スウォッチの黒フィフティ ファゾムスコラボレーションモデルは、見れば見るほど欲しくなる

FEATUREWatchTime
2025.09.04

ブランパンとスウォッチのコラボレーション「スキューバ フィフティ ファゾムス」の黒モデル、「スキューバ フィフティ ファゾムス オーシャン・オブ・ストームス」。ただのカラーバリエーションかと思いきや、ディテールに見どころが多い良作だ。コラボレーションスウォッチならでの「仕掛け」も施されている。

スウォッチ「スキューバ フィフティ ファゾムス オーシャン・オブ・ストームス」Ref.SO35B400
自動巻き(Cal.SISTEM51)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約90時間。バイオセラミックケース(直径42.30mm、厚さ14.40mm)。9気圧防水。6万1600円(税込み)。
Originally published on watchtime.com
Text by Roger Ruegger
[2025年9月4日公開記事]

ただ黒いだけじゃない! 遊び心が込められたディテールが満載

 スウォッチの「スキューバ フィフティ ファゾムス オーシャン・オブ・ストームス」は、2023年に初めてスウォッチがブランパンとコラボレーションした5つの海をテーマにした「スキューバ フィフティ ファゾムス」に加えて2024年に追加されたモデルだ。

落ち着いたブラックカラーの色合いは、どんなシーンでも使える印象を与える。

 カラフルだった前作に加えて、ケースカラーにブラックを採用した本作。単に色味を抑えただけのものかと思いきや、ディテールを見ていくと、予想外の変更点が見受けられる。そのひとつが、「月」というこのモデルのテーマのひとつかもしれない。

静かだった発売当日

 2024年1月11日午前10時30分ちょうど、チューリッヒのスウォッチストアでスイス国内初となるスキューバ フィフティ ファゾムス オーシャン・オブ・ストームス(Ref.SO35B400)の販売が開始された。例によって購入はひとり1日1本であった。チューリッヒよりも7時間も時差のある香港では、すでに何人かが、新たに手に入れたこの腕時計をネット上に投稿していた時である。

 幸いなことに、この新作のために並んだ人々は非常に少数で、氷点下の寒さの中で気を紛らわせる必要もなかった。さらに転売目的の人影もなく、ほとんどが筋金入りのスウォッチコレクターや時計愛好家であった。そして実際、その日並んだ人々は全員、この真っ黒なスキューバ フィフティ ファゾムス オーシャン・オブ・ストームスを購入することができた。

名前の由来と月とのつながり

 それより数日前にティーザーとなる新聞広告で発表された「オーシャン・オブ・ストームス」(ラテン語で、Oceanus Procellarum、日本語では嵐の海)の意味するところは、「ムーンスウォッチ」の新作ではないかと推測されていた。というのも、この名前は月の西側に存在する、とある月の海の名称だからだ。そして「月」というテーマは、腕時計の製作においては、鉄板のシンボルであることは疑いようがない。

 なお、発売日やティザーの手法は、2023年の9月に登場した、最初のスキューバ フィフティ ファゾムスとほぼ同じであった。スウォッチは2024年最初の目玉を、発売前日に公式発表した。それが宇宙から着想を得た名前を持ちながらも、実際には「スキューバ フィフティ ファゾムス」であることが明らかになった。ブランパン社長兼CEOのマーク・A・ハイエックはこう説明する。

「マニュファクチュールを象徴する詩的な複雑機構であるムーンフェイズは、ブランパンの顔であるだけでなく、クォーツ危機後の伝統的な腕時計製造の復興をも体現しているのです。」

海と月の密接な関係

 だが、名称の由来は、時計製造の歴史(クォーツ危機という嵐の海を乗り切った、機械式時計を象徴しているとでも言うべきか)から着想を得ているだけではないだろう。月の満ち欠けは、海の世界にも影響を与える。海、それはまさにフィフティ ファゾムスの故郷だ。潮汐は海洋生物に大きな影響を及ぼし、月の位相や光の強さは海洋動物や生態系の行動にも作用する。

 多くの海洋種は生物時計を持ち、月の満ち欠けや月明かりといった環境要因に適応している。それを意識してなのか、裏蓋からのぞくムーブメントには、ブランパンのムーンフェイズでおなじみの、顔が付いた月のイラストが小さく隠されており、UVライトを当てるとその姿を表すのだ。

ブランパンでおなじみムーンフェイズの顔付きの月は、UVライトを当てると浮かび上がる。

注意を払って設計されたディテール

 カラフルな前作と同様に、本作は限定ではない。今回はケースが完全なブラックで統一されており、ブランパンによれば、完全に地球の影に隠れてしまった新月(別名「ブラックムーン」)から着想を得たものだという。これにより、落ち着いた配色となった。さらに文字盤はサンレイ仕上げで上品に仕上げられたもので、6時位置の「Swiss Made」表記も移動し、「Swatch AG 2023」の文字はほぼ隠れるように処理されている。

絶妙な配色のインデックス。文字盤はサンレイ仕上げだ。

 共有のブランパン x スウォッチのロゴはブラックのサンレイ文字盤とリュウズに入り、インデックスは植字。ケースには「Swatch」の刻印、バックルには「Blancpain」の刻印が入っている。

このモデルのための、オケニア・ルナがプリントされたシステム51を搭載

 今回使用されたウミウシはオケニア・ルナという学名の付いたもので、ペルーのアンコンからチリのコリウモにかけて分布する種である。そのデジタルプリントがムーブメントに施されており、さらには月の表面模様もムーブメントに刻まれている。ケースは91m防水で、フィフティ ファゾムスの名称が示す「ファゾム」は英語圏で用いられる深度単位(50ファゾム=91m=300フィート)に由来する。

「オーシャン・オブ・ストームス」

裏蓋から透けて見えるムーブメントには、月とウミウシがプリントされている。ウミウシとの組み合わせはシリーズではおなじみだが、モデルごとにウミウシの種類とデザインは異なる。

 他の5本のバイオセラミック製スキューバ フィフティ ファゾムスと同様、本作も機械式ムーブメント、システム51を搭載している。これは生産工程が完全自動化された、機械式ムーブメントであり、1983年の初代スウォッチと同じくわずか51個の部品(中央のネジ1本を含む)で構成されている。ニヴァクロン製ヒゲゼンマイにより耐磁性を備え、驚異的な90時間のパワーリザーブを誇る。

 このムーブメントには従来のローターではなく透明なディスク状のローターを採用。歩度や精度はレーザー技術で工場出荷時に調整されている(日差±0.04秒)。完全密封されており、メンテナンス不要の長寿命設計だ。システム51は反時計回りで手巻き可能だが、時刻合わせの際にリュウズを回すと秒針が飛ぶ傾向がある。

実用的であり、決して安価ではないがそれを上回る魅力

 腕時計全体の印象に戻ろう。本作の文字盤は、最初に発表されたモデルよりも深みを感じさせるものであり、抑制されたデザインは日常使いにふさわしい。6万1600円(税込み)という価格は一般的な観点からすれば、決して安価とはいえない。だがその優れた価値と、手首の上での楽しさを提供してくれるモデルなのだ。

 現在、スキューバ フィフティ ファゾムス オーシャン・オブ・ストームス、は一部のスウォッチストアのみで入手可能だ。



Contact info:スウォッチ グループ ジャパン Tel.0570-004-007


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