時計ブランドを代表する存在のひとつとして取り上げられることの多いブライトリング。プロフェッショナルに愛用されてきた信頼性の高い腕時計を手掛けてきた同社は、初めての高級腕時計にも好適だ。同ブランドの歴史を振り返りつつ、おすすめモデルを紹介する。

Text by Tsubasa Nojima
[2026年1月20日公開記事]
ブライトリングってどんなブランド?
日本でもメジャーな時計ブランドのひとつとして数えられるブライトリング。同社は1884年、レオン・ブライトリングがスイス・サンティミエに開いた小さな工房を起源としている。クロノグラフ機構付きの懐中時計の製造に注力した同社の方針は、科学やスポーツなど、あらゆる正確な時間計測が求められつつあった当時のニーズとも合致。徐々に成長を遂げ、1892年にはラ・ショー=ド=フォンを拠点として事業を拡大するに至る。
1914年に二代目として同社を引き継いだガストン・ブライトリングは、タキメーターや積算計、スプリットセコンドなどの機能を有したクロノグラフを世に送り出し、レオンの築き上げたクロノグラフ製造技術をより成熟させていった。

その技術をもとに、航空業界との関わりを強めていったのが、三代目のウィリー・ブライトリングだ。第一次世界大戦を経て有用性を認知された航空機が目覚ましい発展を遂げたことを受け、ウィリーは1939年に英国空軍とのクロノグラフの納入契約を締結。これを皮切りに各国の航空会社や航空機メーカーとの関係構築に尽力する。同社は航空用計器を専門とするユイット・アビエーション部門を設立し、クロノグラフウォッチ「Ref.734」をはじめとする計器を開発していった。
空に活路を見出した同社は1942年、パイロットがフライトプランを作成する際に用いる回転計算尺を搭載したクロノグラフウォッチ、「クロノマット」を開発する。“クロノグラフ”+“マスマティック”を組み合わせた名称を与えられたクロノマットの登場は、航空業界におけるブライトリングの信頼をより強固なものとし、1952年の「ナビタイマー」開発へとつながる。
ナビタイマーは、航空機オーナー・パイロット協会(AOPA)の要請に従って誕生したクロノグラフウォッチだ。1942年に登場したクロノマットの特徴である回転計算尺を航空用にアップデートし、クロノグラフに12時間積算計を追加したナビタイマーは、より研ぎ澄まされたプロフェッショナルツールとして世界各国のパイロットに愛用されていく。

ほぼ同時期、同社は航空業界以外をターゲットとした製品開発にも力を入れ、活躍の幅を広げていった。そのことを象徴するのが、専門職向けと考えられていたクロノグラフを搭載しつつ、エレガントなデザインを与えられた「プレミエ」や、若者を中心としたカフェレーサー文化に調和した「トップタイム」などのモデルだ。
同社はその後も、時代のニーズを見据えた製品開発によって時計業界での存在感を高めていく。ダイビングやマリンスポーツが普及した1950年代には、同社初のダイバーズウォッチ「スーパーオーシャン」を3針とクロノグラフの2種類で発表。1962年にはナビタイマーをベースとした24時間表示のクロノグラフウォッチ「コスモノート」、1969年には最初期の自動巻きクロノグラフのひとつ、「クロノマチック」を登場させた。
しかし、ほどなくして訪れたクォーツ革命は、機械式腕時計を手掛けていたブライトリングの経営状況に深刻な影響を与えた。この逆境を乗り越えて見せたのが、ウィリーから事業を託されたエレクトロニクスの専門家、アーネスト・シュナイダーだ。アーネスト・シュナイダーの指揮によってクォーツウォッチのラインナップを拡充し、見事再建を果たしたブライトリングは、1984年にイタリア空軍のアクロバット飛行チームであるフレッチェ・トリコローリのために新型の機械式自動巻きクロノグラフウォッチを開発した。それが、かつての伝説的なパイロットクロノグラフと同名のクロノマットである。もっとも、その由来は“クロノグラフ”+“オートマチック”であり、回転ベゼルには、付け替えることによってカウントアップとカウントダウンに対応できるライダータブが装備されていた。

「クロノマット」のファーストモデルがリリースされる前年にあたる1983年に製造され、イタリア空軍に納品されたモデル。
幅広いニーズに応えてきたブライトリングは、やがて複雑なコレクション体系に頭を悩ませることとなる。その再編を行ったのが、アーネスト・シュナイダーの跡を継いだセオドナ・シュナイダーだ。そしてさらに、2017年にはタグ・ホイヤーやIWCで辣腕を振るったジョージ・カーンがCEOへ就任し、陸・海・空を中心とした明解なラインナップ展開と豊富なアーカイブをもとにした大胆なモデルチェンジを断行した。かつてマッシブで男らしいデザインのイメージが強かったブライトリングは、モデルチェンジによって徐々に洗練されたデザインへと姿を変え、男性だけではなく女性からも支持されるブランドへと成長した。
初めてのブライトリングにおすすめのモデル3選
ブライトリングは、初めての高級腕時計にも好適なブランドだ。プロフェッショナル向けの腕時計を数多く手掛けてきた同社は、堅牢性を重視した時計作りを得意としている。そのことは外装だけではなく自社製ムーブメントにおいても顕著であり、同社初の自社製ムーブメントであるCal.01では、重厚なブリッジと地板、日付変更禁止時間帯のないカレンダー機構、始動性の高いテンプ、優れたメンテナンス性を備えている。機械式腕時計は取り扱いに注意を要する精密機器だ。初めて手にするのであれば、壊れにくく、例え故障しても修理しやすい方が良い。
そして何よりも、せっかく購入する高級腕時計であれば、気に入ったデザインを選ぶべきだろう。男性から女性まで幅広いニーズを満たすブライトリングのコレクションの中には、きっと自分の好みや着用シーンにマッチした1本があるはずだ。ここから先は、初めてのブライトリングとしておすすめしたい3つのモデルを紹介する。
「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」Ref.AB0138211B1A1

ブライトリングを象徴するコレクションのひとつが、「ナビタイマー」である。ケースサイズや素材、ダイアルのカラーなど、豊富なラインナップを有することも特徴だ。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.69mm)。3気圧防水。134万2000円(税込み)。
ブライトリングの顔とも言えるコレクションが、航空用回転計算尺を搭載したパイロットウォッチ、ナビタイマーだ。1952年に誕生して以降、基本的なデザインを変えることなくアップデートを重ねてきた歴史あるコレクションである。
ここで紹介するのは、ブラックをベースにシルバーのインダイアルを組み合わせた“逆パンダ”ダイアルのモデルだ。12時位置には、黄金に輝くAOPAのロゴが配されている。ナビタイマーを象徴する計算尺は、両方向に回転するベゼルを操作することで掛け算や割り算などに使用することが可能だ。
ヘアラインとポリッシュに仕上げ分けた立体的なケースは、ステンレススティール製。すっきりとしたラグやポンプ型のプッシャーなど、初代から続くアイコニックなデザインが与えられている。斜めのラインが特徴的なステンレススティールブレスレットも、近年のナビタイマーを象徴する要素のひとつだ。
搭載するムーブメントは、ブライトリングの自社製自動巻きクロノグラフムーブメント、Cal.01だ。コラムホイールやレバーなどの精緻な動きをシースルーバックから鑑賞することができる。
「スーパーオーシャン ヘリテージ B31 オートマチック 42」Ref.AB3111161C1A1

クラシカルなデザインが人気のダイバーズウォッチ、「スーパーオーシャン ヘリテージ」。2025年のリニューアルに伴い、自社製ムーブメントを搭載している。自動巻き(Cal.B31)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約78時間。SSケース(直径40mm)。200m防水。95万1500円(税込み)。
パイロットウォッチのイメージが強いブライトリングだが、ダイバーズウォッチにも魅力的なモデルが多く存在する。特に注目すべきは、2025年にリニューアルを遂げた「スーパーオーシャン ヘリテージ」だ。シンプルなデザインは、1957年に発表された初代スーパーオーシャンに着想を得たもの。クラシカルな外観と200mの防水性を備えた本作は、ビジネスからレジャーシーンまで、幅広い用途で着用しやすい。
ダイアルはサンレイ仕上げの上品なブルーに彩られ、逆回転防止ベゼルには優れた耐傷性と艶やかな質感を特徴とするセラミックス製のインサートがセットされている。大きな矢印型の時針や12時位置のインデックスに重なるドットなど、オリジナルから受け継いだディティールも魅力だ。日付表示は6時位置に配され、シンメトリーなレイアウトに仕上がっている。
シンプルなケースには、ヴィンテージ感を高めるメッシュブレスレットが組み合わされている。しなやかな肌触りのメッシュブレスレットは、装着感も良好だ。
同社初の自社製自動巻きの3針ムーブメント、Cal.B31を搭載していることも特徴。約78時間のパワーリザーブを備えている。
「クロノマット オートマチック GMT 40」Ref.A32398101B1A1

GMT機能を搭載した「クロノマット」。回転ベゼルやルーローブレスレットなど、コレクションを象徴する意匠が採用されている。自動巻き(Cal.32)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.77mm)。200m防水。85万8000円(税込み)。
ジョージ・カーン主導によるモデルチェンジによって、従来のマッシブなクロノグラフウォッチという印象を大きく変えたクロノマット。現行のクロノマットは、パイロットウォッチという枠を超えたマルチパーパスウォッチと定義され、クロノグラフモデルだけではなく、3針モデルやGMTモデルもラインナップしている。
本作は、直径40mmの控えめなケースサイズが特徴のGMTモデルだ。ブラックのダイアルにはシンプルなバーインデックスとペンシル型の時分針が組み合わされ、赤いGMT針が第2時間帯を表示する。ポリッシュ仕上げの逆回転防止ベゼルは、経過時間を計測する際に便利だ。
クロノグラフ機構は搭載されていないが、外装にはクロノマットらしい意匠が多く採用されている。短く突き出たラグやオニオン型のリュウズ、そしてアイコニックなルーローブレスレットは、ファンにとってはたまらない組み合わせだ。11.77mmの控えめなケース厚でありながら、日常生活では十分すぎるほどの200m防水を備えていることも魅力。ムーブメントは、汎用機をベースとしたCal.32を搭載している。



