ディズニー映画「アラジン」のジーニーから「アンパンマン」のジャムおじさんまで、数々の名キャラクターを演じ分ける声優界のレジェンド・山寺宏一。現在は朝ドラ「あんぱん」で俳優としても活躍する。「七色の声を持つ男」と称される山寺が選んだのは、意外にもレディスウォッチブランドの腕時計。だが、かつてはユニセックスモデルも存在していたのだ。

Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年6月15日掲載記事]
声優から俳優まで──表現者としての幅広い才能
現在放送中の朝の連続テレビ小説「あんぱん」で俳優としても活躍する山寺宏一。彼が演じるのは、やなせたかしの恩師をモデルにした「座間先生」という役だ。学生たちを紳士として扱いながら「自由でいいんだ」と説く、やなせたかしの生き方に大きな影響を与えた人物である。
「アンパンマンのマーチ」の歌詞にある「何のために生まれて、何をして生きるのか」を考えさせる教育を行った座間先生を、山寺は時にコミカルに、時に優しく、飄々とした魅力で好演している。山寺自身、台本を読んだ段階でこの登場人物を大好きになった一方で、「面白く演じられなかったら台無しになってしまう」というプレッシャーも感じたという。しかし、松嶋菜々子や北村匠海との共演で見事にその役割を果たし、シリアスな演技の後のコメディリリーフとしても存在感を発揮した。
近年、アニメの実写化作品が数多く制作される中、「原作の世界観を壊さないでほしい」というファンの声も少なくない。そんな状況で山寺宏一は、オリジナルアニメと実写版の両方で吹き替えを担当し、ファンを安心させ続けている。代表的な作品として、ディズニーの「アラジン」のジーニー、「リロ&スティッチ」のスティッチは、まさにアニメ版そのままのイメージを実写吹き替えでも再現している。他にもドナルドダック、「美女と野獣」の野獣など、ディズニー作品の重要なキャラクターを数多く担当。一方で、「それいけ!アンパンマン」では、ジャムおじさん、めいけんチーズ、カバお、かまめしどん、かびるんるんなど、何役も同時にこなす驚異的な演技力を発揮している。
50役を演じ分ける「七色を超えた声」
仕事に欠かせない道具は、台本にそれぞれの役割に応じたメモを書き込むための6色ボールペンだという山寺。「七色の声を持つ男」と呼ばれることも多いが、その実力は七色をはるかに超えている。「それいけ!アンパンマン」では12役、「ヤッターマン」では16役、「彼岸島X」ではなんと50役を演じ分けているのだ。
山寺宏一に憧れて声優を志した人も多く、「鬼滅の刃」で主人公・炭治郎を演じた花江夏樹も、同じ事務所に入りたくてボイスサンプルを送ったことがあるという。声優仲間からも絶大な支持を得る理由は、その幅広い演技力に加え、声優業のみならず俳優として舞台やテレビドラマに出演し、ナレーション、ラジオパーソナリティなど、表現の幅が極めて広いことにある。
子供の頃は引っ込み思案な性格だったが、他の人よりも色々な声を出すことができると気づいたのがきっかけで、動物の鳴き声の再現やモノマネを披露するようになった。ただし、職業としての声優については、当時は知らなかったという。
大学進学後は落語研究会に所属。山寺本人によると、この落語研究会がすべての原点となっており、「入っていなかったら、声優の仕事をしていなかったと思います」と語っている。声色を自在に変えることができる特技は、落語を行う上でも大きな武器となったことだろう。こうしたさまざまな経験と才能が、ウィル・スミスをはじめとするハリウッド俳優からも信頼を得る声の演技力につながっている。
SNSで発見! 山寺宏一愛用の意外な時計
そんな山寺宏一のX(旧Twitter)に、興味深い写真が投稿されていた。
この夏大活躍だぜ!
ゾロリTシャツ pic.twitter.com/oImWiDlGk3
— 山寺宏一 (@yamachanoha) July 28, 2023
注目すべきは、このTシャツに合わせて着用されている腕時計。それは、おそらくシチズン「xC デュラテクト エコドライブ XCD38-8471」である。

光発電エコ・ドライブ。SSケース。
「xC」(クロスシー)は1996年の発売以来、レディスウォッチの中価格帯市場において腕時計国内売り上げ一位を誇るブランドだ。定期的な電池交換が不要な光発電エコ・ドライブ、時刻合わせ不要の電波時計機能、シチズン独自の表面硬化技術デュラテクト、日常生活での万全な防水機能など、多彩な機能性に優れている。
2025年現在、女性向けブランドであるxCのラインナップを見ると、小径で可愛らしい装飾が施されたモデルを数多く目にすることだろう。
だが、xCが誕生した1996年当初は異なる。過度な装飾を廃した、シンプルかつシックなデザインのブランドとして出発したのだった。そして1998年には、サイズも大型化しユニセックスモデルが登場。男性が着用しても違和感のないブランドだったのである。
山寺宏一が着用するxCの「xC コンパイヤー シリーズ エコ・ドライブ 電波時計」はおそらく2003年頃に発売されたものであり、このモデルもユニセックスモデルだろう。
極端に華美ではなく、クラシックな佇まいが印象的なこのモデルには、飽きのこない普遍性が宿っている。まるでさまざまな役を自在に演じ分けながらも、決してひとつの色には染まらない山寺宏一。その静かな説得力が、この時計にも重なるように感じられるのだ。
声優界のレジェンドが見せる、これからの新たな表現にも期待が高まる。