有名ブランドならではのステータス性や安心感は欲しいが、なるべく他人と被らない腕時計を選びたい。そんな独自の価値観を持つ腕時計ユーザーに向け、ロレックスやオメガといった実力派ブランドから、“ニッチな名作”を5本厳選して紹介する。定番・人気の選択肢をあえて避けた、ツウ好みのモデルたちをぜひ一度チェックしてほしい。

Text by Kento Nii
[2026年1月17日公開記事]
あえて王道を“外した”腕時計を選ぶ
有名ブランドは、その名が広く知られる、“顔”とも呼ぶべきコレクションを擁していることが多い。だが、各ブランドの長い歴史と膨大なアーカイブにおいて、そうした顔と呼ばれるほどの知名度はなくとも、名作と呼ぶにふさわしいタイムピースは数多く存在している。
こうしたニッチなモデルの選択は、単に“外し”や“逆張り”ではなく、定番モデルであるがゆえの安心感やステータス性に頼らないという、自信の表現に役立つだろう。トレンドやリセールバリューといった時計業界の喧騒から一歩離れ、自身の感性と共鳴する腕時計を身に着ける。そのような1本は、長い経験の中で王道を知りながらも我が道を行く、確固たるスタイルを持つ大人の手元にもよくなじむはずだ。また、仮に街中やビジネスシーンで他人と被ってしまったとしても、むしろ“分かってる”感のある者同士の、一瞬の共感を楽しめるのではないだろうか。
本記事では、そんな選択肢の好例として、誰もが知る有名ブランドのラインナップに潜む、ニッチだが確かな実力を有する5本にスポットを当てて紹介する。ステータス性やアフターサービスの安心感はそのままに、ツウ好み感を演出できるモデルたちを一度試してみてはいかがだろうか。
オメガ「デ・ヴィル プレステージ」Ref.434.23.42.22.10.001
スイスの名門オメガと言えば、NASAの公式装備に採用された「スピードマスター」や、映画『007』に登場する「シーマスター」など、数々の逸話があるタイムピースで知られている。それら王道のスポーツモデルではなく、あえて“外し”の選択肢を挙げるならば、「デ・ヴィル プレステージ」コレクションに注目したい。

自動巻き(Cal.8936)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS×18KYGケース(直径42mm、厚さ12.27mm)。30m防水。141万9000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
本コレクションは、2022年に第3世代へと刷新され、ケースの厚みを抑え、ダイアルもミニマルにリデザインされるなど、ドレッシーな佇まいをいっそう洗練させている。さらに、現代オメガの標準であるマスター クロノメーター認定も取得しており、エレガントなドレスウォッチでありながら、日常使いに適した実用性を確保している点は特筆すべきである。
その中でもRef.434.23.42.22.10.001は、オメガのラインナップの中でも数少ない、ポインターデイト仕様の1本だ。ダイアル内周に配された日付表示を、三日月型の先端を持つデイト針が指し示す仕様となっており、ひときわクラシカルな表情を見せている。
ケースには、18Kイエローゴールドとステンレススティールのコンビネーションを採用。彩度を抑えたパイングリーンダイアルや、同色のレザーストラップと組み合わされることで、華やかかつシックな印象に仕上げられている。ムーブメントは、約60時間のパワーリザーブを有するCal.8936を搭載し、トランスパレントバックからは、アラベスク調の装飾が施されたローターが観賞できる。
ブライトリング「プレミエ B01 クロノグラフ 42」Ref.AB0145331K1P2
「プロフェッショナルのための計器」を標榜し、回転計算尺を備える「ナビタイマー」や、万能スポーツウォッチである「クロノマット」など、機能美を追求したタイムピースを主力とするブライトリング。ここでは、それらと異なるエレガンスを追求した「プレミエ」コレクションの、Ref.AB0145331K1P2を取り上げる。

自動巻き(Cal. 01)。41石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.6mm)。10気圧防水。124万8500円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.03-3436-0011
1943年に誕生したプレミエは、ブランドにおいて、初めてエレガントなスタイルを追求して設計されたクロノグラフであった。生産終了の期間を経て2018年に復刻、2021年にはリニューアルが行われており、現在では往年の名作を彷彿とさせる、タイムレスなコレクションとして展開されている。
Ref.AB0145331K1P2は、温かみのあるカッパーカラーのダイアルが目を引く1本である。アラビア数字インデックスの一部を省略し、インダイアルを際立たせたバイコンパックスのレイアウトを持ち、その表情に色濃いヴィンテージ感を漂わせている。また、ダイアルの色味と調和するブラウンのアリゲーターストラップが組み合わされ、スーツスタイルにもなじむ、落ち着いたトーンにまとめられている。
ケース内部には、基幹モデルにも広く採用される自社ムーブメント、Cal.01を搭載する。約70時間のパワーリザーブと、COSC認定の高精度を両立しており、ケースに備わる10気圧防水も相まって、実用時計らしい機能性が確保された。
ロレックス「パーペチュアル 1908」Ref.52508
世界的な知名度を誇るロレックスでは、その人気の高さゆえに、ほとんどのコレクションが広く知られており、他人と被りにくいモデルを選ぶことは難しいかもしれない。しかし、それでもあえて“外し”の1本を選ぶのであれば、ブランドの代名詞である「オイスターケース」を持たない、「パーペチュアル 1908」は好適なタイムピースと言えるだろう。

自動巻き(Cal.7140)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約66時間。18KYGケース(直径39mm)。50m防水。
このパーペチュアル1908は、長らくドレスラインを担った「チェリーニ」の後継として登場した、ブランドの創業年を冠するクラシックウォッチである。スリムなケースや、スモールセコンドを配した上品な顔立ちのダイアルなど、ドレスウォッチらしいプロフィールに加え、ドームとフルーテッドを組み合わせた、繊細なデザインのベゼルを特徴としている。
ピックアップしたのは、18Kイエローゴールドをケース、ブレスレットに贅沢に用いた、華やかなRef.52508だ。特筆すべきは、このモデルのために開発された「セッティモブレスレット」である。ロレックスで広く普及している5連のジュビリーブレスレットに対し、より細かい7連のリンクで構成されており、わずかにカーブしたポリッシュ仕上げのコマが連なる構成は、ジュエリーのような外観を演出している。
ムーブメントは、ケーシング後で日差±2秒の高精度を誇り、約66時間のパワーリザーブを有するCal.7140を搭載する。ロレックスの現行モデルでは今なお珍しい、トランスパレントバックから本機を観賞できる点も含め、定番コレクションとは一線を画す、エレガントな選択肢と言える。
G-SHOCK「MRG-B2100D-2AJR」
国産ブランドからは、カシオの「G-SHOCK」を取り上げる。言わずと知れた、世界的な知名度を誇る腕時計だが、その膨大なバリエーションゆえに、定番さえ外せば、他人とモデルが完全に被ることはそう多くない。しかし、成熟した男性があえて選ぶのであれば、クォリティを突き詰めた最高峰ライン、「MR-G」に手を伸ばしてみてはいかがだろうか。

タフソーラー。フル充電時約18カ月駆動(パワーセーブ時)。Tiケース(縦49.5×横44.4mm、厚さ13.6mm)。20気圧防水。57万2000円(税込み)。(問)カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925
ピックアップしたRef.MRG-B2100D-2AJRは、薄型の八角形フォルムで人気を博す「2100」シリーズを、MR-Gの基準で再構築した1本だ。
注目は、古来より日本で親しまれてきた藍染の色合い「縹色(はなだいろ)」を取り入れたダイアルである。これは、MR-Gが製作される山形県の山中で見られる、五重塔を包む朝霞(あさか)の情景を表現したもので、建築の伝統技法のひとつ「木組(きぐみ)」を着想源とするダイアルに、上品さといっそう深い和の趣きを与えている。
ケースは堅牢かつ軽量なチタン製だ。ベゼル周辺のパーツを27個に細分化し、緩衝材を挟み込みながら組み上げることで、歪みのない研磨とG-SHOCKらしいタフネスを両立している。さらに、トップベゼルには純チタンの約4倍の硬度を誇る合金「コバリオン」を用いており、上質かつエッジの効いたその造形は、高級時計然とした風格を放っている。
機能面においては、標準電波受信やスマートフォン連携、ソーラー発電機能を搭載する。ダイアルに施された格子状の微細な隙間から光を取り込むことで、意匠を損なうことなく良好な発電効率が確保されている。
シャネル「ムッシュー ドゥ シャネル スーパーレッジェーラ」Ref.H6823
シャネルのメンズウォッチと言えば、「J12」や「ボーイフレンド」など、ハイファッションブランドらしい哲学が反映され、性別にとらわれずに価値観を共有できる、ジェンダーレスなコレクションが知られている。その中でも異彩を放つのが、「ムッシュー ドゥ シャネル」だ。ムッシュー(男性に対する敬称を意味するフランス語)の名からも分かるように、この腕時計は、シャネルがもっぱら男性に向けて設計した特別なタイムピースである。

手巻き(Cal.1)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。高耐性マットブラックセラミック×SSケース(直径42mm)。30m防水。759万円(税込み)。(問)シャネル(カスタマーケア) Tel.0120-525-519
「スーパーレッジェーラ」Ref.H6823は、レーシングマシンにフォーカスした、コレクションの中でも独特な世界観を見せるモデルだ。ダイアルには、イタリア語で“超軽量”を意味する「Superleggera」のロゴが記されており、1950年代の最高水準を誇ったレーシングマシンへのオマージュが捧げられている。
幾何学的なフェイスデザインはレギュラーモデルと共通しているが、外装には高耐性マットブラックセラミックを使用することで、軽やかさと堅牢性を確保。さらに、ダイアルにスポーツカーのフロントメッシュを思わせるギヨシェ装飾を施し、レッドの裏地を持つナイロンストラップを組み合わせるなど、細部に至るまで、レーシングカーらしい軽快さと精悍さが反映されている。
内部には、ブランドが初めて設計・開発から精度検査および組立てまでを行ったCal.1を搭載する。ジャンピングアワーとレトログラード分表示を兼ね備えたムーブメントであり、トランスパレントバックからは、外装と同様に黒く仕上げられたその機構を観察することができる。



