アメリカ海軍の特殊部隊であるNavy SEALs(ネイビーシールズ)をはじめとする、数々の軍や警察組織に制式採用される実績を持つ、ハイスペックなミリタリーウォッチを提供してきたルミノックス。同社はなぜプロフェッショナルから厚い信頼を寄せられるに至ったのか? 同社の〝強さ〟に着目し、その背景と魅力に迫る。
Photographs by Masahiro Okamura (CROSSOVER)
野島翼:取材・文
Text by Tsubasa Nojima
[2025年8月29日公開記事]
ルミノックスはなぜ“強い”のか?
1989年、アメリカで創業したルミノックス。同社は、ラテン語で“明るい夜”を意味するブランド名の通り、自己発光システム「ルミノックス・ライト・テクノロジー(LLT)」による、昼夜を問わず高い視認性を発揮するツールウォッチを手掛けていた。新興ブランドであったルミノックスは、アメリカ海軍の特殊部隊、Navy SEALs(ネイビーシールズ)に同社の腕時計が制式採用されたことをきっかけとして、その名を知られることとなる。ブランドや歴史ではなく、隊員が命を預ける装備品として適切なスペックを備えているかどうかによって見極める、合理主義のアメリカらしい逸話だ。
ネイビーシールズとともに実戦の中で磨き上げられていったルミノックスは、その後もタフな腕時計を次々に開発し、アメリカ空軍のステルス戦闘機F-117 ナイトホークのパイロットや、米国警察特殊部隊SWAT、連邦捜査局FBIなど、過酷な環境で任務を遂行するプロフェッショナルたちに愛用されていった。
そしてその実用性の高さは、一般市場においても高いプレゼンスを示し、時計愛好家だけでなく、ライトな腕時計ユーザーにまで幅広く愛用されるに至る。ルミノックスもそんなユーザー層を意識してか、高級時計専門店からカジュアルウォッチを中心とした時計店、さらにはアウトドア・スポーツショップという広範なチャネルで販売を開始する。キャンプ用品と腕時計が並んで販売されているのは新鮮に思えるが、ルミノックスの腕時計が、ジュエリーケースにしまい込むような宝飾品ではなく、時刻を確認するための生粋の“道具”であることを考えれば、むしろ自然なことなのかもしれない。
2014年以降は、よりグローバルな展開を進めており、製品のデザインや設計の面でもアップデートを図ってきた。さらに、資本力を生かした巨大グループの成長や新興ブランドの躍進など、年々激化する時計業界においてルミノックスの存在感を示すべく、さまざまな取り組みを行っていることも見逃せない。収益の一部をネイビーシールズ隊員の家族や退役隊員への支援に活用するネイビーシールズ基金の設立や、元SAS(イギリス陸軍特殊空挺部隊)隊員である冒険家のベア・グリルスと公式パートナーシップを締結し、100%海洋廃棄プラスティックを素材に採用した、#tide社とコラボレートしたECOシリーズをリリースするなど、社会貢献にも積極的に取り組んでいる。
サステナビリティを重視する姿勢は、スイスのファクトリーにおける製造工程にも表れている。2020年以来、GHG(温室効果ガス)3つの削減目標に対してCO2ニュートラルを達成した、世界で最初の時計メーカーのひとつとなったのだ。
また、現在はすべてのモデルがスイスで製造されている。高級時計の本場における高い品質管理が可能であることも、ルミノックスの隠れた強みだ。
ここからは、新興ブランドのひとつに過ぎなかったルミノックスが、いかにして信頼を勝ち取り、現在のような幅広いユーザーに支持される存在となったのか、その背景となる歴史や技術について、もう一段掘り下げてひもといていきたい。
ネイビーシールズとともに歩んだ歴史
ルミノックスとネイビーシールズとのパートナーシップの始まりは、1993年にさかのぼる。当時、ネイビーシールズの装備開発を担当していたニック・ノース軍曹は、隊員が使用するミリタリーウォッチに対し、堅牢性に加えて夜間任務における視認性が重要であると考えていた。完全な暗闇の中で作戦を実行することは珍しくなく、そのような場面で正確に時刻を把握できなければ、任務に支障を来たしてしまうからだ。熟考の末、ニック・ノース軍曹は、自己発光システムであるルミノックス・ライト・テクノロジーに着目。ルミノックスに対し、ネイビーシールズ用の腕時計の開発を要請した。
要請を受けたルミノックスは、政府調達製品仕様書(MIL-46374F)にのっとった実戦的なテストを繰り返し、製品のアップデートを重ねていく。MIL-SPECとも呼ばれる国防省仕様は、厳格で細かく、厳しい基準を設けられていることでも知られる。MIL-SPECは本来、アメリカ軍が物資を調達するためのものであるが、規格に準拠していることを民生品がアピールすることも少なくないことから、品質を証明するものとして世界中で高い信頼を得ている。
度重なるテストの末、1994年に完成した腕時計「オリジナル・ネイビーシールウォッチ」は、誤読を防ぐ簡潔なレイアウトのダイアル、200mの防水性、熱が加わっても熱くなりにくく、軽量かつ堅牢なカーボン製ケース、そして並外れた発光性を備えたルミノックス・ライト・テクノロジーなど、過酷な条件下での高い機能性を発揮するハイスペックを備えたミリタリーウォッチであった。この腕時計は数カ月に及ぶ現地フィールドテストをクリアし、ネイビーシールズの制式採用を勝ち取ることとなる。

ルミノックスがネイビーシールズ用に開発した腕時計は、以降の任務でも実際に使用され、2009年にソマリア沖で発生したマースク・アラバマ号人質事件、2011年のパキスタンでのオサマ・ビンラディン急襲作戦である「ネプチューン・スピア作戦」など、数々の作戦を秒単位で正確に遂行することに貢献した。間接的ではあるものの、ルミノックスの存在が世界に平和をもたらし、人命を救ったと言っても過言ではないだろう。

「SEA」「AIR」「LAND」を軸に展開
現在のルミノックスは、「SEA」「AIR」「LAND」の3つの軸でコレクションを展開している。SEAシリーズは、ネイビーシールズとの共同開発によるダイバーズウォッチコレクションだ。優れた防水性を備えていることはもちろん、シンプルな3針モデルからクロノグラフモデルまでそろう、多彩な顔触れも魅力である。
アメリカ空軍のナイトホークのパイロットの要請によって誕生したのが、AIRシリーズ。ステルス戦闘機特有の直線的なフォルムを反映させた24時間表記のベゼルとGMT針を用いることで、第2時間帯を表示することが可能なGMTウォッチや、ステルス戦闘機F-22 RAPTOR(ラプター)をモチーフとした、チタンケース採用のクロノグラフウォッチがラインナップされる。
タフさと高機能性を受け継ぎつつ、アウトドアシーンからデイリーユースにも対応する汎用性の高さが魅力のLANDシリーズ。MIL-SPECに準拠した屈強なミリタリーウォッチから、GMTウォッチ、シンプルな3針ウォッチなど、好みやライフスタイルに合わせてチョイスできる懐の深さが魅力だ。
アメリカ軍のエリート部隊をはじめとするプロフェッショナルに選ばれた信頼性と、優れた基本性能を備えたルミノックスのコレクション。どのモデルを選んでも、オーナーの日常を強力にサポートしてくれることだろう。
ルミノックスのユニークな技術
過酷な環境での実用性を高めるため、ルミノックスの腕時計には数々のユニークな技術が搭載されている。そのひとつが、1994年のネイビーシールウォッチにも採用されたカーボン製のケースだ。軽量かつ堅牢、さらに高温下でも熱を帯びにくいカーボンは、ネイビーシールズの装備品として理想の素材であった。
現在のルミノックスでは、高強度なプラスティックであるポリカーボネートに、チップ状に圧縮したカーボンを配合した「CARBONOX™」を採用している。チタンと比較しても3分の1という驚異的な軽量性を発揮することに加え、耐熱性に関しては60℃のプレート上に腕時計を載せ、1.5日間かけて検査するという徹底ぶりだ。カーボン素材で懸念される経年による劣化に関しても発生しにくいという。なお、よりカーボンの配合率を高めることで、引張強度や吸水性を向上させ、さらにカーボン素材特有のマーブル状の外観を持つ「CARBONOX™+」も存在する。
さらに見逃してはならないのが、ルミノックスの腕時計がネイビーシールズに着目されるきっかけにもなった自己発光システム、ルミノックス・ライト・テクノロジーだ。暗所でインデックスや針が発光する時計は多く存在するが、そのほとんどは明るい場所で光を蓄え、暗所で光を放つ蓄光塗料によるものだ。しかしその場合、蓄えられる光には限界があるため、発光できる時間が限られてしまう。また、腕時計が袖口に隠れてしまえば光を蓄えることすらかなわない。一方でルミノックス・ライト・テクノロジーは、トリチウムガスを封入したマイクロガスカプセルを用いたものであり、昼夜を問わず常に発光し続ける。いかなる状況でも瞬時の視認性が要求される任務中においても信頼できるシステムと言えるだろう。
ルミノックスの“強さ”を象徴するモデル
ここからはいくつかの最新モデルをピックアップし、これまでに取り上げたルミノックスの“強さ”が、実際のプロダクトにどのように反映されているのかを紹介したい。モデル別の用途に合わせ、外観や機能が与えられている点にも注目だ。
「オリジナル ネイビーシール 3000シリーズ」
創業35周年を記念し、2024年に発表された限定モデル。オリジナルのネイビーシールウォッチのデザインを踏襲しつつ、現代的なアップデートが加えられている。クォーツ。CARBONOX™ケース(直径43mm、厚さ13mm)。200m防水。9万5700円(税込み)。
ルミノックス躍進のきっかけにもなった、1994年のネイビーシールウォッチ。その直系となるのが、「オリジナル ネイビーシール 3000シリーズ」だ。24時間表記のアラビア数字インデックスや、潜水時間を計測するための逆回転防止機構が搭載されたベゼルなど、オリジナルの特徴を受け継いでいる。
2024年に登場したRef.3001.HERITAGE.SETでは、ネイビーシールズとの30年にわたるパートナーシップをたたえ、ベゼルの“30”に赤のワンポイントを取り入れるなど、特別感のあるデザインが採用されている。ダイアル上のフォントや、ルミノックス・ライト・テクノロジーのカプセルサイズ、そしてストラップ12時側に穴をあけることで、ツールにホールドしやすくするためのジョイントホールドなど、オリジナルを忠実に再現したディティールは、ファンにとってたまらない仕様だ。
また、ルミノックス・ライト・テクノロジーは12時位置のインデックスとベゼルのマーカー、分針をオレンジに、その他をグリーンに発光色を分けることで、暗所での判読性を高めている。200mの防水性を備えたケースの素材として、CARBONOX™を採用している点にも注目だ。見た目には分からないが、内部設計を最新化することでシリーズ最高峰のスペックを獲得しており、品質を追求するために細部まで妥協を許さないブランドの姿勢が垣間見える。
ムーブメントはクォーツ式。しかし侮ることなかれ。スイスのETA社による年差±10秒の高精度ムーブメントを搭載している。約7年間というロングライフなバッテリーも魅力だ。
「パシフィック ダイバー オートマティック 3100シリーズ ミッドナイト マリーナー」
爽やかなホワイトダイアルがまぶしい限定モデル。シースルーバックからは、自動巻きムーブメントの特徴であるローターや機械式ムーブメント特有のテンプの動きを楽しむことができる。自動巻き(Cal.200-1)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径42mm、厚さ13mm)。200m防水。24万6510円(税込み)。
ルミノックスが創業した米国カリフォルニア州サンラファエルは、太平洋沿岸に位置する都市だ。その広大な海に着想を得て誕生したのが、「パシフィック ダイバー オートマティック シリーズ」である。その中にラインナップされる創業35周年記念モデルのひとつ、「パシフィック ダイバー オートマティック 3100シリーズ ミッドナイト マリーナー」は、ウェーブ状のパターンが施された爽やかなホワイトダイアルに、セラミックス製インサートを備えた逆回転防止ベゼル、200m防水の316Lステンレススティールケースを組み合わせたダイバーズウォッチである。
ホワイトのダイアルにはブラックカラーのインデックスが配され、強いコントラストを生み出している。特筆すべきは、暗所での視認性の高さだ。針とフランジ、ベゼルに取り付けたルミノックス・ライト・テクノロジーのマイクロガスカプセルが自己発光するだけではなく、スーパールミノバを全面に塗布したダイアルが暗所でブルーに発光する。光が届きにくい海中においても、心強い相棒となってくれるだろう。
機械式自動巻きムーブメントを搭載していることも特徴だ。多くのブランドでも採用実績のあるセリタ社のCal.SW200-1を、シースルーバックから観賞することができる。
「ネイビーシール 4230シリーズ」
ルミノックスを象徴するネイビーシールウォッチの最新モデル。米海軍のさまざまな部隊でテストを行い、約7年間の月日をかけ2014年に承認となった「A.N.U 4220シリーズ」と同じケース設計を採用する。なお、A.N.U.はAuthorized for Navy Useの頭文字だ。搭載するクォーツムーブメントは、約8年間と、長期のバッテリー寿命を誇る。クォーツ。SSケース(直径45mm、厚さ13mm)。200m防水。13万7610円(税込み)。
「ネイビーシール 4230シリーズ」は、ネイビーシールウォッチの最新モデルだ。優れた視認性や堅牢性、200mの防水性やルミノックス・ライト・テクノロジーがもたらす高い実用性を備えつつ、現代的なアップデートが加えられている。
その特徴のひとつが、ブラックIP加工を施した316Lステンレススティール製の外装だ。耐久性に優れたステンレススティールによって、ネイビーシールウォッチが得意とする水中から、強い衝撃が加わるミッションまで、あらゆるシーンに対応可能な堅牢性を持つとともに、メタルらしい質感も備えている。また、ベゼル外周の刻みは深く改められ、回転時のグリップ感を高めている。ケースバックには、ネイビーシールズの刻印が刻まれており、オーナーはいつでもネイビーシールウォッチ誕生のドラマに思いを馳せることができる。
ベルトは、ブラックのラバーストラップと面ファスナーストラップの計2本が付属する。バネ棒外しも同梱されているため、気分によって付け替えることが可能だ。なお、ベルト交換には技術を要するため、慣れていない場合は購入店に依頼することをおすすめする。
ルミノックスの旗艦店「Luminox Lounge」で“強さ”を体験する
2003年、ルミノックスはアジア初の直営店として「Luminox Tokyo」をオープンさせた。プロフェッショナルに選ばれてきた生粋のツールウォッチ。そんなルミノックスの魅力を存分に堪能することができるLuminox Tokyoは、ブランドの世界観が広がる空間で現行モデルをフルラインナップで取りそろえるだけでなく、アーカイブコレクションの展示やファンミーティングも催され、ファンにとっては聖地とも呼べる場所であった。そして今夏、また一味違ったルミノックスの世界観を味わうことができるフラッグシップストア「Luminox Lounge」が、東京・南青山に誕生した。
今回オープンしたLuminox Loungeは、“ルミノックスの世界観を未来へつなぐ新たなコンセプトストア”として位置付けられている。南青山という立地にもふさわしい上質なインテリアで設えた空間は、まさに大人の隠れ家。挑戦する姿勢と遊び心を忘れないルミノックスオーナーを表現しているかのようだ。そのような中で、知識豊富なスタッフとともに、お気に入りの1本を吟味することができるというわけだ。
腕時計は、購入がゴールではない。日々使用する中で、バッテリー交換やオーバーホール、ストラップの交換など、さまざまなケアが必要となってくる。Luminox Loungeではアフターサービスの受け付けも行っており、困った際に相談できることもうれしい。末永く愛用したい腕時計だからこそ、しっかりと寄り添ってくれる店舗の存在は頼もしい限りだ。

創業35周年を記念する限定モデルのひとつ。6時位置に配されたF-117ナイトホークの開発チームであるロッキード・マーティン社のSkunk Works®のロゴは、暗闇で光る仕様。クォーツ。CARBONOX™ケース(直径44mm、厚さ15mm)。200m防水。8万9100円(税込み)。

創業35周年を祝して復活した、LANDシリーズの名作「RECON Point Man」。さまざまな地形で行動する軍隊をサポートする、タキメーターや方位ベゼルを搭載したナビゲーションツールだ。クォーツ。CARBONOX™ケース(直径45mm、厚さ13mm)。200m防水。9万1300円(税込み)。

北極圏の冒険をイメージしたカラーリングを採用し、MIL-SPEC–MIL-PRF-46374G TYPE III CLASS 1の性能仕様規格に基づいて製造されたモデル。ETA社の年差クォーツムーブメントを搭載する。CARBONOX™とチタンによる堅牢かつ軽量な外装も特徴だ。クォーツ。CARBONOX™×Tiケース(直径46mm、厚さ14mm)。300m防水。15万7410円(税込み)。

語れるストーリーを持つタフなツールウォッチを探している方は、ぜひLuminox Loungeを訪れてみてほしい。きっとこれまで知らなかったルミノックスの魅力に触れることができるに違いない。