IWCポルトギーゼの魅力や特徴とは。主なモデル4選とともに紹介

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2020.05.14

IWCは、スイスの老舗時計メーカーの中でも質実剛健な時計作りに定評のあるマニュファクチュールだ。看板コレクションである「ポルトギーゼ」には、IWCの設計思想やデザインコードの歴史が凝縮されている。今回は、その魅力や特徴を紹介しよう。

IWCの工場

2018年8月27日、約4200万スイスフランをかけてスイス・シャフハウゼン近郊のメリシャウゼンに完成したIWCの新工場「マヌファクトゥールツェントルム」。CEOのクリストフ・グランジェ・ヘア氏によると「この150年で最大の投資」という。最新鋭の工作機械を備えるだけでなく、年間27万5000kW発電可能な太陽光発電システムや地下水を利用した冷暖房設備を導入する。

 

IWCについて知ろう

IWC(International Watch Company)は、ドイツ語圏のシャフハウゼンに拠点を置くスイスの時計メーカーだ。

そのため、ジュネーブやラ・ショー・ド・フォンといったスイス南西部に位置する老舗メーカーとは、成り立ちや設計思想の面で一線を画し、理論的で機能性を重視したドイツ的なアプローチを特徴とする。

IWCとは

1868年創業の「IWC(International Watch Company)」が拠点を置くシャフハウゼンはドイツ国境に近いスイス北部にある。スイス南西部の老舗メゾンとは成り立ちや設計思想の面で一線を画するマニュファクチュールである。

懐中時計の時代からドイツ高級時計寄りの質実剛健な時計作りを続けており、その腕時計は計時の信頼性とダイアルの視認性を重視した、スタイリッシュな仕上がりが特徴だ。

「ポルトギーゼ」「パイロット・ウォッチ」「インヂュニア」「アクアタイマー」「ダ・ヴィンチ」「ポートフィノ」という6つのレギュラーコレクションを展開し、時計愛好家のみならず日常的な着用を求める層からも高い評価を得ている。

IWCの歴史

1868年、米国出身の時計師でありエンジニアでもあるフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズによって創業。初期の特筆すべき実績は、時分をデジタル表示するパルウェーバー・システムを搭載した画期的な懐中時計(1885年)、女性用懐中時計の小型ムーブメントを流用した腕時計(1899年)、IWC初の腕時計専用ムーブメント(1915年)の発表だ。

1936年には英国空軍向けのパイロット・ウォッチを初めて発表、39年にはポルトガルの時計商人からの依頼でポルトギーゼを製造する。44年にはアルバート・ペラトン、57年にはクルト・クラウスという優秀な時計師が入社し、マニュファクチュールとしての地位を確立していった。

 

IWCの特徴とコレクション

IWCは英語読みの社名とドイツ的な設計思想を持つ、スイスの老舗時計メゾンだ。デザイン性で見ればドイツ的だが、150年以上を数える歴史のなかで、スイスの一流メゾンとしての地位も確立している。

ここでは、IWCのデザイン思想や永久修理の伝統と、主なコレクションについて見ていこう。

デザイン性

IWCはスイスの老舗時計メーカーとしては例外的に、ベゼルにダイヤモンドを配したり、ダイアルに複雑なギヨシェを彫ったりといった、華美な装飾を施さない。複雑機構を搭載するモデルであっても主張は控えめだ。まず視認性や操作性が重視され、無駄がなく洗練されたデザインを持つ。

また、多くのモデルは着用者を選ばないユニセックスなデザインを基調としている。着用シーンを限定せず、さりげなく身に着けられる高級腕時計として、IWCは魅力的な選択肢だ。

永久修理保証

IWCは、創業年である1868年以降に発売したすべての時計に対して永久修理を保証している点でも、特別な地位を確立している。IWCのほかに永久修理保証を採用している時計メーカーは、パテック フィリップやオーデマ ピゲなど、ごく限られた一流メーカーのみだ。

というのも、アンティーク時計の修理はコスト面で折り合いがつかず、メーカーの歴史が長くなるほど永久修理のリスクは増大するからだ。しかし、IWCは失われたパーツであっても再製造することを約束しており、これが自社時計の資産価値の維持向上にも奏功している。

IWCの時計は懐中時計・腕時計ともにアンティーク市場が確立しており、コレクターの信頼を裏切らない点でも別格である。

主なコレクション

IWCのフラッグシップコレクションは、ポルトギーゼとパイロット・ウォッチの二枚看板だ。いずれも特に歴史の長いコレクションであり、現在までにデザインやムーブメントの刷新が幾度となく行われている。

ポルトギーゼは「マリン・クロノメーターに匹敵する精度の腕時計を」というポルトガルの時計商人の要望に応えて生まれた、1939年当時としては例外的に大ぶりなケース径42mmの腕時計であった。

英国空軍の戦闘機パイロット向けに開発されたパイロット・ウォッチは、堅牢性や耐磁性が高いタフな腕時計である。

40年にドイツ海軍向けに開発した派生モデル「ビッグ・パイロット・ウォッチ」は、ケース径55mmという類を見ないビッグサイズの腕時計であった。

 

ポルトギーゼの魅力や特徴

パイロット・ウォッチはミリタリーウォッチとして比類なき性能と知名度を誇るが、着用者を選ばない腕時計としてIWCの看板コレクションとなっているのがポルトギーゼだ。

ここでは、ポルトギーゼの特徴的なデザインコードについて見ていこう。

秒針デザイン

ポルトギーゼはクロノグラフや永久カレンダーなど複雑機構搭載モデルを基本とするコレクションだが、ダイアルは情報量の多さを感じさせず、すっきりとまとまっている。

この視認性の高さは、スリムなリーフ型針と、クセのないアラビアインデックスの絶妙なバランスによるところが大きいだろう。

さらに、IWCでは針とインデックスを青か金、またはシルバーに統一させることが多い。現行コレクションではクロノグラフ秒針のみ青を採用し、印象を際立たせているモデルもある。

文字盤のレイアウト

ポルトギーゼは、ダイアルのレイアウトを調整することで、メカニカルな印象になりがちなクロノグラフをスマートに仕上げている点も特徴的だ。

通常のクロノグラフは3時・6時・9時位置か、6時・9時・12時にインダイアルを配することが多い。

これを「ポルトギーゼ・クロノグラフ」などでは6時位置にスモールセコンド、12時位置に30分積算計のふたつだけとし、12時間積算計を持たない。

さらに、インデックスの半分を削る程度にまで拡大したインダイアルを上下対称に配置した。

細身のアウターベゼルの内側に1/4秒刻みのインナーベゼルを配していることも手伝い、大きなダイアルですっきりと時間を確認できる視認性を確保しているのだ。

 

ポルトギーゼの選び方

ポルトギーゼは、モデル名から搭載する複雑機構が判断しやすく、価格帯の区分も明瞭だ。ケースやダイアルのバリエーションもパターン化されているため、購入する1本を選ぶ際には、まず機能面から考えていこう。

機能性

ポルトギーゼを選ぶ際には、どのような機構を搭載したモデルを求めるかを考えてみよう。それによりフェイスも価格帯も大きく異なる。

定番のクロノグラフは、ふたつのインダイアルで日付表示窓もないシンプルなフェイスのモデルもあり、自社製ムーブメント搭載モデルを100万円以下から選べることも魅力だ。

カレンダー機能を搭載したモデルは、アニュアル・カレンダー(年次カレンダー)とパーペチュアル・カレンダー(永久カレンダー)の2種に大別できる。

アニュアル・カレンダー(年次カレンダー)搭載モデルは2月末を自動調整しないため、1年に1回、3月1日のみ手動で日付調整する必要がある。一方、パーペチュアル・カレンダー(永久カレンダー)搭載モデルは、手動の調整を必要としないが、その分価格帯は高くなる。

ケース素材やダイアルカラー

ポルトギーゼは、ステンレススティールケースとシルバーメッキダイアルという組み合わせがベーシックだが、モデルによってはいくつかのバリエーションがある。例えば、ステンレススティールならダイアルはブルーやブラック、高級感のあるレッドゴールドのケースならスレートグレーが選べるといった具合だ。

基本的にダイアルの色では価格は変わらないが、レッドゴールドでは価格もステータス性も高まり、ドレスウォッチとしての性格が強まるだろう。

クラスプやインデックスの加工

旧コレクションのポルトギーゼは、クラスプは尾錠型で、インデックスはエンボス加工であったが、現行コレクションではストラップをDバックルで留め、インデックスは植字となっている。これにより腕時計の装着感や安定性、インデックスの視認性が高まった。

従来式の尾錠型やエンボス加工のインデックスを求めるなら、二次流通市場の在庫を探すことになる。生産終了したかつてのモデルに強い思い入れがないのであれば、全体的に改良が加えられた現行モデルから選ぶのがいいだろう。

 

主なモデル

前述したポルトギーゼのバリエーションの中から、搭載機能別モデル4種を紹介しよう。

ポルトギーゼ・オートマティック 40

ポルトギーゼ・オートマティック 40

ポルトギーゼ・オートマティック 40
自動巻き(Cal.82200)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径40.4mm、厚さ12.4 mm)。3気圧防水。アリゲーターストラップ。72万5000円(税別)。

1939年発売のオリジナルデザインを踏襲しながら、レイルウェイトラックやアプライドインデックスを採用することでブラッシュアップさせた。他モデルよりコンパクトな直径40mmのケースとシンプルな文字盤が、時代を超越するモダンなセンスを感じさせる。

ポルトギーゼ・クロノグラフ

ポルトギーゼ・クロノグラフ

ポルトギーゼ・クロノグラフ
自動巻き(Cal.69355)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SS(直径41mm、厚さ13.1mm)。3気圧防水。アリゲーターストラップ。79万5000円(税別)。

深みのあるクラレットカラーの文字盤が印象的な1本。サファイアクリスタル製のトランスパレントバックからは、コラムホイール式の自社製クロノグラフムーブメントCal.69355がのぞく。新開発のバタフライ・フォールディング・クラスプによって着用感が一層高まった。

ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 42

ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 42

ポルトギーゼ・パーペチュアルカレンダー 42
自動巻き(Cal.82650)。46石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径42.4mm、厚さ13.8mm)。3気圧防水。アリゲーターストラップ。234万円(税別)。

1980年代に設計された伝説的な複雑機構を、初めてキャリバー82000シリーズに搭載。全カレンダー表示を完全に同期しているため、止まった際もリュウズのみで日付を合わせられる。ペラトン自動巻き機構にはセラミックス製の部品を採用し、約60時間のパワーリザーブを誇る。

ポルトギーゼ・ヨットクラブ・ムーン&タイド

ポルトギーゼ・ヨットクラブ・ムーン&タイド

ポルトギーゼ・ヨットクラブ・ムーン&タイド
自動巻き(Cal.82835)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRG(直径44.6mm、厚さ14.4mm)。3気圧防水。ラバーストラップ。358万円(税別)。

2010年以来、マリンスポーツウォッチとして水辺はもちろん、水陸両用のスポーティーウォッチとして、高い汎用性を持つモデルとして知られてきた「ポルトギーゼ・ヨットクラブ」に、IWC初となるタイド表示機能を搭載して登場した2020年の新作。6時位置のサブダイアルで満潮と干潮の予想時刻を表示。12時位置のダブルムーンフェイズ表示は、大潮と小潮に加え、潮流の強さに関する情報も表示する。

 

ポルトギーゼの魅力を知ろう

ポルトギーゼの魅力は、スリムなベゼルに大きなダイアル、細身のリーフ型針やクセのないアラビックインデックスといった、スタイリッュなデザインだ。

手元をシンプルかつエレガントに演出し、永久修理が受けられる安心感も大きいポルトギーゼを、コレクションに加えてみてはいかがだろうか。

 

Contact info: IWC Tel.0120-05-1868

 

川部憲 Text by Ken Kawabe