腕時計とスマートウォッチの間を埋めるフォッシルの「ハイブリッドHR」

FEATUREウェアラブルデバイスを語る
2020.02.17

フォッシル「ハイブリッドHR」

テクノロジーの分野で知らぬ人はいないほどのジャーナリストが、本田雅一氏だ。その本田氏が、ウェアラブルデバイスについて執筆する本連載。今回は数多くのスマートウォッチを手掛けてきたフォッシルの新作「ハイブリッドHR」を実際に着用し、レビューする。アナログ式の腕時計をベースにスマートウォッチの機能を盛り込んだ同社の「ハイブリッドスマートウォッチ」として、はじめて電子ペーパーを盤面に採用したハイブリッドHRは、腕時計が持つ視認性の高さと、スマートウォッチの機能性を両立。“電子デバイス寄り”の製品になじめない消費者にとっても使い勝手に優れたモデルと言える。

ハイブリッドHR

本田雅一:文
Text by Masakazu Honda

ハイブリッド型スマートウォッチに電子ペーパーを採用

 フォッシルは多種多様なデザインを大量に作り分けるカジュアルなファッションウォッチの草分けとして、自社ブランドならず多数のファッションブランドにオリジナルウォッチを提供してきた。

 それだけに、スマートフォンの普及など“時を知る道具”が多岐にわたる中で、カジュアルな腕時計市場が縮小。その影響を最も多く受けているメーカーでもある。その答えとして進めてきたのが、スマートウォッチの開発であったことは同社も認めるところだ。

 グーグルのwear OSを用いた同社のディスプレイウォッチ「スマートウォッチ」が第5世代へと突入したが、腕時計然とした「ハイブリッドスマートウォッチ」も新しい世代へ移行した。アナログ指針の腕時計が持つファッション性や高いバッテリー持続性、視認性とスマートウォッチの利便性をバランス良く両立した製品領域は、デジタル製品ではなく腕時計業界を生き抜いてきた同社ならではの方向性だ。

 そして新シリーズ「ハイブリッドHR」ではその取り組みのかいもあって、見事にスマートウォッチと腕時計の両方の機能を高次元で均衡させている。

ハイブリッドHR

フォッシル「ハイブリッドHR」FTW7010
フォッシルが得意とする指針式のアナログ時計に、スマートフォン通知や活動量計といった機能を併載させた「ハイブリッドスマートウォッチ」の最新作。電子ペーパーを採用したことでより詳細な通知機能を実現させたほか、心拍数や歩数といった活動量計のデータをダイアル上に常時表示させることが可能になった。iPhone5以降かつiOS10以上のiPhoneとAndroid 5.0以降のアンドロイドスマートフォンに対応。1回の充電で2週間以上のバッテリーライフ。SS(直径42mm、厚さ13mm)。3気圧防水。2万6500円(税別)。

 新シリーズでは電子ペーパーをディスプレイとして採用。盤面のベース部分に配置し、そこにインデックスやレイヤーを重ねた“腕時計然”としたデザインを実現している。今後はバリエーションを増やし、ダイバーズウォッチを連想させるベゼルデザインを持った、よりスポーティーなデザインも展開する予定だ。

 一方でディスプレイを備えるようになったことで、スマートウォッチの基本機能である“通知”を詳細に行えるようになったほか、より細かいデータの表示や盤面カスタマイズを実現。さらに2時位置と4時位置、そしてリュウズの意匠を持った、計3つのボタンを駆使したインタラクティブな操作により、スマートウォッチに求められる大多数の機能を収めることに成功した。

 着信した電話やSMS、SNSメッセージなどは、Bluetoothで接続されたスマートフォン側の設定に連動し、バイブレーションで通知するとともに電子ペーパー上に表示される。

ハイブリッドHR

電子ペーパーのディスプレイは同期しているスマートフォン上のアプリケーション内でデザインを変更することが可能。さらに2時位置と4時位置にあるクロノグラフプッシャー風ボタンならびに3時位置のリュウズ風ボタンへの機能割り当てもこのアプリで行うことができる。操作感はより向上したと言えよう。

 電子ペーパーは表示したグラフィックスを電力消費なしに維持できるため、高精細なテキスト表示と低消費電力を両立できる。ハイブリッドHRでは心拍数の常時モニター機能を備えながら、2週間以上のバッテリー持続時間を実現した。

 時分針のシンプルな指針による“腕時計としての視認性”と、スマートウォッチとしての機能性の両立は、Apple Watchやwear OS搭載モデルなど“電子デバイス寄り”の製品になじめない消費者にとっては程よい使い心地と言えるだろう。

 一方で機能的な制約はもちろんある。