世界の最新ガジェット系製品のイベント『CES 2019発表モデルを振り返って』/本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る

FEATUREウェアラブルデバイスを語る
2019.02.25
本田雅一:文
Text by Masakazu Honda

テクノロジーの分野で、知らぬ人はいないほどのジャーナリストが、本田雅一氏だ。その本田氏が、1月に開催されたInternational CES 2019(Consumer Electronics Showの略)で見てきた、スマートウォッチの新作について語る。

 年初にラスベガスで開催されたInternational CES 2019で、スマートウォッチが百花繚乱……と言いたいところだが、いまひとつ盛り上がってこない理由は、Apple Watch series 4の勢いがあまりに強いからなのかもしれない。

 先日発表されたアップルの第1四半期決算(2018年10〜12月期)は、9月に発売された同製品が引き続き売れたことを示していた。個別の製品に関して販売台数は発表していないものの、“初めてのフルモデルチェンジ”を果たしたApple Watchが売り上げの大多数を占めるウェアラブル部門が、前年同期比で33.3%も売り上げを伸ばしたのだ。それでもなお「生産が追いつかなかった」というのだから、潜在的にはさらに需要があるということだろう。

 もっとも、まったく話題がなかったわけではない。Apple Watchと正面からぶつからないジャンルであれば、スマートウォッチの話題もいくつかあった。例えば、活動量計とアナログ時計を融合させたデザインで一部顧客層に訴求しているWithingsが展示した「Move ECG」は、同社のスマートウォッチに心電図(ECG)計測機能が追加されたモデルだ。

 アナログウォッチの文字盤にライフトラッキング機能を組み合わせたハイブリッド型スマートウォッチは、心房細動(AF)と呼ばれる心拍異常の発見が可能なECG記録が行える。例えば、動悸を感じたときなどに、その場でECGを計測してスマートフォン経由でデータをしかるべきところに送ることができる。

 同じ機能はApple Watch series 4にも備わっているが、ハイブリッドウォッチでそれを可能にしたのは本機が最初だろう。ほかにも歩数や階段の昇り降り、水泳のトラッキングなども可能となっている。しかも、バッテリー寿命は最大で12カ月。

 “普通の時計をIoT化”したのが、こうしたハイブリッドウォッチの特徴である。一般的なスマートウォッチが、スマートフォンの持つ価値を“時計型”にしたときに、何が正解なのか? という問いに対する答えなのに対して、ハイブリッドウォッチの軸足は、あくまでも従来型の腕時計にある。

ハイブリッドウォッチで初めて心電図計測機能を搭載したWhithing「Move ECG」。同機能で発見できる心房細動は常に病状が見られるわけではないため、病院での診断が困難とされる。また自覚症状が現れないケースも多く、いわゆる健康体でも発生する。以上の特徴を考えれば、普段から着用され、データ通信機能を有するスマートウォッチに心電図計測機能を持たせることの優位性が分かるだろう。