カシオ「オシアナス」の新境地! 江戸切子で表現したのは“月夜の静かな海”

FEATUREその他
2025.12.04
PR:CASIO

誕生20周年を超え、さらに勢いを増すカシオ「オシアナス」。新たにラインナップに加わったのが、江戸切子ベゼルを備えたオールブラックの2モデルだ。従来の江戸切子ベゼルとは大きく印象を変えたシックな佇まいは、常に革新を続けるカシオの姿勢そのもの。ベゼルと文字盤を中心に、そのデザインと仕上げを詳らかにしていく。

カシオ オシアナス マンタ

オシアナス「マンタ SG1000シリーズ」Ref.OCW-SG1000CN-1AJR
“CALM NIGHT”をデザインテーマとする、オールブラックのオシアナス マンタ。江戸切子ベゼルに、月面をモチーフとした金属製文字盤を組み合わせている。ガリウムタフソーラー。フル充電時約18カ月(パワーセーブ時)。Ti+DLCケース(直径43mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。世界限定600本。68万2000円(税込み)。
商品ページ:https://www.casio.com/jp/watches/oceanus/product.OCW-SG1000CN-1A/
三田村優:写真
Photographs by Yu Mitamura
野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
加瀬友重:編集
Edited by Tomoshige Kase
[2025年12月4日公開記事]


洗練の理由は、精巧なカットとカラーにあり

 ギリシャ神話の海神「オケアノス」に由来する、カシオの「オシアナス」。絶えず表情を変え続ける海のように優雅さと精悍さを兼ね備え、ビジネスシーンはもちろんのこと、リラックスした大人の休日にもふさわしい腕時計だ。デザインだけではなく、標準電波の受信やスマートフォンリンクによる自動時刻補正、光発電による定期的な電池交換不要の手軽さなど、ギアとしてのスペックの高さも、人気を集めるポイントである。

 今年で誕生から21年目を数えるオシアナスは、誕生以来一貫してブルーをメインテーマにラインナップを拡充してきた。しかしこのたび、オシアナスの最上位コレクション「マンタシリーズ」にラインナップされた「OCW-SG1000CN-1AJR」は、オールブラックの外装に身を包んだシックなモデル。オシアナスの新章開幕を告げる本作は、どのような“表情の海”を見せてくれるのだろうか。本作の製品化に携わった、時計事業部商品企画部第二企画室リーダーの佐藤貴康とデザイン開発統括部プロダクトデザイン部プレミアムリストデザイン室の鈴木貴文のインタビューを交えつつ、洗練の理由をひもといていく。

カシオ オシアナス

オシアナスらしい、優雅さと精悍さが同居したデザイン。標準電波受信やスマートフォンリンクによる自動時刻補正機能と、光発電機能を搭載する。手間がかからないことに加え、ワールドタイムやストップウォッチをはじめとする多機能ぶりも魅力だ。

 オールブラックの腕時計となると、パイロットウォッチやフィールドウォッチなど、カジュアルでスポーティーなモデルが思い浮かぶが、本作はそれらと対極に位置するモデルだ。そう感じるのは、上品に煌めく江戸切子ベゼルのためだろうか。オシアナスでは2018年より、江戸切子モデルを展開してきた。硬度が高く加工の難しいサファイアクリスタル製のベゼルに、江戸切子のカッティングを施したこの腕時計。透明感の高い鮮やかなブルーのサファイアクリスタルに、あえて間隔の異なるラインを施す。そうして生まれた海のような不規則な揺らぎは、ブランドコンセプトと相まって数々のバリエーションへと発展。高い評価を得るに至った。

 このベゼルを手掛けてきたのは、東京都江戸川区に工房を構える堀口切子だ。今回も堀口切子によって、難削材のサファイアクリスタルに独自の文様があしらわれたモデルとなるが、では、従来品と、どのような点が異なるのだろうか?

「これまではオシアナスらしい青を基調とした、鮮やかで、華やかな色味の江戸切子をデザイン源としてきました。しかし今年は、表現を新しくしたいと考えました」(佐藤)

カシオ オシアナス マンタ

光の当たり具合によってブルーやパープルが差す、神秘性と静寂さを感じさせるベゼル。上半分は放射状のカット、下半分には水平方向のカットを施すことで、異なる表情を作り出している。

 新たな表現として選ばれた意匠のひとつが、月明かりが差し込む静かな夜を想起させるブラックの江戸切子ベゼルだ。わずかに差し込んだ光が、ブラックに仕上げられたサファイアクリスタルの中で反射を重ね、ファセットカットによる24面の輪郭を浮かび上がらせる。

 12時方向の表面上半分には、月明かりをイメージした放射線状の千筋(せんすじ)と呼ばれるカットが入る。そして6時方向の表面下半分にはランダムなカットと、裏面に水平の千筋が入る。つまり、ベゼルの上下で異なる文様が施されたのだ。さらに上からブラック、下からシルバーのグラデーション蒸着を行っている。蒸着による装飾は、見る角度によって色調が変化する。その特性を生かし、これまでのオシアナスとは異なる雰囲気を与えている。

江戸切子ベゼルは、複数の工程を経て作り出される。まずはファセットカットによって外周を整え、12時方向の上半分に江戸切子カット、6時方向の下半分表面に波の揺らぎを思わせるランダムな多面カットを加えたうえで水平方向の江戸切子カットを施す。裏面の下半分の切子部分にシルバー蒸着、そして上からブラック、下からシルバーのグラデーション蒸着処理を行うことで、複雑な色味に仕上げている。

 江戸切子の魅力は、ガラスに施されたシャープなカットと、それらが作り出す幾何学的な文様だ。本作に施されている千筋は、江戸切子の伝統的かつ基本的な文様。その1本1本は、職人の手作業によって彫り込まれたものである。小さく繊細なサファイアクリスタルを均一の深さでカットするには並外れた集中力と技術が求められる。

「すべてのベゼルのひとつひとつが、堀口切子さんの職人による手作業です。堀口徹さん(編集部注:3代目「秀石」として堀口切子を創業した江戸切子職人)によると、普段扱っているガラスに比べて、オシアナスのサファイアクリスタルはかなり硬いそうです。カットの際に使う、ダイヤモンド製ホイールの刃の切れ味をキープしなければならないのも大変なのだとか。さらに、今回ベゼルにあしらうことになった水平の千筋を見た時に『これは結構、難しい』と言われてしまいました(笑)。水平の千筋は、ホイールの刃とベゼルを持った指が極限まで近付くんです。つまり接触すれば大怪我をしてしまう。その緊張感が伴うため、刃に指が最も近づく6時方向の一番下の水平の千筋が、極めて難しいと言っていました。逆に、放射状の千筋は『リズミカルにいける』とのことです」(鈴木)

 サファイアクリスタルは確かに硬度は高い。しかしながら一定方向から力が強く加わると割れてしまう素材でもある。「つまり千筋が密集すると、割れやすくなってしまうんです。“やりたいデザイン”と“できる加工”の折衝点を、カシオと堀口切子さんとで模索しました。試作段階では割れてしまったものもあります。ただ、2018年から堀口切子さんと一緒に仕事をしてきて、江戸切子ベゼルの知見はある程度積み重ねています。ですので、今回は比較的スムーズに製品化にこぎつけました」(佐藤)。

「一方で、ブラックの江戸切子ガラスでありながら透明感も出す、という点には苦労がありました。真っ黒にすると透明感がなくなってしまいますよね。そこで、シルバーグラデーション蒸着を用いることで、透明感を出す工夫をしました」(鈴木)

 人の手が作り出す精巧なカットと、計算し尽くされたカラーリング。これが、新たな江戸切子ベゼルの洗練の理由である。


月面をイメージした文字盤の見どころ

 本作の見どころはベゼルだけではない。文字盤に施された型打ち模様にも注目だ。繊細な凹凸が陰影をもたらすブラックの文字盤は、月面をイメージしたものである。ベースは樹脂ではなく金属素材。そこにブラックのメッキと塗装を加え、さらに塗膜の表面を磨くラップ処理を施すことで、艶のある上品な印象に仕上げている。

 非常に凝った文字盤だが、驚くべきは本作が光発電機能を搭載しているということだ。文字盤に当たった光を電力に変換したうえで2次電池に蓄え、それによって時計を動かす。これが光発電クォーツウォッチの仕組みだが、ここで重要なのは、十分な動力を賄えるだけの光を受ける必要があるということだ。多くの光発電クォーツウォッチでは、光を透過しやすい樹脂製の文字盤を採用し、その下にソーラーセルを配置することでその要件をクリアしている。ハイエンドなモデルでは、樹脂に蒸着処理などのメタリックな質感を与えることで、高級感を出すことが一般的だ。

カシオ オシアナス マンタ

月面をモチーフとした、陰影の際立った文字盤。従来の半透過素材を使った文字盤にはない、装飾、加工、仕上げを実現している。

 ではなぜ、本作が金属製の文字盤を採用することができたのか? 佐藤がその秘密を語った。「全体をどういう見栄えのフェイスにするか、というアプローチで作っています。まずはブラック文字盤を磨くことで、リッチな質感を目指しました。ただ、そういった装飾的なもの以上に、『OCW-SG1000CN』のフェイスデザインの根底にあるのは、『ガリウムタフソーラー』なのです」。

 ガリウムタフソーラーは、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」に搭載されている太陽電池の技術を腕時計用に応用したもの。従来品に比べると晴天時の太陽光では約5倍、屋内の約500ルクスの蛍光灯では約2倍という高効率を誇る。これによって、文字盤の外周部にのみソーラーセルを配置するだけで十分な動力を得ることが可能となった結果、従来の樹脂製文字盤の課題であった表現の制約から解放されたのだ。

 ちなみにオールブラックの意匠とマッチさせるために、文字盤やそこからのぞくモジュールのパーツ類の加色についても、細かい配慮がある。パーツごとにさまざまなトーンの黒を配置し、メリハリのある印象を作り出しているのだ。


すべてのデザインは“CALM NIGHT”に収斂する

 本作がコンセプトに掲げるのは“CALM NIGHT”である。「ライフスタイルの中に海があり、夜の海で気持ちをリセットするといった、ゆっくりと過ごす情景からインスパイア」されたと説明するように、神秘性と静寂さ、その中に灯る穏やかさを思わせるデザインだ。

 文字盤が闇夜に浮かぶ月を表し、放射状に切り込まれた上半分のベゼルが夜空に輝く月の明かりを、水平のカットを与えられた下半分のベゼルが静かにさざめく波間を感じさせる。光を受けて煌めく詩的な情景は、まるで満月の夜に見られるムーンロードのようだ。

カシオ オシアナス マンタ

DLC処理を施したチタン製のブレスレットは、オシアナス マンタを象徴する矢羽根型のコマで構成されている。ザラツ研磨を施し、ポリッシュとヘアラインを使い分けて仕上げられることで、質感に違いを出している。DLC処理によって、高い耐摩耗性と艶のある発色を実現していることもポイントだ。

 チタン素材ならではの軽さと12mmを下回るケースの薄さによって、着用者にリラックス感を与えてくれる。ケースバックの中央にはリアルな月面が描かれ、手首から外したときもその幻想的な時間は終わらない。

ケースバックには、リアルな月面の姿が描かれている。腕時計の裏面を見ることができるのはオーナーの特権。手首に装着しているときだけではなく、手にとって眺めても楽しむことができる。


同コンセプトの「OCW-S7000CN-1AJF」は1600本限定

 オールブラックのオシアナス マンタとして、ブランドの新境地を開いたOCW-SG1000CN-1AJR。しかし本作には、同じく“CALM NIGHT”をデザインテーマにしたモデルも存在する。それが、「OCW-S7000CN-1AJF」である。

カシオ オシアナス

オシアナス「マンタ S7000シリーズ」Ref.OCW-S7000CN-1AJF
同じく“CALM NIGHT”をデザインテーマとする新作。丸みを帯びた江戸切子ベゼルや縦3つ目の文字盤レイアウトなど、SG1000シリーズのモデルとは一味違った魅力を備える。タフソーラー。フル充電時約19カ月(パワーセーブ時)。Ti+DLCケース(直径42.8mm、厚さ9.8mm)。10気圧防水。世界限定1600本。30万8000円(税込み)。
商品ページ:https://www.casio.com/jp/watches/oceanus/product.OCW-S7000CN-1A/

 江戸切子ベゼルに月面をモチーフとした文字盤を備えている点は、OCW-SG1000CN-1AJRと同様。しかし、サファイアクリスタル製のベゼルは丸く仕上げられ、より柔らかい印象だ。ちなみにベゼルに施された千筋は、表面ではなく、すべて裏面にカットされている。マットブラックの文字盤には月面の繊細なパターンをあしらっており、艶のあるベゼルとのコントラストを楽しむことができる。

S7000シリーズのベゼルでは、まずリング状に切り出したサファイアクリスタルに対し、下半分に多角カット加工を施す。さらに裏面から江戸切子カットを行い、切子部分にシルバー蒸着。そのうえで上からブラック、下からシルバーのグラデーション蒸着を施している。

 光発電機能は、ガリウムタフソーラーではなく、従来のタフソーラーによるもの。定期的な電池交換を必要としないので、実用性も備えている。

 モジュールはそのままとはいえ、“CALM NIGHT”の表現のために、本作にもいくつかの新しい挑戦がある。特筆すべきは文字盤だ。OCW-S7000CNは、このモデルのために、金型から開発して文字盤を成型しているのだ。砂のような質感は、電気鋳造によるもの。上からかなり厚めにラッカー塗装を吹いているが、月面を思わせるパターンは潰れていない。

「ラッカーを厚くしたのは、インダイアルと文字盤のギャップを埋めるために積層させなくてはならなかったから。乾式メッキではなく、蒸着処理でもなく、文字盤両面からのブラックラッカー塗装。ガリウムタフソーラーではなくとも、カシオの高効率な遮光分散型ソーラーだから出来た仕上げです」(鈴木)

 インデックスはOCW-SG1000CNの金属製に対して、OCW-S7000CNは樹脂製となる。「完成した時の威厳を意識して、樹脂でも高い質感を出すことに注力しました」(佐藤)。

 一方でケースはより薄く、厚さは10mmを切っている。軽量かつ耐食性に優れたチタンに、耐傷性を高めるDLC処理を施したケースとブレスレットは、まるで着けていることを忘れてしまうような軽快さだ。

カシオ オシアナス マンタ

薄くエレガントなサイドビュー。耐久性を確保するために厚みのあるサファイアクリスタルベゼルを採用しながらも、9.8mmという薄さを実現している。

 価格は、OCW-SG1000CN-1AJRの半分以下となる税込み30万8000円。ベゼルのカットや文字盤、光発電機能など、SG1000の方がワンランク上の仕様であることは間違いない。しかし丸みを帯びたベゼルだからこそ感じられる柔らかな雰囲気や、薄型ケースがもたらす優れた装着感は、S7000でこそ味わうことのできる魅力なのである。


カシオの新時代を予感させる必見のイベント

 一般に電卓メーカーとして知られていたカシオが時計事業へ参入したのは、1974年のこと。時間が1秒1秒を足し続けていくものであると考えるならば、電卓の延長線上に腕時計を開発することができるのではないか。カシオの創業者である樫尾俊雄は、発明家ならではの柔軟な発想で腕時計の開発に着手し、1974年に、世界初のオートカレンダー付きデジタルウォッチ「カシオトロン」を発売する。さらに、家電量販店やディスカウントストアなどの独自の販路を開拓し、後発ながら市場で確たる地位を築き上げた。樫尾兄弟の発明家としての探求心と開発力、経営者としての才覚があってこそなしえたものであろう。

 そんな同社の歩んできた歴史を、アーカイブピースとともに振り返るイベントが、伊勢丹新宿の本館1階 ザ・ステージで開催される。期間は2025年12月10日(水)から同月16日(火)まで。イベントのテーマである「“Maverick Timepieces: CASIO Beyond Tradition”時計業界の異端児」は、時計業界の常識を逆転の発想で打ち破ってきた同社にふさわしいものと言えるだろう。

 会場ではG-SHOCKやオシアナスの最新モデルが並ぶほか、詳細な解説とともに、エポックメイキングな製品を世に送り出してきたカシオの開発哲学とものづくりの思想に触れることができる。このイベントを通じて、「0から1を生み出す」や「発明は必要の母」など、カシオの根底に流れる考えをより深く理解することができるはずだ。

Photograph by Satoru Togashi
カシオの時計事業の歩みとともに、その根底に流れる哲学や思想に触れることのできるイベントが、伊勢丹新宿で開催される。G-SHOCKやオシアナスの最新モデルも展示され、カシオの現在地を知ることができるはずだ。なお、監修には『クロノス日本版』が携わっている。編集長・広田雅将が「カシオの時計事業、そしてカシオのラグジュアリーとは?」を語る映像は必見。

“Maverick Timepieces: CASIO Beyond Tradition”時計業界の異端児

日時:12月10日(水)~16日(火)10:00~20:00
場所:伊勢丹新宿 本館1階 ザ・ステージ
住所:東京都新宿区新宿3-14-1


Contact info:カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925
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