オールドセイコーを代表する〝セカンドダイバー〟を着用レビュー! 使うほどに愛着が深まる腕時計

2026.01.27

2019年に通称“セイコー セカンドダイバー”こと「セイコー ダイバー 61MC」Ref.6105-8110を入手したことをきっかけに、この腕時計の正確な歴史を解き明かすこと、そして“セカンドダイバー”の最も有名な着用者のひとりである植村直己が「どの年代・仕様の“セカンドダイバー”が、どの冒険に携行されたのか?」を知ることをライフワークにする、モータージャーナリストの山田弘樹。本記事では、そのライフワークのスタート地点となったモデルの魅力が、着用レビューとともにひもとかれていく。

セイコー セカンドダイバー

山田弘樹:写真・文
Photographs & Text by Kouki Yamada
[2026年1月27日公開記事]


筆者とセイコー“セカンドダイバー”との出合い

 セイコー初のダイバーズウォッチ、通称“150mダイバーズ”が1965年に登場してから3年後の1968年。「セイコー ダイバー 61MC」(Ref.6105-8110)が登場した。1976年まで製造されたこのモデルは、“セカンドダイバー”の名称でオールドセイコー好きを中心に、親しまれている。

 筆者が、外装に経年劣化が多々見られる“セカンドダイバー”を入手したのが2019年のこと。劣化があるがゆえに、ちょっとだけ見てくれが悪いにもかかわらず、手に入れた最大の理由は、売り主が自身のブログでオーバーホールの様子を事細かにレポートしてくれていたからだ。そして、「これだけきれいなムーブメントは、今まで見たことがない」というひと言に、背中を押されて購入した。

 今思えば、いくらこうした理由があったとはいえ、個体も見ずに高額なヴィンテージ時計をよく買ったものだと呆れてしまうが、恋は盲目だった。そして、今なおその個体が手元で動き続けているのだから、ひとまずよかったということにしておきたい。

 ちなみに筆者が購入した2019年当時は、ミントコンディションの個体がおおよそ30万円弱という時代で、とてもじゃないが筆者には、手を出せなかった。そして今に至るまでその相場は、想像したほどではないが、常にじわじわと上昇し続けている。

セイコー セカンドダイバー

ダイバーズウォッチというと夏の海のイメージを持つかもしれない。しかし雪の中でも、経年によって渋みを増した“セカンドダイバー”はよくなじむ。

経年変化と防水性

 およそ7年間にわたって使用している愛機の外装は、ご覧の通り12時位置のベゼルに打痕があり、針も見事に錆びている。夜光塗料が盛り上がってインデックスの枠から少しはみ出しているのを考えると、後からリダンされたものかもしれない。最初はそんなことを考えると憂鬱な気持ちになったものだが、今となっては全く気にならない。投機対象とするならば話は別だが、ビンテージは直感。究極自分が好きだと思えれば、それでよいのだ。

「欲をかくな」という意味では、ヴィンテージ趣味は人世の修行である。

セイコー セカンドダイバー

針にも経年変化が見られる筆者の“セカンドダイバー”。しかし、自分が好きならそれでヨシ!

珍しいリュウズの仕様

 さて、筆者のそんな“セカンドダイバー”のリュウズは、ねじ込み式ではなく押し込み式だ。ケース側に付いたピンを、リュウズの溝に引っ掛けることで、簡易的にロックして防水性(というより堅牢性か?)を確保する方式が採られている。この留めピンが欠損していると押し込んだだけでは、ロックは掛からずリュウズはクルクルと回る。幸いにも、筆者の個体はピンが現存している。そしてこのピンを覆うために、ケースのリュウズガードが、つまみあげられたような形状になったというわけだ。

 このロックピンが欠損していると、ヴィンテージ市場では個体の評価が微妙に下がる。それはそうだろう。誰だって、より完調な個体が欲しいはずだ。

セイコー セカンドダイバー

特徴的なケースラインやリュウズガードが“セカンドダイバー”の持ち味である。リュウズの天面には「LOCK」の文字があしらわれている。

 とはいえ正直このロックが欠損していても、ダイバーズウォッチとしての機能に大きな問題はないのではないか? と筆者は思う。なぜなら1968~1969年に製造されていた、ハック(秒針停止)機能のないCal.6105Aを搭載した、いわゆる“前期型”の「Ref.6105-8000」のリュウズに、この機構はない。ロックピンを引っ掛けるための大きな溝がないリュウズを見ても、それが分かる。

 このリュウズのピンロック式は、セイコーがこのセカンドダイバーより、高い防水性を保つために採用した新機構だ。しかし現代的な見方からすれば、「ないよりはマシ」程度の装置に思える。

 もちろんリュウズがロックされずにたくさん空回れば、何らかの形でリュウズのパッキンが傷付いたり、巻き芯に負担が掛かる可能性はあるかもしれない。潜水中に水圧でリュウズが回転して、内部に浸水する恐れがないとも言えない。

 とはいえどうせ改良するなら、ねじ込み式リュウズにするべきだ。ちなみに“セカンドダイバー”と同年に発売された、“300mダイバー”こと「Ref.6215-7000」では、ねじ込み式がセイコーでは初めて採用されていた。そして1965年に発売された“サードダイバー”こと「Ref.6306/6409」シリーズも、ねじ込み式となった。

 セカンドダイバーがねじ込み式リュウズの採用を見送った理由がコストなのか、何なのかは、定かではない。これもセイコーに聞いてみたい事柄のひとつである。

 ちなみに筆者のセカンドダイバーは、定期的に主治医(時計の内外装の修理を手掛けるゼンマイワークス)で水圧テストをしてもらっているのだが、3気圧程度と、生活防水性を下回ったことはない。だから、小雨程度であれば躊躇なく使うし、夏場の汗もよほどでなければ気にしない。それでも中身だけでなく、文字盤の腐食は進んでいない。

 もちろんヴィンテージ時計に「完璧に発売当時の性能」はほぼないが、肌感覚ではねじ込み式でなくても、パッキンを定期的に取り替えていれば(サードパーティ製になるが)、生活防水性は保てる気がする。

 それより気を付けたいのは、リュウズを引いたまま、押し込み忘れてしまうことだ。“セカンドダイバー”のほとんどがアワーマーカーの夜光塗料を黒ずませ、アプライドのSEIKOロゴや針を錆びさせているのは、不注意なリュウズの解放が原因じゃないかと感じている。

実際に使ってみてどうなの?

 さて、“セカンドダイバー”を実際に使ってみてのレビューを記そう。

 筆者は意匠だけでなく装着感も大いに気に入っている。ケースサイズは直径44mmと大ぶりだが、厚みは12.5mmと意外に薄めで、セイコーが与えた純正風防は盛り上がっていて着用時にぶつけやすいが、筆者の個体は最初から社外品の平べったいハードレックス風防に交換されていたため、手首に載せても割と重心が低い。

セイコー セカンドダイバー

150m防水、自動巻きムーブメントを備えながらも、ケース厚は控えめだ。

 重量の実測値は本体のみで83gだから、ファブリックベルトでも着け心地がよく、ベルトさえしっかり手首に巻きつくものであれば、腕を大きく動かしてもヘッドが大きく振られるようなことはない。ちなみにラグ幅は19mmしかないから、しっかりした着け心地を望むのならば、ラバーベルトの方が良い。筆者はそのアンバランスさを気に入っているけれど、いまや細身のストラップにデカヘッドの見た目は、やっぱりちょっと変わっている。ファブリックベルトなどは18mmを付けることになるだろうから、その傾向はさらに強まる。

ヴィンテージウォッチとの向き合い方

 本作に搭載されるムーブメントはCal.6105B。2年半前に前述したゼンマイワークスでオーバーホールをしており、現時点の精度は日差が-10~15秒と、毎秒6振動のロービートの腕時計と考えれば、可もなく不可もない印象だ。次回は少し歩度を進むように調整してほしいと思うが、そこに目くじらを立てるほどでもない。必要なら15秒ほど、進めて時間を合わせればよいだけの話だからだ。つまり外観と一緒で、ある程度の緩さを許容することが、ヴィンテージとの楽しい付き合い方だと思っている。

セイコー セカンドダイバー

ベゼルには傷が多く見られるが、これまでツールウォッチとしてさまざまなシーンで使われてきた証しとも言える。

 緩さで言えば、当時は潜水への問題意識が薄いのか、まだベゼルには逆回転防止機能が付いていない。だから、左右どちらにでも回すことができるし、そのクリック感も割と貧弱で、カタカタとしている。もしかしたらそれは、ベゼル内部のクリックボールがすり減っているからかもしれない。最初はこの緩さが実に安っぽくて嫌だったけれど、長く使うほどに愛着が湧いて、今はもうすっかり慣れっこである。

 なお、筆者が所有している個体は1976年2月製造の“後期型”。“セカンドダイバー”の製造期間は1968年~1976年だから、最後期の個体だ。

 マニアの方はご存じの通り、“セカンドダイバー”にはリュウズガードを持たないCラインケースの前期型(1968年~69年)と、リュウズガードを備えたそれ以降の中・後期型に分類することができる。さらにこの中・後期型には、ハックあり/なしのムーブメントの区別や、“ビッグM”または“スモールm”といった、文字盤の防水性の表記に関してのマイナーチェンジがあると言われており、さらには後期型はスクリューバックの刻印が違うといった区別も有名だ。玉石混淆の楽しい話題だから、次の機会に詳しく話そう。

操作性について

Cal.6106A セイコーダイバー

Photograph by Tsutomu Sato(ZENMAIWORKS)
写真左が、今回取り上げっている“セカンドダイバー”の裏蓋を開けてムーブメントをのぞかせたもの。なお、右の個体は同じく筆者が所有している、1971年製の“セカンドダイバー”だ。

 操作は一般的なカレンダー付きモデルと同じく、リュウズを1段引いて日付ディスクを、2段引いて秒針が停止してからの時刻合わせとなる。針合わせ時の操作感は、筆者の個体に限って言えば実に曖昧で、節度感はあまりない。前述の通りオーバーホールをしてパッキン類は変えているから、おそらく巻き芯もいい加減緩くなってきているのだろう。

 針合わせでは、少し分針を進めてから戻して合わせてやれば、バックラッシュによる針飛びは防げる時もあるけれど、リュウズを強く押しすぎてしまうと、簡単に針が動いてしまったり、針飛びしてしまったりして「むきー!」となる(笑)。さらに長針は多くのセイコーのダイバーズウォッチとは違って先端が平たいため、精密に調整しやすいとは言えない。

 当然のことながら夜光塗料はその消費期限を終えており、光らない。ブラックライトを当ててもピンク色の光の粒は見えないから、トリチウムではないのかもしれない。その代わり緑色に光り、蓄光するとぼんやりそれが残って、すぐに消える。

 オリジナルの“セカンドダイバー”がどのような夜光塗料を使っていたのか、これも聞いてみたい疑問のひとつだ。

 しかしながら一度時刻を合わせてしまえばその使い心地は、ひいき目も大いに含めて良好だ。雨の日はなんとなく着けないようにしているが、それほど神経質にはなっておらず、ごく普通に使っている。

 ふとしたときに、ただ眺めているだけで未だに心が少しウキウキし、見続けるほどに愛着が深まっていく。


“セカンドダイバー”を通じて見つけたライフワーク

 そんな“セカンドダイバー”をして筆者が今一番知りたいのは、ずばり植村直己さんがいつ、どの年代のモデルをその手に着用して、どこを冒険したのか? だ。植村さんは世界初の五大陸最高峰登頂をはじめ、北極圏1万2000kmの犬ぞりによる単独走破などといった偉業を成し遂げてきた冒険家であり、セカンドダイバー”の着用者のひとりとして、非常に有名だ。

 しかし“植村ダイバー”の伝説はさまざまな情報が交錯しあって混沌としており、はっきりとした記録がない。そしてこれをセイコーをはじめとした当時を知る関係者に聞いて、まとめあげることが、筆者の願いだ。


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