高級時計の正規販売を手掛けるHF-AGE仙台店が、2025年7月、全面リニューアルオープンを果たした。とりわけパネライやIWCといった、リシュモングループ所属の高級時計ブランドが並ぶ一角の刷新は、同店が注力したポイントのひとつである。そんなHF-AGE仙台店で、『FORZASTYLE』を中心に活躍するメンズファッションライター“まるちゃん”こと丸山尚弓と、『クロノス日本版』およびwebChronos編集長の広田雅将がトークショーを行った。テーマは、時計オタクはみんな大好き、パネライだ。この時計ブランドの歴史と現在地を掘り下げる。

Text by Chieko Tsuruoka (Chronos-Japan)
三田村優:写真
Photographs by Yu Mitamura
[2026年1月19日公開記事]
リニューアルオープンしたHF-AGE仙台店でトークショーが開催!
宮城県・仙台の中でも、観光客や買い物客で特に賑わう定禅寺通り沿いに位置するHF-AGE仙台店が、2025年7月12日にリニューアルオープンした。今回のリニューアルは全面に及んでおり、特に注目したいのがリシュモンコーナーの刷新だ。パネライやIWC、A.ランゲ&ゾーネにジャガー・ルクルトといった、同グループに所属する高級時計ブランドが、HF-AGEの理念でもあるゆったりとした、各社の世界観を表現したコーナーで、多彩な製品を展開している。



店舗概要
住所:宮城県仙台市青葉区国分町2-14-18 定禅寺パークビル1F
営業時間:11:00~19:30(水曜日定休)
問い合わせ:022-711-7271
丸ちゃん×時計ハカセでパネライを深掘りする
そんな新しくなったHF-AGE仙台店で、12月6日、顧客を迎えての特別なイベントが行われた。「男性を素敵に!」をキャッチコピーに、女性の視点でメンズファッションをひもとくライターの“まるちゃん”こと丸山尚弓と、時計専門誌『クロノス日本版』およびwebChronos編集長の広田雅将によるトークショーだ。テーマはパネライ。“パネリスティ”を中心に、熱狂的なファンも多いこのブランドは、ひと目でパネライと分かるアイコニックなデザインが持ち味のひとつだ。一方で「同じ顔」「違いが分からない」という声も耳にする。そこで丸山と広田が、パネライの歴史や現在地、そしてパネライの進化の神髄についてを、ともに時計好き同士ならではの視点で、解説した。

メンズファッションライター。「小さい頃から何より好きだった『ファッション』の世界に自分のできることで貢献したい!」との思いから、2015年より活動を開始。『FORZASTYLE』(講談社)や『Mono Master』(宝島社)、『ダイヤモンドオンライン』(ダイヤモンド社)等で女性目線でメンズファッションについての記事を執筆する傍ら、『FORZASTYLE』のYouTubeチャンネル「腕時計魂☆」をはじめとした動画やイベント出演でも、活躍している。

1974年、大阪生まれ。『クロノス日本版』およびwebChronos編集長兼アートソルジャー。2004年より時計ジャーナリストに転身し、創刊2号から主筆を務めてきた。2016年より現職。時計ブランドやラグジュアリーブランド、販売店でのセミナーやイベントの講師、ラジオ番組「BEST ISHIDA presents クロノス日本版 Tick Tock Talk♪」(TOKYO FM)のパーソナリティーも務める。ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ アカデミーメンバー及びルイ・ヴィトン ウォッチプライズ 2025-26専門家委員。
HF-AGE仙台店の顧客とともに、パネライの歴史をさかのぼる
今回のイベントの来場者は、HF-AGE仙台店の顧客が中心となる。目の肥えた時計好きぞろいの中、広田お手製の資料を使いつつ、パネライとはどんな時計ブランドなのかが解説されていった。
広田の話は1860年に創業した、パネライの歴史から始まる。始まりはイタリア・フィレンツェの“スイス時計店”。スイスから時計を輸入して販売し、同時に時計修理を行う工房も併設して、時計技師を養成していた。その技術力がイタリア海軍の目にとまり、1910年代からコンパスや水深計などの精密機器を納入するようになる。信頼性の高い計器によって評判を獲得していき、ついにはイタリア海軍から潜水部隊用の時計製造まで要請された結果、1935年に「ラジオミール」を生み出した流れを広田は解説した。「『きちんと使えるものを作る』。この思想こそが、計器メーカーとして培われた、パネライのDNAです」。



その後、1949年にパネライが特許を取得した発光塗料“ルミノール”にまで話は及んだ。「パネライが最初に開発した発光塗料であるラジオミールは放射性があったため、より安全な原料で新しくルミノールが誕生しました。そして、当時のステンレススティール素材は、現代ほど強度が高くありませんでした。ねじ込み式リュウズは摩耗しやすく、締め忘れれば致命的な浸水につながります。そんな不安定な構造に頼ることはできない──そこでパネライが考え出したのが、象徴的な“リュウズプロテクター”です」。

「(リュウズプロテクターは)リュウズをねじ込むのではなく、レバーによるテコの原理を利用し、上からガチッと抑え込むことで防水性を確保します。原始的とも言える構造ですが、極めて合理的で、誰も考えなかった解決策でした。直径47mmという大きなケースだからこそ実現できた構造でもあります。1956年、このリュウズプロテクターは正式に特許を取得して、パネライ独自の防水システムは完成しました」(広田)。
防水システムを確立してからも、パネライの時計の販売先は軍に限られていた。広田いわく「徹底して『使うための時計』を作り続けていたのです」。
しかし1993年から、パネライはオリジナルのデザインはそのままに、一般市場向けのモデルを打ち出す。「真面目な作りと圧倒的な存在感は、時計好きだけでなくファッション感度の高い層にも刺さっていきます」(広田)。
現在のパネライ、どこを見るべき?
では、現在のパネライの凄みは、どこにあるのだろうか?
広田は「まずはケースを見てください」と語った。そこですかさず丸山が「ドンツェ・ボームですね」と合いの手を入れる。ふたりならではの、マニアックな会話に来場者も驚かされただろう。
ドンツェ・ボームはスイスのケースメーカーで、アンジェロ・ボナーティとともにパネライを時計ブランドとして復活させたフランコ・コローニの、広田いわく“無茶ぶり”によって技術を磨き続け、現在ではパネライの高品質なケースを手掛けるようになった。「パネライの成功の一因は、ドンツェ・ボームのケースにありますよ」と広田は断言する。
もっとも、ケースの品質というと、目立った派手さはないかもしれない。実際、パネライは一見すると昔と同じに見られてしまうこともある。丸山と広田は、おもむろに2本のパネライを取り出し、観客に質問を投げかけた。「このふたつのモデルの違い、分かりますか?」。

自動巻き(Cal.P.980)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径44mm、厚さ13.7mm)。50気圧防水。132万円(税込み)。(問)オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110

自動巻き(Cal.P.9010)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径44mm、厚さ15.6mm)。300m防水。132万円(税込み)。(問)オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110

違いはおもにふたつ。ひとつ目は、ムーブメントだ。従来からあるPAM01312がCal.P.9010を搭載していることに対して、最新のPAM03312には、Cal.P.980が搭載されている。Cal.P.980によって、ケース径は変わらないものの、厚さを約2mm抑えることに成功。重量も20g程度、軽くなっているのだ。さらに、もうひとつの大きな違いとして、薄くなっているにもかかわらず防水性が300mから500mへと向上。なお、ガラスの厚みは約10%増した。リュウズの厚みも約0.2mm増えている一方で、ケースとベゼルの間のパッキンシートを一体化し、風防で圧入することで、高い機密性を実現している。「形は変えずに、すべてを進化させる。これがパネライです」(広田)。
近年のパネライは、スタイリッシュな小径薄型ケースのモデルもラインナップしており、薄型化を果たしたPAM03312がその一例であろう。しかしPAM01312のように、あえて重さとタフさを残したモデルも製造している。Cal.P.9010もまた、パネライを代表するムーブメントであり、両持ちテンプや、テンプに隣接したレバーが垂直に動くことでたわみが軽減されたハック機能など、耐衝撃性を徹底的に考えた設計となっているのだ。「同じように見えて、キャラクターはまったく違う。数値だけでは伝わらない進化が、パネライには無数にあるんです」(広田)。

触ってこそ分かる、パネライの良さ!
トークショーの最後に広田はこう語った。「パネライは、ミリタリーが出自の時計でありながら、ラグジュアリーな18Kゴールド製ケースやムーンフェイズといった、意外性のあるモデルも生み出してきました。そのすべてに共通するのは、『ちゃんと理由がある』ということです。大きくて、重くて、でも着け心地がいい。週末に着けると、気分が上がる。だからこそパネライは、何度でも語りたくなるし、何度でも触りたくなる時計なのです。最後に皆さん、パネライを触ってください。パネライは、触ってこそ、その良さが分かるのです」。
トークショーの後、最新モデルを中心に、来場者らはパネライのタッチ&フィールを楽しんだ。丸山と広田も加わり、どのパネライが良いか、好きなデザインは何かを語り合った。中には購入に至った顧客も見られ、イベントは盛会のうちに幕を閉じた。





