“聖なる光”をまとった、ラルチザン パフューマー「ラ セレモニー ドゥ ロンソン」/男の香り指南

2026.02.10

年末年始にかけて、いま一度自分を見つめ直す──。“聖なる光”をまとったラルチザン パフューマーの「ラ セレモニー ドゥ ロンソン」は、そんな落ち着いた時間にふさわしいフレグランスだ。敏腕編集者であり、エッセイストでもある麻生綾氏が、この香りが持つ“神性”をひもときながら、冬のフレグランスを指南する。

麻生綾:文
Text by Aya Aso
村山千太:写真
Photograph by Senta Murayama
[クロノス日本版 2026年1月号掲載記事]


冬をともす、“聖なる光”

ラ セレモニー ドゥ ロンソン オードパルファム

L’ARTISAN PARFUMEUR
古来より瞑想や祈りの場で多用されてきた、オリバナム(別名フランキンセンス、乳香)を主役としたフレグランス。シダーウッド、黒胡椒と調和させることにより、オリバナムの輪郭がよりくっきりと浮かび上がる見事な調香。その奥深くスパイシーな香りは、あたかも過去の記憶、あるいは今の自分の心の奥に触れ、静寂の中を旅するかのよう。「ラ セレモニー ドゥ ロンソン オードパルファム」。75ml。4万480円(税込み)。

 クリスマスから新年にかけては、自分を見つめ直すのにうってつけの時期かもしれない。年の締めくくりに際し、来し方行く末を思い、反省と期待、そして新たな決意と願いを込める時間。香りにしても、華やかなパーティー仕様だけでなく、心落ち着く内省的なものも、何故だかしっくりくる。そう、たとえばラルチザン パフューマーの「ラ セレモニードゥ ロンソン」のような。

 ラルチザン パフューマーは、由緒正しいフレグランスブランドだ。創業は1976年、フランス・パリにて。その名の通り“ 香りの職人”として、既存の香りの枠を超えるコンテンポラリーでアーティスティックな香りを追求してきた。販売店の変遷を重ねつつも、日本でも根強い人気を誇り、2025年に正式に再上陸。現在は表参道に、瀟洒なオンリーショップを構える。

 今回おすすめしたいラ セレモニー ドゥ ロンソンには、静かな深い呼吸が似合う。香調は、ずばりインセンス。ただし、この“インセンス”を「お香」と訳すのは、少し違うかもしれない。お香というと、日本人は仏前や焼香時の“線香”を思い浮かべてしまうが、捧げる対象は仏さまというより神さま。お寺というよりはカテドラル(大聖堂)、そして煙自体というよりは、その中で輝く光だ。思えば、漆黒のボトルに走るゴールドの文字も、まるで静謐な闇に差し込む一条の光のようではないか。つまりラ セレモニー ドゥ ロンソンは、言うなれば“神さま属性の聖なる光”をまとった香りなのだ。

 そもそも「香水」の起源は紀元前3000年頃、香木を焚きしめた、この「香」に始まるという。Perfumeの語源もラテン語の Per Fumum(煙を通して)。すなわち、香とは煙を通して神に捧げる祈りの行為であり、香りをまとうことこそが神とつながる手段だったのだ。

 そんなラ セレモニー ドゥ ロンソンの中心を担うのは、オリバナム ── 乳香である。東方の三賢人が、生まれたばかりのイエス・キリストに捧げた贈り物のひとつであり、「神性」の象徴とされる香りだ。そしてブランドの創始者、ジャン・ラポルトが旅の途中で巡り合った紅海沿岸に自生する木の樹脂であり、それがインスピレーション源になったとのこと。そこにシダーウッドの深み、黒胡椒のアクセントを効かせ、オリバナム本来の清冽な香りをよりいっそう際立たせている。

 聖なる光をまとい、目を閉じると、闇の中に聖堂へと続く黒く艶やかな回廊が浮かんでくる。心を落ち着かせ、かすかな光に導かれながら、そんな「時の廊下」を静々と歩き進む。冬にあえての冷たい香りが描く情景は、ひたすら美しい。

著者プロフィール

麻生綾

美容編集者/エッセイスト&コピーライター。東京育ち。女性誌の美容ページ担当歴30余年、『25ans』『婦人画報』(ともにハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』(コンデナスト・ジャパン)各誌で副編集長、『etRouge』(日経BP)で編集長も務めた。趣味も美容、そして美味しいもの探し、鬱アニメ鑑賞、馬の骨活動。



Contact info:ラルチザン パフューマー カスタマーサービス Tel.03-6778-7477


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