2025年の新作より、傑作ドレスウォッチを紹介する。まさかの復刻となったブレゲ「スースクリプション」から、手頃な価格で手巻きムーンフェイズが楽しめるオリエントスターまで、5つのモデルをピックアップした。

Text by Tsubasa Nojima
[2025年12月14日公開記事]
ドレスウォッチ人気は衰えを知らない
ここ数年で注目が集まっているカテゴリが、ドレスウォッチだ。従来のドレスウォッチは繊細で取り扱いに注意を要するものであったが、ラグジュアリースポーツウォッチのブームを経て、薄型ケースに十分な実用性を与えるノウハウを積み上げた各社は、日常的に使いやすいドレスウォッチを製造することができるようになった。結果として、現在では多くのドレスウォッチがラインナップし、次々と新作が発表されている。
その傾向は今年も変わらず、アーカイブの復刻や既存モデルの改良、まったく新しいデザインを発表するなど、まさに百花繚乱の様相を呈した。今回はそこから、5つのモデルを厳選して紹介したい。
ブレゲ「クラシック スースクリプション 2025」Ref.2025BH/28/9W6

注文時に顧客が4分の1の金額を支払う、前払い予約制のポケットウォッチに着想を得たモデル。温かな色味が特徴の18Kブレゲゴールド製ケースを採用している。手巻き(Cal.VS00)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約96時間。18Kブレゲゴールドケース(直径40mm、厚さ10.8mm)。3気圧防水。757万9000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
今年で創業250周年を迎えたブレゲ。同社はこの記念すべき年に、その歴史を象徴する数々のアイコニックなモデルを発表した。「クラシック スースクリプション 2025」も、そのうちのひとつである。
着想源となったのは、アブラアン-ルイ・ブレゲが前払い予約制を導入して販売した1本針のポケットウォッチだ。注文時に顧客が4分の1の金額を支払うという、この販売方法を取ることにより、ブレゲは安定した資金を下に時計製造を行うことができるようになった。
カーブしたグラン フー エナメルダイアルには、ブレゲ数字インデックスが並び、6時位置にはパンタグラフを用いた手彫りによるシークレットサインが刻まれている。ブルースティールのブレゲ針は先端を曲げ、ダイアルとの距離を詰めることで視認性を高めている。
ケースは、今年新たに発表された素材である18Kブレゲゴールド製だ。この素材は、グラン フー エナメルダイアルに調和した、温かな色味を特徴とする18Kゴールド合金である。シースルーバックを採用しており、新開発の手巻きムーブメントを鑑賞することが可能。ムーブメントも、オリジナルを想起させるデザインに仕上げられている。
ブランパン「ヴィルレ ウルトラスリム」Ref.6651N 1142 55B

ヴィルレコレクションの中でもシンプルな3針デイトモデル。優雅な書体のローマ数字インデックスやダブルステップベゼルなど、アイコニックな意匠が採用されている。自動巻き(Cal.1151)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。SSケース(直径40.00mm、厚さ8.70mm)。3気圧防水。165万円(税込み)。(問)ブランパン ブティック 銀座 Tel.03-6254-7233
ブランパンの創業地の名を冠する「ヴィルレ」コレクションは、ラウンド型のケースやダブルステップベゼル、セージ型の時分針などを特徴とするシンプルなドレスウォッチだ。
マットなオパリンダイアルには優雅な書体のローマ数字インデックスとデイト表示、ブランドロゴが配されている。ミニッツマーカーがないため、ゆったりとした印象に仕上がっている。
ケースは、ポリッシュ仕上げのステンレススティール製。直径40mmというサイズに加え、短いラグを備えているため、細腕の方でも着用しやすい。厚さは8.7mmと薄く、“ウルトラスリム”の名にふさわしいサイズ感だ。ベージュカラーのアリゲーターレザーストラップによって、カジュアルにも使いやすいことも魅力。より畏まった場で着用するドレスウォッチを求めるのであれば、ブラックのアリゲーターレザーストラップへ変更するのも良いだろう。
搭載するCal.1151は、フレデリック・ピゲが開発した薄型自動巻きムーブメントをルーツに持つ。3.25mmという薄さながら、約100時間ものロングパワーリザーブを実現し、シリコン製ヒゲゼンマイによって耐磁性も備えている。
ショパール「L.U.C クアトロ‐マーク Ⅳ」Ref.161954-9001

誕生から25周年を迎えた「L.U.C クアトロ」。今回発表された新作では、シンプルなレイアウトのダイアルを採用し、よりドレッシーな印象となった。手巻き(Cal.L.U.C 98.09-L)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約216時間。Ptケース(直径39mm、厚さ10.4mm)。30m防水。751万3000円(税込み)。ショパールブティック限定販売。(問):ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
「L.U.C クアトロ」は、4つの香箱を搭載するショパール独自のクアトロテクノロジーを採用し、約9日間ものロングパワーリザーブを実現したドレスウォッチだ。これまでのL.U.C クアトロではダイアル側にパワーリザーブインジケーターが配されていたが、今作ではムーブメントのブリッジ上へと変更され、シースルーバックを通して主ゼンマイの残量を確認することができる。
ダイアルは、くさび型のインデックスとレイルウェイミニッツサークル、スモールセコンドと時分針が配された、古典的なドレスウォッチらしいレイアウトだ。そこに梨地仕上げとスカイブルーPVDを施すことで、モダンな印象を与えている。
滑らかな曲線を取り入れたラウンド型ケースは、プラチナ製。ラグの間には、同社の勤勉さを象徴する手彫りのミツバチのシンボルがあしらわれている。円錐型のリュウズがクラシカルさを醸し出しつつ、操作性を向上させている。
搭載する手巻き式ムーブメントは、ジュネーブシールを取得した審美性も魅力。シースルーバックからは、ストライプ装飾を施したブリッジや、スワンネック緩急針を鑑賞することができる。
オリエントスター「クラシックコレクション M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング」Ref.RK-BW0001S

シンプルなダイアルの手巻きのムーンフェイズウォッチ。ムーンディスクの月には、白蝶貝が採用されている。手巻き(Cal.F8A62)。20石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ11.9mm)。3気圧防水。41万8000円(税込み)。(問)オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380
オリエントスターの「クラシックコレクションM45」は、星団すばる(プレアデス)に着想を得たコレクションだ。伸びやかな形状のラグを備えたケース、ローマ数字インデックス、リーフ型の時分針を特徴としたクラシカルなデザインが与えられている。
その新作として登場した「クラシックコレクション M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング」は、手巻き式ムーブメントを採用したムーンフェイズ搭載モデルである。放射目仕上げとラッピング加工を施した艶やかなホワイトダイアルにローマ数字インデックスを組み合わせ、上品に仕上げている。
12時位置にはオリエントスターを象徴するパワーリザーブインジケーター、6時位置には幻想的なムーンフェイズが配されている。オリエントスターの手巻きモデルにはオープンワークダイアルを採用したものが多かったが、本作ではクローズドダイアルを採用し、より普段使いしやすくなっている。
ムーブメントは、シースルーバックから鑑賞することができる。ストライプ装飾を施したブリッジや、鮮やかなブルーのシリコン製がんぎ車など、見どころも十分だ。
カルティエ「タンク ルイ カルティエ」Ref.WGTA0346

「タンク ルイ カルティエ」のラインナップに加わったラージモデル。2針のノンデイトというドレスウォッチらしい佇まいのダイアルを採用する。自動巻き(Cal.1899 MC)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KPGケース(縦38.1×横27.75mm、厚さ8.18mm)。日常生活防水。248万1600円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
1922年に誕生し、今なおオリジナルの姿を強く継承する「タンク ルイ カルティエ」。そのコレクションに、縦38.1mm、横27.75mmのラージサイズモデルが加わった。放射状のパターンが際立つイエローバーニッシュ仕上げのシルバーダイアルに、タンクを象徴するローマ数字インデックスとレイルウェイミニッツサークルがプリントされ、ブルースティールの時分針がアクセントとなっている。
レクタンギュラー型のケースは、エッジを落とした丸みのあるデザイン。アールデコ様式を取り入れた意匠が特徴だ。素材には18Kピンクゴールドを採用し、華やかで温かみのある印象だ。パール状の装飾が与えられたリュウズには、サファイアがセットされている。ベルトは、セミマットのブラウンアリゲーターレザーストラップを採用する。
搭載するムーブメントは、2019年に発表された自動巻きのCal.1899 MC。そのキャリバーナンバーは、カルティエスタイル発祥の地として知られるラペ通り13番地のブティックがオープンした1899年にちなんだものである。



