時間と空間の境界を越えるウルベルクの新作「UR-10 スペースメーター」は、時刻を示すだけでなく、地球が宇宙を進む距離までも可視化する異色のタイムピースだ。一見クラシカルな3針時計の姿をしながら、その内部には地球の自転と公転を数値として記録する“宇宙的メカニズム”が息づく。ウルベルクが掲げる「時間の再定義」という理念を、もっとも詩的かつ科学的に体現しているのだ。

時間と空間を測る、新たなウルベルクの挑戦

ウルベルクは「UR-10 スペースメーター」を発表した。これは、伝統的な時計製造と宇宙規模の計測を融合させた限定モデルであり、時と分だけでなく、地球の移動に関する距離を知らしめてくれるタイムピースだ。
一見するとウルベルクらしからぬ一般的なケースと時針・分針を備えているため驚かされる。だが、本作は、よくよく見てみると、やはりウルベルクの腕時計そのものなのだ。
一見クラシック、しかし中身はウルベルクそのもの

ブラックダイアルを備えたモデル。このカラーでは25本限定である。自動巻き(Cal.UR-10.01。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約43時間。チタン+SSケース(直径45.40mm、厚さ7.13mm)。3気圧防水。世界限定25本。7万スイスフラン(税抜き)。
本作はオロロジー的に革新的であり、デザイン面ではおとなしそうに見えて型破り。そして気品にあふれているのだ。注射器を思わせる形状の時針と分針にはスーパールミノヴァが塗布されている。また、社内で製造されたブラックまたはグレーの文字盤を備えるこのモデルには、時間、空間の連続体において、地球が移動する距離を測定する3つのサブダイアルが備えられている。

一方、グレーカラー文字盤のモデルも存在する。こちらも25本限定。自動巻き(Cal.UR-10.01。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約43時間。チタン+SSケース(直径45.40mm、厚さ7.13mm)。3気圧防水。世界限定25本。7万スイスフラン(税抜き)。
地球の「自転」と「公転」を可視化する3つのサブダイアル
2時位置の「Earth(地球)」と記されたサブダイアルは、地球の1日の自転において500メートル単位で進み、10キロメートルで1周する。
4時位置の「Sun(太陽)」カウンターは20キロメートル刻みで進み、地球が太陽の周囲を公転する1000Kmで1周となる。そして9時位置の「Orbit(軌道)」サブダイアルは、これらの軌跡を統合し、自転時の1000Kmと公転6万4000Kmを、ひとつのサブダイアル上で同じ一周として表現しているのだ。
地球は止まっているような印象を覚えるかもしれない。だが、地球の自転、公転どちらを取っても信じられないほど高速で移動していることを教えてくれる
ケースバックに刻まれた宇宙の舞踏

文字盤側に加え、裏蓋側には24時間表示が搭載されている。ここには「rotation(自転)」と「revolution(公転)」の表示が刻まれており、自転は時計回り、公転は反時計回りに読むようになっている。この鮮やかな対比は、地球自身の反時計回りの公転を反映し、宇宙の舞踏を詩的に想起させるのだ。
シンプルに見えて極めて複雑なケース構造
チタンとステンレススティールを使用したケースは、45.40×44mm、厚さはわずか7.13mmというサイズ。一見してクリーンな外観の印象を覚えるが、それは複雑なエンジニアリングの賜物だ。チタン製のアッパーケースとステンレススティール製のケースバックは互いに組み込まれ、ケース側面の縦方向のネジで密閉されている。

ウルベルクのアートディレクター兼共同創業者マーティン・フレイは次のように語る。
「ケースはクリーンで対称的ですが、非常に独特な構造です。側面からネジで固定されており、ジェラルド・ジェンタがかつて行っていた手法を採用したのです。この構造は一部のアイコニックな腕時計で典型的なものでしょう。ケースはわずかふたつのパーツで構成され、ミドルケースを持ちません。シンプルに見えますが、実際には非常に複雑なのです」
自社設計によるムーブメント、Cal.UR-10.01
本作は自動巻きムーブメントCal.UR-10.01を搭載。ウルベルクはヴォーシェ・マニュファクチュールと提携してベースムーブメントを開発したが、コンプリケーションモジュールは自社で設計した。
また、巻き上げ効率を制御するために、互いに反対方向に回転する2枚のプロペラを備えた特許技術「デュアルフロー・タービン」も、自社開発によるものだ。このムーブメントは、2万8800振動/時で駆動し、約43時間のパワーリザーブを備える。
UR-10 スペースメーターは、ブラックチタン文字盤の25本、グレーチタン文字盤の25本、計50本の限定モデルとして提供される。



