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松山猛の台湾発見

松山猛の台湾発見「いかにして烏龍茶の絶対的美味をひき出すか」(1/2)

美味しくウーロン茶をいれる。これを昔から茶好きの人々は功夫茶と呼んだ。茶のいれ方には工夫がいるわけだが、やがて製茶するときにその茶を最もうまくいれるための、設計がなされていることを知る。ウーロン茶などの発酵茶で、しっかりと揉捻されて玉のごとくの形状になったものは、沸騰に近い温度でいれると、誰でも上手に失敗なしにいれることができるのだ。
松山猛・著『ちゃあい』より(1995年、風塵社刊)
写真:菊地 和男
松山氏が2006年に、台北市の茶芸館「烏鉄茶道(ウーティエチャーダオ)」を取材した際の写真。手前の3玉は、シルクの布に包まれた固形茶に主人の周氏が署名を施したもの。周氏は伝統的な功夫茶の他にも、新技術を用いた茶の製造に取り組んでいる。

 はじめて凍頂烏龍茶と茶器をもらった時、正直いっていれ方がわからなかった。しかしその後、妻の親戚を訪ねて台湾に旅した時、伯父さんの家で団欒の茶をいただきながら、いれ方をならって納得できたのである。
 直感的に、この茶は高温でないと出ないなと思っていたが、それだけでもまだ足りぬことが多かった。茶器を徹底的に温め、茶葉を蒸して成分を抽出させる。小型茶器はなるほどと思わせられる形と機能を持っていたのであった。
 はるかな昔、中国の人々も煮茶といって、茶やその他の材料を煎じるようにして飲んだらしい。やがて抹茶があらわれるが、中国ではさらに茶葉の製法が進化して、熱湯を注ぐことによって抽出できる喫茶法が定着し、今日に至っているわけである。
 茶がひとつの趣味として確立し、中国人はその飲み方を考えうるかぎり開発した。少なくとも3000年にわたってである。
 茶器茶具も、中国の各地方でそれぞれに発展し、その良いところが今日に伝えられたわけだが、北方風に大型の茶壺(急須)で大量にいれたり、取っ手のついたマグカップ状の物や蓋付杯に茶葉をそのままいれ、蓋をずらして飲むあのやり方では、烏龍茶は本当に味わうことができないのではないかと思う。
 やはり小振りの、人数に合わせた茶壺で、ていねいにいれる南方風の泡茶法が、茶の味をいつくしみ尽くす点において優れている。
 このような茶の楽しみ方を、中国語では「老人茶(ラオレンチャ)」と呼び、また「功夫茶(クンフーチャ)」とも呼ぶのだが、そんなにむずかしい作法はないから、ぜひ覚えていただきたいものだ。

 茶壺は宜興風の朱泥の物が良いとされる。朱泥は使い込むうちに細緻なその土肌の組織に、茶の成分が染み込み、味わいを増すというわけだ。数年間使い込んだ茶壺の内側は渋でまっ黒になるくらいだ。こうなると湯を注ぐだけで、茶の香りが漂うそうな。
 茶杯はクルミの殻くらいの小型の物が良い。烏龍茶はごくわずかずつの分量を、鼻と口と喉を使って飲むというより味わうものだからだ。確かに良質の茶には、花や果実の持つ甘い香りがある。それはおだやかな香りといえよう。
 中国の老人たちは、今の若い人は濃い本当の味の茶を好まなくなったと嘆く。飲み物としての性質が、近年少しずつ変化しているのかもしれないと思った。ある骨董商の親父さんに台北で飲ませてもらった秘伝の茶は、ものすごく濃く、とろりとしていて、飲みくだした後、喉の奥から甘美な香りがどんどんと還ってくる茶だった。彼は2種類の茶葉を茶壺の中でブレンドしていれてくれたのだが、これが話に聞く回甜という状態かと、しばし無口になるほどのおいしさだったのだ。
 回甜と書きホェイテンと読む。消化器の調子が悪い時など、普通より濃いめに烏龍茶をいれると、腹具合がすっきりする経験をしたが、これはある程度、食べ物を胃に送り込んでからでないと胃に負担が強すぎる。朝の茶はあっさりめに、そして夜のたっぷりとした脂っこい食事の後は濃いめにいれて飲む。

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