MEMBERS SALON
松山猛の台湾発見

松山猛の台湾発見 第4回 <ふたたび宝島へ>(1/2)

松山猛・著『せらみか』より(1993年、風塵社刊)

写真:菊地 和男
Photograph by Kazuo Kikuchi
台湾の茶の魅力に目覚めた僕に、友人の編集者からありがたい取材旅行の話が舞い込んできた。1週間の台湾取材旅行で、僕の好きな世界を探訪するという企画に胸が躍った。そしていざ台湾へのフライトとなったが、目的地台湾に大型台風が接近し上陸するとのことで空港に足止めをされてしまったのだった。

 8月の末(編注:1980年)、僕は再び宝島台湾への旅に出かけた。空港に着くと、なんだかカウンターがさわがしい。どうやら大型台風の影響で、運行スケジュールに変更があったらしい。
 午前10時半の便が、午後1時になると言う。それくらいならば、しかたがないと、寿司屋に陣取って、時の経つのを待った。
 ところが、1時になっても結局は飛べぬ。飛べぬわけで、日本の空は雲ひとつない、美しい晩夏の空であるのに、台湾にはその時、風速40メートル/秒という、とてつもない強烈な暴風が、接近しつつあったのだ。

 1週間の予定しかなかった。着いたその日に、東海岸の花蓮に飛ぶ国内線に乗り継ぎ、その翌朝に開催されるアミ族の豊年祭を見るつもりだった。多分、予定は大幅に変更せねばなるまい。そんなことを考えながら、用意してもらった空港近くのホテルのベッドの上で、うとうとと午後の眠りにとらわれていったのだった。

 夜の8時になって、ようやく搭乗案内があり、少なくとも予定した日のうちに、台北へは出かけられそうだった。ところが、いっこうに機は飛ぶ気配を見せぬ。やがてアナウンスがあって、乗客のひとりが乗り込んでいない、昨今の事情もあって、一度全乗客の荷物を降ろして、チェックをしたい。要するに爆弾テロなどあっては大変との配慮らしい。
 乗客はどよめき、あきれ、落胆し、そしてもっとひどいこともこの世にはあるのだからという気分に落ち着いた、そんな感じがあった。
 ところがそのとたん、ミッシングしていた乗客が見つかったとのアナウンス。機は遂にランウェイに出た。

 ああしかし、偶然は重なるものである。乗客のひとりが、高血圧の発作を起こしたのだ。再び機は搭乗口へと帰った。
 病人が車椅子で酸素吸入を受けながら降りた。不測の事態にそなえて、新しい酸素ボンベが積まれ、ドアがロックされた。

  1 2  
前の記事

美女と時計 美女と時計/第35回『スカーゲンを着けた素敵な女性』

次の記事

ダイニングイノベーション西山「決断と挑戦から見えたこととは?」4

おすすめ記事

正規時計販売店

正規時計販売店

高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP