できる構造を持ち、チェーンの目も細かい。このブレスレットが、PE1/01 Mの「静」のデザインをさらに際立たせている。
セブンフライデーの世界観を広げるモデル
ここでひとつ疑問が浮かぶ。このモデルはセブンフライデーにしては「真面目すぎる」のではないか? しかし、その心配は無用だ。ブランドはこのPE1/01 Mのコンセプトを見事に形にしており、セブンフライデーの世界観をさらに広げることに成功している。今後もこうした「静」のデザインを育てていってほしいと願う。