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松山猛の台湾発見

松山猛の台湾発見/いろんなお茶があるものです(1/2)

松山猛・著『ちゃあい』より(1995年、風塵社刊)
緑茶や軽発酵茶に、ジャスミンの花の香りを移した香片茶は、日本の中国料理店でもよく供されるものだ。また茶葉に漢方薬的な素材を加えた一葉茶という、一味変わったお茶などいろいろなバリエーションがお茶にはあるということが、次第にわかってきた。知らないことだらけの茶の迷路のような世界に、ますます迷い込むのは楽しいことだった。


香片

香片とは、茶葉と香気の高い茉莉花(ジャスミン)を混ぜて作った茶。ジャスミンの花は福建省の特産で、5月から10月のあいだに花が咲く。


 香片と書いてシャンピェンと読む。どこかの国の有名な発泡酒を思わせる語感だが、昔の人はこの茶を昼に飲むシャンパンと気取ったのかもしれない。
 現代のこの茶は茶葉に香気の高い茉莉花=ジャスミンの花を混ぜて作ったものだ。
 ジャスミンは、初夏に白い花を咲きほこらせる、亜熱帯に多い低木で、その香りは強く、古くから香料として珍重されてきた。
 烏龍茶がこれほど人気となる前は、よく中国料理店で、食後の口直しに出されたものだった。
 味にはっきりした性格があるためか、パリやロンドンの中国料理店でも使われていて、どこか典型的なアジアのフレーバーとして認められているらしい。
 あの香料めいた匂いがどうも、という人もいるだろうが、ほんとうに上質のものは嫌味がなく、茶葉そのものの香気と調和してけっこうなものだ。
 しかし、もともと上質茶そのものには、かぐわしい花の香りがある。おそらく香片は、人工的に香りを加えることにより、普通の茶の価値を高めた、イメージ商品だったのじゃないか、と推理する。
 香片を好むのは、広い中国でも華北の北京あたりだと聞く。茶の産地から遠く離れた土地の人々が、南方の新鮮な茶にあるという、花の香りにあこがれ、それを望んでいたことに対する、答えのような茶、それが香片なのではなかったか。
 鮮度高く、花の香りのある茶が、だれにでも飲めるほど大量に、そして安価にあれば問題はない。だがそんな茶は高値で、しかもわずかしか作れないのは目に見えている。
 茶に香りをつけるのは、古く宋の時代からあったそうだ。茶に花をいれる花茶も各地で作られ、ローカルで消費はされていたらしい。香片が大量生産されるのは19世紀にはいってしばらくたってからのことで、それから爆発的に人気を得たのだろう。
 ジャスミンの花は福建省の特産で、茶と同じ地方だったのもさいわいした。
 5月から10月のあいだ花は咲き、茶もとれる。青茶系の茶葉を準備し、花を摘んで加工する。花はその朝に摘んで夜に開花する「当天花」、つまり生きのよいのがよろしいそうな。
 茶と花を混ぜ、花が出す呼吸熱が高くなると、ひろげて放熱しようという工程で、よい香りが茶に行きわたる。そしてふるいにかけて花を取りのぞくわけだが、高級品ほど花が少ないと台湾の友人が言っていたように、香りだけが残されているらしい。仕上げに新鮮な花を飾りとして入れるのだそうだ。

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