アーノルド&サンの真価とその歴史

2017.12.06

(左)ジョン・アーノルドと息子ジョン・ロジャー・アーノルドの肖像画。14歳で父に弟子入りしたロジャーは、父の死後44年間にわたってブランドを守り続けた。(右)ジョン・アーノルド製造のポケットウォッチ「No.36」。高精度であることを宣伝するため“クロノメーター”を名乗った初めての時計だ。

ジョン・ロジャー・アーノルドは1792年よりパリに渡り、アブラアン-ルイ・ブレゲの下で時計作りを学んだ。父のジョン・アーノルドとも交流があったブレゲは、自身の時計製造の際にはジョン・アーノルドの時計を参考にしたという。また、1808年に初のトゥールビヨンを発明した際は、これを息子のロジャーへ渡している。

「海上で経度を測るマリンクロノメーターというものがあります。かつて英国のジョン・ハリソンという時計職人がこのマリンクロノメーターを発明しましたが、構造が複雑過ぎるため数を作れませんでした。その問題を克服するため、ジョン・アーノルドがさまざまな機構を開発し、普及させたのです。もし彼がいなかったら、英国は7つの海を制覇することはなかったかもしれません」

 アーノルド&サンの創業者、ジョン・アーノルドのエピソードでスタートした広田によるトークショー。時計の発展に多大な貢献を果たした偉大な時計師へ敬意を払いつつ、話は現在のアーノルド&サンに移行する。

「かつて旧ジャケ(=現ラ・ジュー・ペレ)の改造エボーシュを採用していたアーノルド&サンは現在、ラ・ジュー・ペレと同じプロサーグループに属しています。そして、ラ・ジュー・ペレはムーブメントメーカーのため、他社の製品も手掛けています。超高級ブランドのユニークピースを作ることもあり、それらを通して学んだ高級時計作りのノウハウをアーノルド&サンに投入しています。したがって、アーノルド&サンの仕上げの質は1990年代と比べ、別物と言えるくらいにレベルが上がっています。また、アーノルド&サンのムーブメントはラ・ジュー・ペレの設備の一部を使用して製造するため、少量生産であっても価格を抑えることができるのです」



では、アーノルド&サンの仕上げの質の高さを知るためには具体的にどこを注目すれば良いのだろうか。広田は次のように語る。