祝! アイクポッド日本再上陸!

FEATUREその他
2019.09.21

アイクポッド 7年に及ぶ休眠からの復活

アイクポッド

バーゼルワールドで見かけたクロノポッドのプロトタイプ。
奥山栄一:写真
Photograph by Eiichi Okuyama
広田雅将(クロノス日本版):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

元祖オシャレ高級時計

 アイクポッドと言えば、かつてはほとんど唯一のオシャレ高級時計だった。時計好きの中でも、アイクポッドを持っていると言えば、デザインにうるさい人と思われたのである。創業は1994年。ドイツの実業家であるオリバー・アイクが、デザイナーのマーク・ニューソンと共同で興した。

 マーク・ニューソンはApple Watchに携わったことでいきなり有名になったが、実のところ、Apple Watchのデザインソースは、多くがアイクポッドに由来していた。それぐらいにアイクポッドは先進的なデザインを持っていたが、2006年に破産し、会社自体は休眠状態にあった。08年に復活したものの、ケース素材を18Kゴールドとプラチナに限り、また高級時計店でのみ販売したため、ビジネスとしては成功したとは言いがたかった。12年にアイクポッドは活動を停止し、ニューソンも会社を離れてしまった。

新生アイクポッドのデザイナーはエマニュエル・ギュエ

 しかし、ふたりの実業家がアイクポッドを復活させた。デザイナーはマーク・ニューソンではないが、時計好きならば、むしろ新しいデザイナーの方がいいかもしれない。名前はエマニュエル・ギュエ。オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク オフショア」や、ロレックスの「チェリーニ」を手掛けた名デザイナーである。オリジナルのスタイルを上手く翻訳するという彼のスタイルは、なるほど新生アイクポッドに相応しい。

エマニュエル・ギュエ

デュオポッドとクロノポッドをデザインした、エマニュエル・ギュエ。オーデマ ピゲの在籍中に、「ロイヤル オーク オフショア」を手掛けたほか、以降現行のロレックス「チェリーニ」などをデザインした。既存のモデルを巧みにリファインする彼の手腕は、スイスの時計業界でも高く評価されている。

 webChronosの取材に対して、エマニュエル・ギュエはこう説明してくれた。「このアイコニックな時計のリ・デザインは上手くいったと思っている。私はこのブランドのファンで、時計の美をよみがえらせる作業はエキサイティングなものだった」

抑えられた価格

 そんなアイクポッドには、もうひとつの特徴がある。従来からは想像できないほどの控えめな価格だ。機械式でかつ少量生産だった以前のアイクポッドは、お世辞にも決して安い時計ではなかった。それ故にデザインアイコンとなったのは事実だが、普通の人が買うにはハードルが高すぎた。

 対して新生アイクポッドのファーストモデルは、すべてクォーツを採用。またスイスメイドにこだわらないことで(組み立ては香港である)、価格を大きく抑えた。事実、アイクポッドの公式サイトにも「同じデザイン、そして控えめな価格」と記されている。筆者が最初にプロダクトを見たのはバーゼルワールドだったが、試作にもかかわらず出来は悪くなかった。また最近輸入された製品版は、いっそう質が良くなっている。最も安いモデルはアンダー8万円だが、その値段を感じさせない出来映えは、新生アイクポッドの大きな魅力と言える。

 ギュエはこう語る。「このブランドに新世紀をもたらし、アイクポッド3.0を進めることは大きな挑戦だった。つまりは、価格を抑える一方で、相変わらず魅力的なデザインを与えることだ」

アイクポッド,デュオポッド,クロノポッド

(左)アイクポッド「デュオポッド」
エマニュエル・ギュエがリ・デザインした2針モデル。男性用と女性用、2種類のストラップから選べる。なお限定で、文字盤にドットをあしらったモデルもある。クォーツ。SS(直径42mm)。3気圧防水。7万7000円(税別)。
(右)アイクポッド「クロノポッド」
こちらはミヨタのクォーツクロノグラフを搭載したクロノグラフ。ストラップの種類などは2針モデルに同じ。クォーツ(Cal. Miyota JS 25)。SS(直径42mm)。3気圧防水。9万2000円(税別)。

アンダー10万円ウォッチにおける台風の目となるか

 もうひとつ新生アイクポッドの美点を挙げたい。普通、クォーツムーブメントを載せ、かつ太い針を載せると、どうしても針の動きが渋くなってしまう。しかし、チェックした限り、運針は実にスムースだった。デザインしたエマニュエル・ギュエは熟練したデザイナーである。当然、モーターのトルクを考慮してリ・デザインを行ったはずだ。

 デザイン良し、価格良しの新しいアイクポッドはアンダー10万円の台風の目になるかもしれない。もし、ご興味のある方は、ぜひネットでチェックするのではなく、実物をご確認あれ。なお、同ブランドを再興させたクリスチャン-ルイ・コルのインタビューは、クロノス日本版No.85(10月3日発売)に掲載予定だ。


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