巻き返しの準備が整ったか? ポラールVantageシリーズを使ってみた/本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る

FEATUREウェアラブルデバイスを語る
2019.04.19

Vantage V

ポラール「Vantage V」
ポラールのフラッグシップモデル。高精度の心拍計やパワー計測、連携アプリの機能充実など、アスリート向けウェアラブルデバイスとして最高峰のスペックを誇る。320mAhリチウムポリマーバッテリー。トレーニングモード(GPSと手首型心拍計)で約40時間のバッテリー持続。SS(直径46mm、厚さ13mm)。66g。シリコン製ストラップ。30m防水。6万9800円(税別)。

コンセプトを一新したVantageシリーズ

 現行のポラール製品で、圧倒的な存在感を示しているのが昨年発表、発売された「Vantage V」だ。Vantageシリーズの核となるのは、新たに設計された高精度の心拍計である。

 一般的に、腕時計型デバイスに装備されている心拍計では、血液の補色である緑色のLEDの光を手首へ照射し、その透過光もしくは反射光を撮像。血管の収縮を検出することで心拍を検出している。

 しかしこれだけでは正確な心拍を、手首が激しく動いている中では検出できない場合もある。例えば4世代目(心拍計を装備してからは3世代目)となるApple Watchだが、ランニング時などに異常値(あきらかに実際とは異なる心拍数)が記録されることも少なくない。

 ポラールはこの問題を解決するため、5個の緑色LEDだけではなく、4個の赤色LEDも搭載した。色が異なるLEDを用いるのは、計測する血管の深さを変えるためだ。ことさら周囲の気温が低い場合などに効果的だという。

Vantage M

ポラールの心拍計はLEDの光を手首に照射し、その反射光の強度をフォトダイオードで測定する方法を採る。しかしこの肌表層で脈拍を測る方法では、運動中など手首が激しく動く際は計測精度が落ちてしまう。そのためVantageシリーズでは緑色とは波長の異なる赤色LEDも併用し、さらに深い位置の血管からも脈拍を計測。従来正確な測定が難しいとされていたシチュエーションでも高精度で測ることが可能になった。写真はVantage M。

 また5カ所に分散したLEDライトから検出する映像と内蔵Gセンサーからの情報を組み合わせ、手首の上で腕時計のセンサー部が常に動くような状況でも、読み取り間違いをしないよう特別なアルゴリズムを組み込んだ。仮に異常値を検出していたとしても、クラウド側でGセンサーの履歴と照らし合わせながら削除する。

 さらにVantage Vにはスマートフォンからの情報通知機能や、内蔵Gセンサーなどから加速度を読み取り、ランニング時のパワー(ランナーが出しているエネルギー)を推測する機能もある。通常、パワー計測にはシューズに装着するセンサーなどが必要だが、腕時計単体で計測できるところがミソだ。

 実際に表したワット数への信頼性は高くないかもしれないが、相対的なパワーの比較はできる。パワー計測と高度計を組み合わせることで、上り区間、下り区間、それぞれでのパワーを比較可能になるからだ。一般的に走力のあるランナーほど、下り区間でもしっかりとパワーを出してタイムを稼ぐ。

 全体のペース配分も含め、自分の弱点をしっかりと見極められるアスリート向けのスポーツウォッチと言えるだろう。

 加えて、内蔵されているGセンサーの性能も高まっているのか、自動的に睡眠モードに入る精度なども高くなっていた。

ポラール アプリ

特別目新しい機能ではないが、Vantageシリーズも就寝時に手首に装着することで、睡眠時のログを記録することができる。特筆すべきは使用者が睡眠に入ったと機械が判断する精度が高い点にある。筆者の見立てではGセンサーの性能が向上しているのではないか、とのこと。
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