2025年に発表された新作時計の中から、その道のプロがベスト5を選ぶ年末恒例企画。Youtubeチャンネル『ウォッチ情熱応援団』のメインMC、団長が選出したのは、彼が「とにかく凄かった」と評する周年モデルをはじめ、センスの良さの光る5本だ。

ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー」

自動巻き(Cal.1120 QP/1)。36石。1万9800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGまたは18KWGケース(直径41.5mm、厚さ8.1mm)。5気圧防水。要価格問い合わせ。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
270周年を迎えたヴァシュロン・コンスタンタンの新作はどれも圧倒的でした。その中でも、改めてブランドのセンスの良さを感じたのがこちら。8.1mmの薄いケースにパーペチュアルカレンダーを搭載し、5気圧防水のスポーツウォッチとしてパッケージング。カラーのチョイスもお見事で、普段使いしたくなる良い時計として、いつかは手にしたいと本気で思えた作品でした。
ブレゲ「クラシック スースクリプション 2025」

手巻き(Cal.VS00)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約96時間。18Kブレゲゴールドケース(直径40mm、厚さ10.8mm)。3気圧防水。735万9000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
1本針の懐中時計、画期的な先払いシステム、耐振装置「パラシュート」、ブレゲ創業の地・シテ島モチーフのギヨシェ、パンタグラフによるシークレットサインなどなど。初代ブレゲの天才性、そして250年にわたる歴史へのオマージュを凝縮した大傑作。通常時計ブランドは踏み込まないであろう領域、「18K合金の開発」から行った熱の入れようにも感動しました。
グラスヒュッテ・オリジナル「セネタ・マイセン」

自動巻き(Cal.36-16)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約100時間。18KRGケース(直径40mm、厚さ10.20mm)。50m防水。世界限定150本。423万5000円(税込み)。(問)グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 Tel.03-6254-7266
ドイツの美意識が見事に表現された、グラスヒュッテ・オリジナル創業180周年を祝うにふさわしい作品。手書きの「ミスティックメゾン」は、まるでおとぎ話のような魅惑的な世界観。インデックスまで手書きで、複数回の焼成によって出来上がるという、まさに職人のこだわりを感じる1本。文字盤とムーブメントに目を奪われがちですが、外装の磨き上げも素晴らしすぎました。
オメガ「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン」

手巻き(Cal.3869)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。セラミックケース(直径44.25mm、厚さ12.97mm)。50m防水。各232万1000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
「月は本質的にグレーだ」という、人類初の月周回飛行に成功した宇宙飛行士ジム・ラヴェル氏の言葉を体現したデザインセンスが素晴らしい。文字盤とムーブメントのレーザーエングレービングは、前作同様の仕上がりの良さ。加えて今作は、外装にプラズマ加工が施されたグレーセラミックスを採用したことで、宇宙船を想起させるようなメタリックな質感に。ステンレススティールと見紛うほどのキラメキです。
パネライ「ルミノール マリーナ チタニオ」Ref.PAM03325

自動巻き(Cal.P.980)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Tiケース(直径44mm、厚さ13.7mm)。500m防水。147万4000円(税込み)。(問)オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110
4月の記事(https://www.webchronos.net/features/136766/)でも取り上げましたが、やはり1年を通して見てもこれは外せないなと。ケースを薄くして、裏透けにして、防水性能を上げて、ストラップのクイックチェンジ機能まで追加した、超優等生な「ルミノール」。チタンケースながら、価格設定が優しいのも良い。ホワイト系とグリーンの2トーンで構成されるシンプルなカラーリングも素敵。
総評
2025年とにかく凄かったのは、周年記念を迎えたブランド、特に270周年を迎えたヴァシュロン・コンスタンタンと250周年を迎えたブレゲの新作ラッシュ。ブレゲはCEOグレゴリー・キスリングさんのプレゼンテーションを直接伺えたこともあり、より一層の感動がありました。
またその他のブランドにおいても、チャレンジングな新作が多かったように記憶しております。上述のダーク サイド オブ ザ ムーンも然り、ロレックスやグランドセイコーの新ムーブメントも素晴らしかったですし、カルティエやチューダーのバリエーション展開のうまさも光っていましたし、「ティソ PRX」のフルチタンとかはもういろいろバグってて凄かったですよね!
普通じゃない何かを生み出すことは、もはや当たり前に期待される時代。2026年以降は、蓄積されたノウハウやヘリテージ、そしてそこから発揮されるセンスの良さが、より求められる時代になっていくことでしょう。
選者のプロフィール

ウォッチ情熱応援団 団長
腕時計の面白さを伝えるYoutubeチャンネル・ウォッチ情熱応援団のメインMC。モノづくりに憧れ、東証一部の電機メーカーへ研究職として就職。しかしマスプロダクトではなく『手仕事』への興味を自覚したことで職人の世界へ転身。『クラフトマンシップへの賞賛』をテーマに年間およそ300本、これまでに2350本を超える動画を投稿。累計再生回数は7200万回(2025年12月時点)を超える。



