1992年の発表以来、ジャガー・ルクルトの基幹コレクションであり続けるマスター・コントロール。そこに新しく加わったのが、初代モデルを彷彿とさせる「クラシック」だ。現在の基準で仕立て直された端正な造形は、愛好家を引きつける要素に満ちている。
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2026年1月号掲載記事]
好事家は急がれたし! 復活した1992年のマスター

初代マスター・コントロールを、今の技術で再解釈した復刻版。高精度なムーブメントに良質な外装、控えめなデザインと、愛好家好みの要素を余すところなく押さえている。2025年の傑作。自動巻き(Cal.899)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径36mm、厚さ8.15mm)。5気圧防水。世界限定500本。133万7600円(税込み)。
2025年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで、筆者はジャガー・ルクルトのCEOであるジェローム・ランベールにインタビューを行った。魅力的なレベルソだの、同社を再興したギュンター・ブリュームラインだのの話題で盛り上がった後、彼はちょっと見せたい時計があると語った。恭しく持ってこられた時計を見ると、なんと1992年の初代「マスター・コントロール」ではないか。しかし、それにしては完成度が高すぎる。「これは初代の復刻モデルですね。年内に限定版として発売する予定です」とランベールは語った。
もっとも、本作は厳密な意味での復刻ではない。ケースサイズはRef.145の34mmでも、Ref.140の37mmでもない36mm。加えてラグの造形とデイト窓の処理が立体的になったほか(非常に重要な改善だ)、文字盤と見返しの噛み合わせも、最新モデルらしく緻密になった。そして搭載するムーブメントは、最新版のキャリバー899である。オリジナルの889の約38時間に対して、最新の899はパワーリザーブが約70時間。しかもシリコン製脱進機のおかげで、耐磁性能も大きく改善された。

にもかかわらず時計全体から復刻感が漂うのは、ディテールをオリジナルに寄せたため。昔懐かしいブラウンのオーストリッチストラップが標準装備というだけで、気分の上がる好事家は少なくないだろう。
残念ながら、本作は限定わずか500本。加えて価格も決して安くはないが、個人的な好みを言うと、本作は間違いなく買いだ。なにしろこのモデルは、一見地味だが、細部まで練りに練り込まれたマスター・コントロールの魅力を、余すことなく体現した時計なのだから。



