時計のETA(エタ)とは何ですか? どんなムーブメントがあるの?/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

FEATUREぜんまい知恵袋
2021.08.22

Q:ETA(エタ)とは何ですか? どんなムーブメントがあるの?

A:スイス製の時計に広く使われる汎用ムーブメントであるETA製エボーシュムーブメント。よく使われるものとして5種類が挙げられます。最もベーシックなのは自動巻きのETA2824-2。パワーリザーブは約38時間しかありませんが、手巻きができるほか、テンプが大きいため高精度という特徴があります。その高級版が、ETA2892A2です。パワーリザーブは約42時間。手巻き式としての使用にはまったく向きませんが、薄いムーブメントです。自動巻きクロノグラフとして有名なのはETA7750、かつてのバルジュー7750です。パワーリザーブは約42〜46時間。自動巻き機構が片巻き上げ式のため、巻き上げ時のショックが大きく、プッシュボタンの押し心地もあまりよくありません。ただ、高精度なうえ、信頼性が極めて高いという特徴を持ちます。手巻きのムーブメントとしては、主に2種類が使用されます。懐中時計用に作られ、腕時計でも多く使用されるETA6497/6498と直径が小さく、薄型のETA7001です。前者はユニタス、後者はプゾーによる設計です。ひと昔前のパネライがETA6497/6498を、ETA7001は以前のノモスが使っていました。これらETA製エボーシュムーブメントはどれも基本設計が古いですが、これは言い換えれば成熟しきっており、信頼性が極めて高いとも言えます。汎用品であるETAのムーブメントを好まない人もいますが、壊れにくさを考えたら、今なお第一級。今後も広く使われていくでしょう。

Photographs by Masanori Yoshie
1975年に登場した「ETA2892」は、83年に小径化と巻き上げ機構の改良を施した「2892-2」を経て、99年より現在の2892A2に進化している。写真はETA2892A2を裏蓋側(上)と日の裏側(下)から撮ったもの。スペース効率の高い設計であることがうかがえる。なお、写真上右が自動巻きローターを、写真下右がデイトリングと日送り機構、オシドリならびにカンヌキの受けを外した状態である。