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ふたつの王、ロレックス蒐集の頂点(1/1)

『クロノス日本版』編集長の広田雅将と長年の交友関係を持つコレクター、ダビデ・ムナーリ。膨大な知識とアンティークウォッチに対する見識、そして確かな眼力をもって数多くのレアピースを購入してきた同氏が、アンティークウォッチコレクションにとってひとつの終着点と目する2モデルについて語る。

18KPGケースの1955年製ロレックス「ダトコンパックス」。Ref.6036。
ジョン・ゴールドバーガー:写真
Photographs by John Goldberger
ダビデ・ムナーリ:文
Text by Davidé Munari

 近年のデイトナやサブマリーナ、そして他のプロフェッショナルウォッチに対するオーケストラのごとき熱狂下にあっては、ロレックスの歴史における、真のキングを忘れがちである。本当のキングとは、つまるところ「ダトコンパックス」と、「Ref.6062」である。アンティークウォッチの教育を受けた好事家にとって、この2モデルは、美しさ、歴史的価値、そして希少さを体現した、ロレックス蒐集における頂点であり、過去を鑑みても、希少なフラッグシップである。これらは最もアイコニックで複雑なオイスターモデルというだけでなく、戦後期におけるロレックスのウォッチメイキングの威厳と品質を示す、永続的なシンボルでもある。

 1947年に発表されたRef.4767は、ポインターデイトと月、週表示の完全なカレンダー機構とクロノグラフを防水ケースに組み込んだ、ダトコンパックスの初リファレンスである。バルジュー72をベースに、クロノグラフ機構の上にカレンダーモジュールを追加したムーブメントは、耐久性を保証する著名な2ピースのブロックからなる、オイスターケースの内側に固定されている。複雑な機能を併載したにもかかわらずこのモデルはケースと、とりわけ文字盤において、完全なプロポーションを備えていた。

 その後、Ref.5036がRef.4767を継承し、51年にはRef.6036に置き替えられた。Ref.6036の生産は57年に終了し、ロレックスは58年にRef.6236を導入した。これはダトコンパックス最後のリファレンスである。同作では取り外し可能なベゼルを備えた、3ピースケースオイスターのケースを備えていた。ダトコンパックスの生産は、Ref.6236の製造中止により63年に終了した。総生産数がいかほどだったかの見積もりは人それぞれだが、研究者の間では、15年間に、4つのリファレンスを併せて、約1650本のダトコンパックスが製造された、と考えるのが定説だ。そしてこれは、その後25年にわたって製造された手巻きのデイトナに比べて、ほんのわずかな数でしかない。

 ダトコンパックスは主にスティール製で、18KYGモデルは少ない。18KPGに至っては極めて希少である。さまざまなダイアルが用意され、それらは異なる形状のアプライド、プリント、またはくぼんだインデックスのいずれかを備えていた。初期のRef.6036あたりまでのいくつかの個体は、「Serpico Y Laino」や「Joyeria Riviera」といった往年のリテーラー名がダイアルに署名されており、愛好家たちの間で特に人気が高い。今日なお、ダトコンパックスはロレックスによって作られた最も複雑な時計である。しかしほとんどの場合、ケースが過剰に研磨されたり、補修されたり、ダイアルが破損したりクリーニングされているため、高品質でよく補完された個体を見つけるのは、非常に困難だ。そのためコレクターにとっての挑戦は、極めて希少かつ正真の、オリジナル個体を見つけることにある。

 50年のバーゼルフェアでデビューしたRef.6062は、防水ケースにカレンダーとムーンフェイズを完備した、世界初の自動巻き腕時計だった。Ref.6062は、1年前に導入されたRef.8171のいわば“ステップアップ版”である。これはRef.8171が非防水のスナップバックケースに、同じ自動巻きのトリプルカレンダームーンフェイズキャリバーを搭載していたことによる。なおRef.8176とは異なり、ほとんどのRef.6062はクロノメーター認定されたムーブメントを搭載していた。と考えれば、多くの点で、Ref.6062とは、ロレックスの時計製作技術の典型といえるだろう。つまりは象徴的なオイスターケースの中に複雑で堅牢、かつ正確な自社設計の自動巻きムーブメントを搭載し、驚くほど美しいダイヤルで飾られていたのである。

 希少性の高さで言うとケースは、18KYG、スティール、18KPGの順であり、50年代前半に、さまざまな文字盤を持つ約1000のモデルが生産された、と考えられている。スター型のインデックスをあしらった文字盤モデルは、イタリアのコレクターが「Stelline(ステリネ)」とニックネームを付け、おそらくロレックスが作った、最も美しく象徴的な複雑時計となった。

 推定によると約250個の「ステリネ」が作られたとされる。その文字盤は、スターの外側または内側に付けられた発光体で区分けることが可能だ。18KYGと18KPGを持つステリンのほとんどは、インデックスの外に輝く発光体を持つ文字盤と、カレンダー窓の真下に印刷された「OFFICIALLY CERTIFIED CHRONOMETER」の印字を持っている。しかしより貴重なステリンは、スターインデックスの中に発光体を持つステリン文字盤を持つものだ。そして最も希少なのが、「OFFICIALLY CERTIFIED CHRONOMETER」の印字が、ムーンフェイズ窓の下に印刷されている個体である。審美的に見るとこれはかなりバランスが取れている、と言ってよい。

18KYGケースの1952年製Ref.6062、通称ステリネ。


 18KYGのRef.6062の文字盤は、アプライドのピラミッド形、またはダガー形のインデックスを持つことでも知られている。18KYGのRef.6062がブラック文字盤を持つ例は極めてまれで、2017年のオークションで506万6000スイスフランという記録的な価格で落札された“Bao Dai"が最も有名な個体にあたる。約200本のRef.6062がスティールで製造され、その文字盤には、エンボス加工された銀または金のダーツ状のインデックスが施された。珍しい18KPGのRef.6062では、スティールと同じエンボスダイアルを時々見ることができる。なおダトコンパックスと同様に、現在、良いコンディションのRef.6062はごくわずかしか残っていない。

 ダトコンパックスとRef.6062とは、時計の美観がピークに達し、時計にかけられるコストが希少性へとつながった戦後期において、その頂点と言えるモデルであり、疑うことなく、史上最も重要な時計メーカーが作り上げた、最も重要なモデルだった。豊かな資金を持ち、最も熟達した、大胆な愛好家であっても、このふたつのモデルの良質な個体を見つけるのは難しい。最も美しい個体を、レアな組み合わせで探すという“ハンティング”は、すべてのジャンルの時計と真剣に向き合うコレクターにとって、終わりのない探求であり、著者にとっても、腕時計収集の集大成を意味している。

ダビデ・ムナーリ
国際的な時計愛好家にして、希少腕時計および懐中時計のコレクター。


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