市松 シルバー1000 / コニサーズ・チョイス

LIFEIN THE LIFE
2019.05.25

気品に満ちた純銀の輝き

数あるアクセサリーブランドのなかでも純度100%の銀を使ったシルバーアクセサリーを作ることができるブランドはごくわずか。たとえば、日本の市松。高度な職人技によって生み出される混じりっ気なしの輝きをご覧あれ。

押条良太(押条事務所):取材・文 Text by Ryota Osujo
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
市松 シルバー

市松 シルバー1000
市松は通常のシルバーアクセサリーでも純度98%のシルバー980を使用する。刀鍛冶技法の打ち込みによって強度を高められるため、銀含有率が高くても製作が可能なのだ。シルバー1000は市松の技術力の粋といえるだろう。市松のコレクションはごく一部のショップのみで扱われているが、群馬県の高崎、桐生、神奈川県の鎌倉にあるベルーリアが最も充実している。完全オーダー制で納期は約3カ月~。バングル4万円、リング2万4000円。

 世のほとんどのシルバーアクセサリーには、スターリングシルバーと呼ばれる素材が使われている。これは銀の含有率が92.5%の銀合金のこと。銀は性質上、純度100%だと軟らかすぎて加工や形状の維持が難しくなる。そのため、銅など他の金属が混ぜられたスターリングシルバーが用いられているのだ。

 そんなアクセサリー界の常識を覆すブランドが市松である。市松とは職人兼デザイナーの坂入大士氏が手掛けるアクセサリーブランド。完全ハンドメイドによるアクセサリーは、飾り気のないシンプルデザインながら、職人の精魂が込められた力強い槌目と温もりを感じさせる曲線が圧倒的な存在感を放つ。そんな市松が展開する「シルバー1000」はその名の通り、純度100.0%の純銀で作られた型破りなアクセサリーだ。

 なぜ、こんなことが可能なのか? 理由は市松独自の製法にある。一般的なブランドは銀合金を型に流し込んでかたちを作り、仕上げていくが、市松は一切型を使わず、職人がひとつひとつの地金から手作業で製作する。それも伝統的な刀作りの技法を駆使し、火入れによる加熱や水での冷却、金槌での叩きなどの工程を幾度となく繰り返す。職人が金槌を振るう姿は古の刀鍛冶さながら。こうして素材の強度を最大限に高めながら、職人が理想とするかたちを作っていくのだ。純度100%の銀に十分な強度を与えられる秘密は、時間と手間、そして熟練の技術を要するこの製法にあった。

 そんなシルバー1000の魅力は、純銀ならではの気品に満ちた優しい輝きと温かみのある風合いにある。酸化による黒ずみも発生しにくいため、ケアが簡単な点もメリットといえるだろう。

 そもそも市松のアクセサリーはひとりひとりの手首や指に合わせて作られるオーダー品のため、同じものはひとつとして存在しない。さらに実現が困難な純度100%の純銀とくれば、稀少性の高さはいわずもがな。

 人とは違うアクセサリーが欲しい―― 市松のシルバー1000は、そんな貴兄の望みを完全に叶えてくれる。

Contact info: ベルーリア鎌倉店 ☎0467-22-2566