ウルベルクの共同創業者、フェリックス・バウムガルトナーとマーティン・フレイにインタビュー「私たちは独立時計師のパイオニアである」

2025.09.18

アワーグラス銀座の新装オープンに際し、ウルベルクのフェリックス・バウムガルトナーとデザイナーのマーティン・フレイが来日した。同社が正規代理店になったことに伴い、取り扱いが始まった。

三田村優:写真
Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年3月号掲載記事]


「私たちは独立時計師のパイオニアである」

フェリックス・バウムガルトナー、マーティン・フレイ

(左)フェリックス・バウムガルトナー、(右)マーティン・フレイ
ウルベルク共同創業者。1997年にウルベルクを創業。第1作のUR-101を皮切りに、ユニークな時刻表示と、独立時計師の枠を超えた高品質な時計で、熱狂的なファンを獲得してきた。「30年以上お互いのことを知っているからね。ピンポンをやるようにアイデアを出していくんだ」(バウムガルトナー)。2022年からはエントリーモデルのUR-100で、より広い層への認知度を高めつつある。

「ウルベルクはシンガポールのアワーグラスが取り扱っていた。そこで、なぜ日本でも取り扱わないのか?となった。ウルベルクにとって、アワーグラス銀座が最後のディスティネーションになればいいと思うよ」(フェリックス・バウムガルトナー)

 極めてニッチなウルベルクだが、創業以来、着々とファンを増やしてきた。

「1997年からブランドを始め、2003年から2010年は次のフェイズとして多次元的になった。そして2010年以降は電磁的な方向性だったね。2022年に発表したUR-100から次のチャプターになった。これはケースが小さく、エレガントになったエントリーモデルだ」

 そんな彼らの引っ提げてきた新作が、サテライトシステムに240度ものレトログラード分針を組み合わせたUR-150だ。

「UR-150の構成は、ケースデザインからスタートしている。UR-100はフレームが邪魔して動きを十分に見せられなかった。そこで動きを見せるには何が必要か、そして不要かを考えた。また、全体的にカーブを付けて、美しさと連続性を持たせた。フライバックで帰零するレトログラード式分表示も、嵐が起こるような動きになっている。これは、サソリが針を刺すような動きを見せることから、スコーピオンと名付けた」(マーティン・フレイ)。今まで以上の表現を可能にしたのは、ウルベルクの成熟だ。

ウルベルク「UR-150 スコーピオン TITAN」

ウルベルク「UR-150 スコーピオン TITAN」
ユニークな時刻表示を突き詰めてきたウルベルクの最新作。240°動き、1/100秒で帰零する分レトログラード針は、自転しながら「時」を示すアワーサテライトのディスクとともに240°回転し、分レトログラード針が60分から0分へ帰零すると、次の「時」を示すディスクとともにまた240°回転する。自動巻き(Cal.UR-50.01)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約43時間。Tiケース(縦52.31×横42.49mm、厚さ14.79mm)。3気圧防水。世界限定50本。1755万6000円(税込み)。

「3〜4年前から、ベースムーブメントをソーウインド製からヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ製に替えた。しかもこれは私たちのエンジニアとタッグを組んで作った特別仕様だよ。主ゼンマイを替えて香箱のトルクを増やしただけでなく、自動巻き機構にも手を加えた。その結果、分レトログラードは今までの120度から240度で動くようになった。フライバックを制御するのは、チューリヒの工房で製造する自社製のヒゲゼンマイだね」

 大きな成功を収めたにもかかわらず、ますます尖った路線を貫くウルベルク。その理由はなぜなのだろうか?

「他社はいろんなものを作っている。だから、同じことをする理由はないだろう。そして、私たちは独立時計師のパイオニアだ。創業はF.P. ジュルヌやドゥ・ベトゥーン、ヴィアネイ・ハルターなどよりも早い。だから常にパイオニアでありたいし、バウンダリーを広げたいんだ」(フェリックス・バウムガルトナー)



Contact info:アワーグラス銀座 Tel.03-5537-7888


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