静かな色が語るロレックスの現在地 。マットパステルで読み解く「オイスター パーペチュアル」

FEATUREWatchTime
2025.12.25

色で語り、引き算で魅せる──。ロレックスの原点にして基幹モデルであるオイスター パーペチュアルが、2025年にマットなパステルカラーをまとって登場した。ピスタチオグリーン、ベージュ、ラベンダーという静かな色調は、近年の鮮烈なカラー展開とは一線を画し、時計そのものの質感と完成度を際立たせる。装飾や機構を削ぎ落とした先に現れる、ロレックスの“素顔”。その現在地を、この新作は雄弁に物語っている。

ロレックス

『WatchTime』ドイツ版2025年11月12月号
Text by Daniela Pusch
[2025年12月25日掲載記事]


静かなクラシックに、パステルの一撃

 あるブランドが何を本質としているのかを理解したいなら、基幹モデルに目を向けるのが近道である。複雑機構もなく、過度なヘリテージの引用もない。あるのは純粋なエッセンスのみ。ロレックスにおいて、それがオイスター パーペチュアルだ。ほぼ100年にわたり、時計製造における「日常使い」の定義を示し続けてきた存在である。

 2025年、このアイコンはマットなパステルカラーをまとって登場する。41mmにはピスタチオグリーン、36mmにはベージュ、28mmにはラベンダーが用意された。

過小評価されがちなロレックス

 オイスター パーペチュアルはしばしば「エントリーロレックス」と呼ばれる。しかし、この呼び名は本質を捉えていない。むしろここにこそ、ロレックスのDNAが最も明確に表れている。技術的には一切の妥協がなく、それでいて誇張は皆無である。

ロレックス オイスター パーペチュアル

ロレックス「オイスター パーペチュアル41」Ref.134300
自動巻き(Cal.3230)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。100m防水。98万100円(税込み)。

 最大100m防水を誇るオイスタースチール製ケースは、ロレックスが独自に開発した合金によるもので、堅牢でありながら主張しすぎない。その内部には、マニュファクチュールの実績あるキャリバーが搭載される。28mmモデルには約55時間のパワーリザーブを備えるCal.2232、36mmおよび41mmモデルには約70時間を誇るCal.3230が採用されている。

 いずれのムーブメントも「高精度クロノメーター(クロノメーター・オブ・スーパラティブ)」の認証を受けており、これは日差−2〜+2秒という高い精度を日常的に維持することを意味する。

ロレックス オイスター パーペチュアル

ロレックス「オイスター パーペチュアル36」Ref.126000
自動巻き(Cal.3230)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径34mm)。100m防水。93万2800円(税込み)。

デイト表示もサイクロップレンズも、回転ベゼルも、華美な装飾もない。あるのは、ロレックスというブランドにとって最も誠実なかたちに凝縮された技術的完成度である。

パステルだが、軽くはない

 近年、ロレックスは色彩表現において積極的な試みを続けてきた。鮮烈なコーラルレッドから、ティファニーブルーを想起させるターコイズまで。しかし、新しいオイスター パーペチュアルは、より成熟した印象を放つ。

ロレックス オイスター パーペチュアル

ロレックス「オイスター パーペチュアル28」Ref.276200
自動巻き(Cal.2232)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径34mm)。100m防水。85万5800円(税込み)。

 ピスタチオグリーンは、ここ数年見られた「キャンディカラー」よりも控えめである。ベージュは夏のリネンのように自然体で、ラベンダーはコレクションに詩的なニュアンスをもたらす。

 特にマット仕上げがもたらす効果は大きい。ポップさは抑えられ、代わりに質感が際立つ。腕に載せたとき、単なる装身具というよりも、布地や表面、素材そのものを身にまとうかのような感覚を覚える。

 41mm径のピスタチオグリーン、36mm径のベージュ、28mm径のラベンダーという3サイズ・3色で展開される今回のオイスター パーペチュアルは、それぞれ異なるキャラクターを与えられている。存在感のある41mm、汎用性の高い36mm、そして軽やかな印象の28mmと、サイズ選びそのものがスタイルの選択につながる構成だ。なお、新色は31mmおよび34mmサイズにも反映され、コレクション全体として色調の統一が図られている。

 ピスタチオグリーンは、肌の上でほのかに輝き、クラシックなロレックスのDNAを現代的に再解釈する色調である。温かみのあるベージュをまとったオイスター パーペチュアル36は、マット仕上げが生む上品さにより、日常使いにおいて高い汎用性を発揮する。


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