BLANCPAIN (ブランパン)
愛好家を刺激する魅力的な「復刻版」
ブランパンの魅力のひとつは、間違いなく優れた外装にある。2019年は、その魅力を押し出した復刻モデルをリリース。中でも「バラクーダ」と「エアコマンド」はその白眉だ。
ドイツ連邦海軍に時計を納入したバラクーダの要望で完成した、民生用モデルの復刻版。当時の雰囲気はよく出ている。ケース厚が13.23mmのため、装着感も良好だ。非常に魅
力的だが限定数が少ないのは残念。自動巻き（Cal.1151）。28 石。2万1600 振動／時。パワーリザーブ約100時間。SS（直径40.3mm）。30気圧防水。世界限定500本。139万円。
今や、販売本数の3分の1を占めるに至った「フィフティ ファゾムス」コレクション（含む「バチスカーフ」）。2019年は、定番の45㎜モデルにチタンケースを加えたほか、ヴィンテージ風の限定版を追加した。
19６0年代後半、ドイツの潜水機器メーカーであるバラクーダは、ドイツ連邦海軍に軍用モデルを納入。併せて民生用も市販した。この通称「バラクーダ」に範を取ったのが「フィフティ ファゾムスバラクーダ」である。外装を評価されるだけあって、完成度は申し分ない。しかし、ムーブメントはかつて存在した2万8800振動／時、パワーリザーブ約68時間版のほうが相応しいように思う。
もうひとつの限定モデルが「エアコマンド」だ。アメリカ海軍にダイバーズウォッチを納入していたブランパンは、アメリカ空軍向けにクロノグラフのプロトタイプを12本製造。このモデルをリバイバルしたのが、最新版のエアコマンドである。秒針がないのは残念だが、ハイビートに加えて、非常に正確に作動するフライバック機能を備えている。
優れた外装により、スポーツウォッチのカテゴリーでもセールスを伸ばすブランパン。良質なスポーツウォッチを探している人なら、新作は見るべきだろう。
アメリカ空軍向けプロトタイプの復刻版。外装の質感は申し分なし！ 自動巻き（Cal.F388B）。35石。3万6000振動／時。パワーリザーブ約50時間。SS（直径42.5mm、厚さ13.77mm）。3 気圧防水。世界限定500本。194万円。
JAQUET DROZ (ジャケ・ドロー)
ユニークさを求めるジャケ・ドローの集大成
工房を拡充して以降、ジャケ・ドローはグラン・セコンド、アトリエ・ダール、そしてオートマタの3つにフォーカスして、独自性を磨き上げてきた。その集大成が今年の「ロータス」だ。
輪廻転生をモチーフにした、ジャケ・ドロー空前の大作にして史上空前のオートマトン。文字盤には1回で4分間回転し続けるディスクが内蔵されており、その上に配された蓮が、春夏秋冬を表す。自動巻き（Cal. Jaquet Droz 2653 AT2）。56石。2万8800振動／時。パワーリザーブ約68時間。18KRG（直径43mm）。3気圧防水。世界限定28本。予価2283万円。
2010年以降、文字盤の余白で趣向を凝らすようになったジャケ・ドロー。12年にはシナリオを加えたバード・リピーターを完成させ、4年前には社内にオートマタ工房が完成した。
文字盤の余白にオートマトンを組み込む手法の完成形は「マジック・ロータス・オートマトン」である。文字盤の外周に置かれたのは、4分間回転し続けるプレート。プレートに配された4つの蓮が、春、夏、秋、冬の四季と生命の局面を示す。３時位置のつぼみが春、夏はつぼみのとなりで開花した花、水に落ちた花が秋、冬は6時位置の種が表現する。また、秋を表す花には中心部にブルーサファイア、イエローサファイア、そしてレッドルビーが埋め込まれ、ディスクの回転に伴い、色を変える。9時位置に見えるトンボはオートマトンのパワーリザーブ表示。文字盤だけで99の部品を用い、仕上げに180時間以上掛かるのも納得だ。「グラン・セコンド クロノグラフ」はSSケースもあるが、筆者のお勧めは18KRG版。マルチサンクのエナメル文字盤は、それだけで買う価値がある。
少量生産ながらも、心に響くような新作を発表したジャケ・ドロー。願わくはこのブランドが、日本でも一層の知名度を得られますように。
レトログラード式日付表示を持つグラン・セコンド初のクロノグラフ。自動巻き（Cal. Jaquet Droz 26M5R）。34石。2万1600振動／時。パワーリザーブ約40時間。18KRG（直径43mm）。3気圧防水。世界限定88本。予価337万円。
