本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る/『独自のブランディングで勝負するフォッシル』後編

FEATUREウェアラブルデバイスを語る
2018.08.28

マーク ジェイコブス「ライリー タッチ スクリーン 44 ゴールド ホワイト ストラップ」
マーク ジェイコブスらしさが発揮された“スーパーバブルシェイプ”のケースと、遊び心にあふれた豊富なアニメーション盤面が魅力的な「ライリー タッチ スクリーン 44 ゴールド ホワイト ストラップ」。SS(直径44mm)。4万2000円(税別)。㉄フォッシルジャパン℡03-5992-4611

特に注目すべき女性向けスマートウォッチ

 しかし、フォッシルが最も挑戦しているのは女性向けスマートウォッチの差異化ではないだろうか。現在の彼らのタッチスクリーンスマートウォッチは直径42mmと大きなケースのものも少なくないが、そうした制約にもかかわらず、各種ブランドのイメージに合う製品開発を行っている。

 たとえばケイト・スペード ニューヨークであれば、“デイジー”や“ニューヨーク”といったモチーフをアレンジし、アニメーションエフェクトを取り入れた盤面デザインを採用している。そして、その日のファッションコーディネートや今が昼間なのかディナータイムなのかなど、TPOに合わせて盤面デザインや配色を提案してくれるアプリを用意している。

 最新作のマーク ジェイコブスでは、アニメーション型の盤面デザインを多数用意。ケイト・スペードのようなオリジナルアプリはないが、アニメーションによってブランドが持つキュートで中性的なイメージを見事に表現している。

 そして、同社が継続的にスマートウォッチへと取り組んできた成果は、やっと今年になって実を結びつつあるようだ。女性向けブランドの販売現場にスマートウォッチを導入していくことは容易ではないが、これまで未開拓だったファッション属性の強い女性向けに商品提案を行ったことで、顧客が販売店に問い合わせを入れるようになり、結果として各ブランドの流通サイドへのスマートウォッチの認知が向上しているという。

 今後、さらに消費者からの声や各ブランドライセンサーによる製品へのフィードバックが得られるようになれば、“ファッションとしてのスマートウォッチ”の定番が形作られていくことだろう。

 しかしながら、本格的にファッションとしてのスマートウォッチという事業を展開し、それを定着させ、収益性の高いビジネスとして育てていく(それは同時にコスト圧縮にもつながり、結果的に消費者の利益にもなろう)には、まだまだ乗り越えるべきハードルは数多くある。ひとつはモデルサイクルと製品の世代管理、流通のコントロールだが、それ以外にもいくつか疑問はある。