「満足できる時計が必ず見つかるショップ」として人気のISHIDA。その秘密を全3回にわたり解き明かしていく。第1回は熟練のスタッフが多数在籍するISHIDA 新宿を取材。熱心なリピーターを増やしているというその理由はいったいどこに? 全フロアの主要スタッフに直接話を聞いてみると、その類い稀なホスピタリティが見えてきた。

住所/東京都新宿区新宿3-17-12
営業時間/12:00~20:00(土日祝11:00~)
定休日/無休
Photographs by Akinori Kawanishi
長谷川剛:文
Text by Tsuyoshi Hasegawa
加瀬友重:編集
Edited by Tomoshige Kase
[クロノス日本版 2026年1月号掲載記事]
語れるスタッフと語る店「ISHIDA 新宿」
時計というアイテムは単なる時報装置にとどまらない。人となりを表す名刺であり、趣味嗜好のアクセサリーであり、愛好の軌跡であったりする。自身を投影した1本を探し出すのだから、そもそも選定は決して簡単じゃない。もちろん時計を求める人は、ある程度目星を付けて店舗に赴くもの。しかしいざ入店すると、あまたの魅力的なコレクションを前に、さらに迷うことになる。そこで頼りになるのがショップスタッフだ。時計選びという航海を、常に正しい方向へと導いてくれる羅針盤である。

ISHIDA創業45周年を記念したモデル。レッドゴールドケースにアンスラサイトカラーの文字盤、茶のアリゲーターストラップの組み合わせがエクスクルーシブだ。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間、18KRGケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。限定20本。312万4000円(税込み)。
数ある時計専門店の中でも、幅広い品揃えと充実のサービスで支持を得ているISHIDA。今回訪れたISHIDA 新宿は、地下1階から地上5階まで計6フロアを展開し、各階ごとにブランド属性を揃えるなど、カスタマーファーストの分かりやすい構成が特徴だ。そしてその6フロアすべてに、日本時計輸入協会が認める「CWCウオッチコーディネーター」の資格を持つ敏腕スタッフが常駐する。彼らは、それぞれのブランドやモデルに関する十全な知識に加えて、特筆すべき強みを持っている。それはフロアを横断してーーつまりブランドの垣根を越えてーー顧客のニーズに寄り添う自在な提案力だ。リクエストさえあれば、スイスのラグジュアリーメゾンと日本の実用時計メーカーを並べて見せることも守備範囲。彼らは純粋なホスピタリティから、目の前の顧客がどういう気分で、どのような主張を大事にし、何に迷っているのかに対して、真摯に向き合う。

本誌編集長の広田雅将が監修したISHIDA限定モデル。通常モデルとの違いはツートーンのセクターダイアルと、リアルな月を表現したムーンフェイズの意匠。自動巻き(Cal.RW4280)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径35mm、厚さ9.98mm)。5気圧防水。限定100本。46万2000円(税込み)。
そのためにISHIDAのスタッフが最も重視しているのが、コミュニケーションである。面白いのは、客との話題が時計に限らない点。特定のブランドやモデルについて熱心に語り合うだけではなく、趣味のトークに終始することもしばしばだという。なぜか。それは自然に流れる会話の中にこそ、往々にして、客の求める真実が隠されているから。もちろん雑談がゴールではないことは明白だ。スタッフは「本当に満足のいく1本を手にしていただきたい。それには、多少の時間が掛かるものです」と口を揃える。
日常を超えたある種の特別感が漂う高級時計店。ゆえに、その扉を重く感じる人は少なくないだろう。だが、ISHIDAに関して言えばその懸念はまったく無用だ。「良さそうなの、ある?」くらいのテンションで訪れても、スタッフはきっと笑顔で迎えてくれるはず。リラックスして時計を語り合う。ISHIDAはそんな時間まで楽しめる、まさに伴走者たるショップなのである。

ブラック・マザー・オブ・パールの文字盤に、ゴールドカラーのインデックスを配置。ケニッシ社との協業から生まれたマニュファクチュールキャリバーを搭載する。自動巻き(Cal.NN20/1)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。限定30本。75万9000円(税込み)。
事業の動向と『時計店』に対する想い

BEST ISHIDAの使命は3つあります。正規販売店部門とヴィンテージ(中古)部門のふたつの部門を持つことで、時計の歴史やブランドについて、今の時計と過去の時計、つまり、今のモデルと過去のモデルがつながることでブランドをより広い観点から語ることができます。素晴らしい時計を未来の世代へとつなげていくことがBEST ISHIDAのひとつ目の使命です。そして、時計を通じて、皆さまに「感動」と「笑い」と「夢」を届けることが、ふたつ目の使命です。そして3つ目の使命が、次世代に向けて人生最初の機械式時計となるスタンダードな時計ブランドを盛り上げて、より多くの方に機械式時計の感動を感じてもらうことです。
BEST ISHIDAは、この想いを持ったスタッフがISHIDA新宿をはじめISHIDA表参道、ISHIDA N43°(札幌)、Time Vallee ISHIDA麻布台ヒルズ、BEST VINTAGE新宿、BEST VINTAGEグランフロント大阪、Luxury Time Lounge大丸心斎橋店、Breitlingブテッィク銀座、GINZA SIXほか、3つのブティックにて皆様をお待ちしております。
株式会社ベスト販売 代表取締役社長 石田充孝
知名度が高いブランドが揃う1F

明るく開放的な雰囲気が漂う1階フロア。オメガやパネライ、ピアジェ、ボーム&メルシエ、モンブランなど、高い知名度を持つブランドが揃う。新宿駅至近というアクセスの良さもあり、インバウンドの買い物客も多く訪れる。「時計以外に、ダンヒルやフォッペのアクセサリー類なども取り扱っています」(安部さん)。


快活な語り口と笑顔が魅力の好青年。「店舗の入り口ですので、1階スタッフは総合案内の役割も兼ねています。お声掛けして、皆さまをご希望のフロアへお連れします」。
スポーティーなブランドを集めた2F

グランドセイコー、タグ・ホイヤー、ブライトリング、ロンジン、ベル&ロス、エベラールなど、アクティブなイメージの時計を得意とするブランドを集めた2階。昨今は50万~100万円台の、スポーティーなモデルが人気を博しているという。フロアスタッフの渡部さんいわく「スペックを重視する顧客も多く、各機能の説明や新モデルの改良点などをしっかり伝えるよう心掛けています」。


ヴァシュロン・コンスタンタン、IWC、ゼニスが揃う3F

3階はヴァシュロン・コンスタンタン、IWC、ゼニスが揃う。特にヴァシュロン・コンスタンタンの充実ぶりと重厚な設えは、ブティックさながらだ。「世界的メゾンの魅力を存分に味わってください。トークを交えて時計選びの時間を盛り上げます」(小林さん)。


販売員として30年のキャリアを持つ小林さん。「初めての方には時計の履歴をうかがいながら、好みの方向性を探ります。ご質問もぜひご遠慮なく。提案の幅が広がりますので」。
高級かつ玄人好みのブランドを集めた4F

ブレゲやジャガー・ルクルト、ブランパン、ジラール・ペルゴなど、高級かつ玄人好みの6ブランドを集めた4階。「歴史やムーブメントの変遷など、語りどころの多さを持つ時計が揃っています。ご要望に沿いながら、時間を掛けてその魅力をご紹介しています」(荻原さん)。


勤続14年目というベテランスタッフの荻原さん。「弊社では無料点検をはじめとして、アフターサービスも万全の体制を整えています。いつでも安心してご購入ください」。
人気の20ブランドが集結した5F

5階にはハミルトン、フレデリック・コンスタント、ノルケインなど、20もの人気ブランドが集結。G-SHOCK最上位クラスのコンセプトショップ「EDGE」や、国内2店舗のみというエドックスのコンセプトショップも併設する。「例えば『10万円台でのおすすめは?』といった要望にも、会話の中からベストを探し出します」(加藤さん)。

ISHIDA新宿にて19年勤続の副店長。「この先のブレイクを予感させる、興味深いブランドも揃っています。多くの人にご紹介したいので、ぜひ5階までお越しください」。
ヴィンテージウォッチを扱うB1F

厳選のヴィンテージを販売する地下1階。正規販売モデルの下取り品も多く、品質に関しては折り紙付きだ。なかでもカルティエやパネライの在庫数はトップクラス。「ロレックスをはじめ、認定中古のブライトリングなども揃っております。希望にかなう1本をご提案します」(髙雄さん)。


20年にわたり仕入れ業務を担当するISHIDAきっての目利き。「ヴィンテージはそのストーリーも大きなポイント。品質はもちろん、時計の持つ背景をしっかりとお伝えします」。



