2025年のLVMHウォッチウィークで発表されたルイ・ヴィトンの「タンブール コンバージェンス」。『ウォッチタイム』ドイツ版編集長であるダニエラ・プッシュがその魅力を解説する。その意匠は古典を踏襲しつつも、決してなぞっただけではない現代的なものでもあるのだ。その魅力をひもといていこう。

Text by Daniela Pusch
© WatchTime Germany
Originally published in WatchTime Germany
Reprinted with permission.
[2026年1月29日掲載記事]
過去と現在が交差する「タンブール コンバージェンス」
ルイ・ヴィトンの「タンブール コンバージェンス」を初めて手に取った瞬間、これは一度触れたら忘れられない存在になると直感したのだ。それは年初に行われた、あるイベントでのこと。ピカピカに磨き上げられたケースに光が差し込んだその瞬間、私は心が奪われた。長い年月を経て熟成した意匠を思わせつつも、現代的な感性を成り立たせているエレガントなライン。そのふたつの要素を併せ持つこの腕時計には、ずっと心が奪われてしまうだろう、そう悟ってしまったのだ。

時計業界は確立されたデザインコードや、強いアイディンティティーを持つモデルがものを言う世界だと筆者は思う。しかしその中で、ルイ・ヴィトンは「タンブール コンバージェンス」で稀有な成功を収めたモデルではないだろうか? 新しい印象を与えつつも、どこかなじみ深い。その感覚は、決して偶然ではない。
その理由に、つぶさに観察してみると、本作の中では「過去」と「現在」の意匠が自然と交わっていることが見て取れる。例えば歴史的なディスクウォッチへのオマージュ。そして、円弧を描く表示部分も特にそれに該当するだろう。だが、それらからは単に懐古趣味に留まるものでは決してない。決して派手に主張するわけではなく、繊細さによって魅了する「フレンチシック」で巧みにこの両要素が統合されているのだ。
過去とビジョンのあいだのデザイン
私がこのモデルと出会ってからわずか数週間後、業界では同様の動きが見られた。カルティエやジェラルド・チャールズといったブランドも、ディスク式表示を採用したウォッチを発表したのだ。それでもなお、本作は独自の位置を保っている。
タンブール コンバージェンスが発表された同時期に、同じくディスクウォッチがカルティエやジェラルド・チャールズといったブランドからも発表された。時計業界ではディスクウォッチの静かなブームが起こっているようだ。しかし、本作は単にディスクウォッチというだけにとどまらない特徴を有する腕時計だ。
ラ・ファブリック・デ・ボワティエで製作されたケースは、光と金属が持つそのものの質感の戯れを巧みに演出する。直径37mmのケースフォルムは、「タンブール」デザイン特有の流れるような曲線を踏襲し、中央に向かって緩やかにすぼまることで、手首に自然に密着するのである。
厚さわずか8mmという数値が示す通り、そのたたずまいは控えめだ。しかし、決して埋没することはない。サテン仕上げのケースサイドは、全体をさらにスリムに見せる効果をもたらしている。新設計のラグも見逃せない。段階的な幾何学構成が際立ち、上面はポリッシュ、側面はマイクロサンドブラスト仕上げ。高度な技量と造形的自信が、静かに、しかし雄弁に語られている。
静かな詩としての機構
ケース形状に呼応するポリッシュ仕上げのリュウズには、巻き上げと調整を容易にするため、控えめなローレットが施されたものだ。シースルーのケースバックからは、自社製自動巻きムーブメントCal.LFT MA01.01を鑑賞することができる。
だが、この腕時計の真の魔法は、文字盤の上、いや、むしろその奥側で展開される。タンブール コンバージェンスの表示は、歴史的な「モントル・ア・ギシェ」(直訳すると小窓付き時計、要するに小窓からディスクを見る時計)に着想を得ながら、その古典美を現代的な感性と結びつけている。
時刻は円弧状のウィンドウを通して表示され、その背後では2枚のディスクが穏やかに回転する。上段が時、下段が分を示し、数字が切り替わる様子は瞑想的で、ほとんど詩的とも言える流れを生み出すのだ。
わずかにカリグラフィックなリズムを帯びたアラビア数字インデックスも、この腕時計の姿勢を明確に示している。歴史は出発点であり、決して束縛ではない。その思想が、ここにはある。

基盤としての新ムーブメント
タンブール コンバージェンスにおいて、最も重要な要素はデザインや表示方式だけではない。サファイアクリスタルの裏側に隠された、新ムーブメントの存在こそが、本作の核となっている。
心臓部に搭載されるのは、ラ・ファブリック・デュ・タンで完全に開発された新自動巻きムーブメント、Cal.LFT MA01.01だ。2023年に登場したタンブールや刷新されたエスカルに採用された、マイクロローター式ムーブメント(ル・セルクル・デ・オルロジェとの協業)とは異なり、本ムーブメントは真の自社開発。設計、構築、組み立てのすべてがラ・ファブリック・デュ・タンで行われている。

大半の部品は自社製造とされ、脱進機など一部のみがアトカルパのような専門メーカーから供給される。このムーブメントは、スピン・タイム・コレクションの新ベースキャリバーと技術的構造を共有し、今後のルイ・ヴィトンにおけるキャリバー開発の基盤となる戦略的存在だ。
パワーリザーブは約45時間、振動数は毎時2万8800振動。サンドブラスト仕上げのブリッジ、マイクロブラスト加工されたエッジ、そしてV字形に面取りされ、ポリッシュされたローズゴールド製ローターの縁に至るまで、装飾は時計製造の伝統を称えるために慎重に選び抜かれている。テンプの背後には、ラ・ファブリック・デュ・タン・ルイ・ヴィトンのポワンソンLFTが確認できる。
ふたつのモデル、ふたつの個性

自動巻き(Cal.LFT MA01.01)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KPGケース(直径37mm、厚さ8mm)。30m防水。562万1000円(税込み)。
「タンブール コンバージェンス」は、ふたつの仕様で展開される。ポリッシュ仕上げのローズゴールドモデルは、温かく親密な佇まいを備える。一方、ケースとカバーに795個のダイヤモンドを配したプラチナモデルは、否応なく視線を集める存在だ。
ローズゴールドは純粋主義者のために。プラチナは、きらめく華やぎを愛する者のために。ひとつのラインの中で、これほど異なる表情を描ける点も、本作の魅力である。

自動巻き(Cal.LFT MA01.01)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。Ptケース(直径37mm、厚さ8mm)。30m防水。1017万5000円(税込み)。
いずれのモデルも、手首に柔らかく沿うカーフレザーストラップを備え、防水性能は30m防水だ。どちらも限定モデルではない。ルイ・ヴィトンのタンブール コンバージェンスは、サヴォアフェール、独自性への勇気、そして時計製造芸術への深い理解を映し出す存在だ。この腕時計を受け入れる者は、単に時を読むのではない。時の一部を手にするのである。
ポリッシュ仕上げのローズゴールドを選ぶ者は、やがて刻まれる痕跡と向き合う覚悟が必要だ。しかし、それをいとわぬなら、この腕時計は長く寄り添ってくれる。人生の瞬間を記録する、個人の生きた証としてである。人生という旅の「記録」となる腕時計ではないだろうか?



