ベル&ロス「BR-03 ダイバー ブラック ブロンズ」を実機レビューする。本作は世界限定999本の2026年新作であり、ブラックダイアルとスクエア型のブロンズケースを採用した、ISO 6425規格準拠の本格ダイバーズウォッチである。
Photographs & Text by Tsubasa Nojima
[2026年2月24日公開記事]
ブランドのアイデンティティーを物語る、スクエア型ダイバーズウォッチ
今回インプレッションを行うのは、ベル&ロスの2026年新作、「BR-03 ダイバー ブラック ブロンズ」だ。本作は世界限定999本の稀少モデルであり、ケース素材にブロンズを用いている。
基本的なスペックはベースとなった「BR-03 ダイバー」に共通する。スクエア型ケースを採用した300m防水のダイバーズウォッチであり、時分秒の時刻表示と日付表示機能を備えている。同社はこれまでにもBR-03 ダイバーのブロンズケースモデルを発表してきたが、今回はダイバーズウォッチで最もメジャーなブラックダイアルと、ブラックのセラミックス製ベゼルインサートを採用した点で、よりオーソドックスなカラーリングに仕上がっている。
高い気密性を求められるダイバーズウォッチでは、ラウンド型のケースを採用することが多い。均等に圧力をかけて固定しやすいスクリューバックとの相性が良いためだ。一方で変型ケースではネジ留め式のケースバックを組み合わせることが多く、高い防水性を与えにくい。スクエア型ケースを採用しつつISO 6425規格を満たす高い防水性を実現したBR-03 ダイバーは、その点で稀有な存在である。
コクピットクロックに着想を得たスクエア型ケースというブランドのアイコンを守りつつ、ダイバーズウォッチとしての防水性を持たせることに成功したBR-03 ダイバーは、ベル&ロスの情熱が具現化したコレクションと言えるだろう。その魅力を、最新の限定モデルから味わってみたい。

ベル&ロスを象徴するスクエア型ケースを採用しつつ、300mの防水性を達成した本格ダイバーズウォッチ、「BR-03 ダイバー」の新作。かつて船舶用具にも多用されたブロンズ素材のケースを特徴とする。ブロンズケース自動巻き(Cal.BR-CAL.302-1)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。ブロンズケース(幅42mm、厚さ12.3mm)。300m防水。世界限定999本。79万2000円(税込み)。
上品さを漂わせるグロッシーなブラックダイアル
ユニークなケースデザインに反して、ダイアルはダイバーズウォッチの王道デザインだ。丸みを帯びたドット、バー、トライアングルを組み合わせたインデックスと、矢印型の時針とペンシル型の分針、先端にドットを付した秒針を組み合わせている。それぞれにホワイトの蓄光塗料が塗布されているため、暗所での視認性はもちろん、日中でもブラックダイアルのコントラストによって抜群の視認性を誇る。複数の形状を使い分けたインデックスと針は判読性にも優れ、時計がどの向きにあっても容易に時刻を読み取ることが可能だ。スクエア型ケースという特異性に着目しがちだが、ISO 6425規格に準拠したプロフェッショナル用のダイバーズウォッチにふさわしい機能を備えている。
しかしながら、実用一辺倒に終始しない上品さを漂わせていることも、本作の魅力だろう。ダイアルはややグロッシーな質感が与えられ、インデックスと針の縁取りには、柔らかなゴールドカラーが採用されている。やや背が高く、立体的なインデックスも高級感を感じさせる。スポーツウォッチは、衝撃が加わった際に針がたわみ、運針を停止してしまうことのないように、針と針のクリアランスを大きく取ることが一般的だ。そのため、ダイアルがやや間延びした印象になってしまうことも珍しくはないが、本作では斜めに立ち上がったミニッツスケールを採用し、さらに内側を全てブラックで統一することによって、精悍で引き締まった表情を作り出している。立ち上がったミニッツスケールは、分針や秒針との距離を縮め、判読性を高める効果もある。

4時半位置には、小窓による日付表示が配されている。インデックスやミニッツスケールを犠牲にすることのないレイアウトは、機能性と審美性を両立させるものだ。個人的には日付の数字がやや小さく見にくいように感じたが、ここは好みによる部分だろう。
ブロンズ製の回転ベゼルには、潜水時間を計測するための逆回転防止機構が搭載されている。1周60クリックであり、ガタのない回し心地は精密さを感じさせるものだ。側面にはグリップ力を高めるコインエッジが刻まれ、上面には目盛りを配したセラミックス製のインサートが取り付けられている。インサート上の目盛りや数字には全て蓄光塗料が塗布され、薄暗い水中でもしっかりと経過時間を把握することができるだろう。
セラミックスは耐光性や耐傷性に優れた素材だ。一昔前のダイバーズウォッチでは、アルミニウム製のインサートを用いることが多かったが、これは使い込むことによって目盛りがかすれてしまうことや、光を浴びて色あせてしまうものであった。具合によってヴィンテージウォッチでは“味”として歓迎される場合もあるが、やはり実用性の面ではセラミックスに分がある。高硬度なセラミックスは強い衝撃が加わることで割れや欠けが発生する恐れがあるが、実生活において取り扱いに特別な注意を要するほどではない。

アイコニックなスクエア型ケース
レビュー個体のブロンズ製ケースは、まだ新しいためピカピカとした淡いゴールド調の輝きをたたえている。空気中の成分や汗に触れることで酸化し、徐々にブラウンへと経年変化していくことがブロンズケース最大の魅力だが、当然ながら実機を試用した短期間ではそのことを実感することはできない。現在ではブロンズケースの時計も珍しくはないため、どのように経年変化していくかは、SNSなどでの報告を参考にしつつイメージを膨らませてみるのが良いだろう。使用環境によって変化の仕方も異なるため、自分の場合はどのように変わっていくかを想像するのも楽しい。

ケースの幅は42mmと、インパクトのあるサイズ感だ。回転ベゼルを備えたスポーツウォッチとしては決して大ぶりではないが、スクエア型のため塊感を感じる、迫力ある印象となっている。ラグはミドルケースからぴょこんと飛び出ているが、小さく目立ちにくいため、まるでケースから直接ストラップへつながっているように見える。
本作のケースは、ミドルケースを上下2枚のプレートで挟み込み、さらにステンレススティール製のケースバックを重ねた構造を持つ。これら4つのパーツは四隅に配されたネジによって固定され、ベル&ロスらしいアイコニックな意匠を作り出している。4本のネジは、表面から見ると全てダイアルに向かって同じ方向で留められており、ケースバックからはバラバラの方向で留められている。恐らく分解する際には、ケースバック側のネジを回転させる必要があるのだろう。
ケース3時側には、マイナスネジによってミドルケースに固定されたリュウズガードが配されている。上面にはリュウズを挟んで“LOCK”と“→”と刻まれ、リュウズをねじ込む際の回転方向を分かりやすく示している。そのリュウズには、ブラックラバーの滑り止めが取り付けられ、操作性を高めるとともに見た目のアクセントにもなっている。

ステンレススティール製のケースバックには、防水性や限定数を示すシリアルナンバーなどの刻印に加え、波状の装飾とダイビングヘルメットのエングレービングが施されている。かつてのダイビングヘルメットはブロンズ素材で作られていることも多く、本作のイメージにもぴったりだ。

ブラックのラバーストラップは、非常にしなやかな感触だ。尾錠に向かって強くテーパーがかかっているが、それでも尾錠側は22mmと、しっかりとした幅が確保されている。フィッシュテール型のブロンズ製ピンバックルが装着され、見た目のバランスも良好だ。ベルトとラグは、バネ棒ではなく六角ボルトによって固定されている。また、今回レビューした個体には、ブラックのラバーストラップが装着されていたが、製品にはブラックのファブリックストラップも同梱されるようだ。場面によって使い分けると、より違った表情を楽しむことができるだろう。
ムーブメントは、セリタ社の薄型汎用ムーブメントをベースとしたBR-CAL.302-1を搭載している。針回しの感触はややふにゃりとしているものの、不具合が生じても修理しやすいことは汎用ムーブメントのメリットだ。ムーブメント自体が薄いことは、ケースの薄型化にも寄与している。

デイリーユース向きの装着感
実際に腕に装着してみると、そのずっしりとしたボリューム感を存分に楽しむことができる。大きくインパクトのある時計を好む方にとっては、その欲求を十分に満たしてくれることだろう。コクピットクロックをそのまま抜き出したかのようなスクエア型のケースやブラックとゴールドカラーの組み合わせは、周囲の目を引くこと間違いなしだ。
重量感はそれなりにあるものの、腕への負担は大きくない。ケースの厚さが12.3mmに抑えられていることや、ケースバックが薄いため重心が下にあること、短いラグによってストラップとケースの隙間がほぼなく、腕への密着感が高められていること、さらにはストラップがかなり幅広であることが重なった結果だろう。夏場に長時間着用した際に、幅広のストラップが蒸れてしまわないかは心配だが、少なくとも冬場においてはストレスを感じることなく着用し続けることができる。短めのラグは、腕上の収まりも良い。
ブロンズケースは自分の使い方に合わせて経年変化していくことが楽しみのひとつだが、そのためには日常的に気軽に使いたいと感じさせる着用感の良さが重要だ。少なくとも筆者が着用した印象では、その点における心配は無用である。
本作を手にした当初は、経年変化するブロンズケースと高耐久性のセラミックス製ベゼルインサートの組み合わせに疑問を抱いていた。ブロンズがくすんで古びた風合いになっていくことに対し、いつまでもベゼルがピカピカしていたのでは、見た目がちぐはぐになってしまうのではないかと感じたためだ。これに関しては、長期に使用してみなければ分からないため、ここで結論付けることは控えたい。

個性が共演する特別な1本を育てる
スマートフォンやパソコン、あるいは街中の設備時計など、さまざまな場所で簡単に時刻を知ることのできる現代では、もはや腕時計は必須アイテムではなくなっている。スーツやビジネスシーンにふさわしい腕時計は何かという“マナー”が議論の的になることもあるが、実際にはスポーツウォッチやスマートウォッチといったカジュアルな腕時計も幅を利かせている。つまり現代において腕時計とは、ある程度の範疇であれば自由に選択可能な、自らの好みや考え、個性を具現化したものと言えよう。
その観点では、本作はうってつけの存在だろう。一目でベル&ロスと分かるアイコニックなスクエア型ケースのダイバーズウォッチという強力な個性を備えていることに加え、使い込むことで唯一無二の風合いに仕上がるというオーナーの個性が付加されていく。
ブラックとゴールドカラーを組み合わせたインパクトのある色合いは、使うことをはばかられるシーンもあるだろうが、使い込んでいくうちにくすんだ風合いへと変化し、落ち着いた印象となっていくはずだ。人が年齢を重ねて深みを増していくように、腕時計も変化をしていく。同じ時間を過ごした証しを刻み込んだ存在は、きっと人生を豊かにしてくれるはずだ。



