時計愛好家感涙! NAOYA HIDA & Co.の新作2本を見る

FEATUREその他
2020.04.16

昨年デビューしたNAOYA HIDA & Co.。創業者の飛田直哉氏は、ウォッチビジネスで長い経験を持つ一方、筋金入りの時計好きとしても知られる人物だ。そんな彼のリリースしたNH TYPE 1Bは、普段使いできるパッケージングを持ちながらも、時計好きをくすぐる要素に満ちた時計だ。2020年は、そのNH TYPE 1Bを小改良。加えて、センターセコンド付きのNH TYPE 2を追加した。いずれも、旧作に増してディテールが揃っており、時計としてのまとまりが増している。

NH TYPE 1C

2020年4月に発表されたTYPE 1の最新作。手彫りのインデックスや、SUS904L製のケースやバックルは従来に同じ。しかし、ラグが細くなるなどのモディファイを受けた。手巻き(Cal.3019SS)。18石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径37mm、厚さ9.8mm)。NH TYPE 2Aと合わせた生産本数は約20本。185万円(税別)。
広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)

時計としての完成度を上げた2020年モデル

NH TYPE 1C

NH TYPE 1C
2020年4月に発表されたTYPE 1の最新作。手彫りのインデックスや、SUS904L製のケースやバックルは従来に同じ。しかし、ラグが細くなるなどのモディファイを受けた。手巻き(Cal.3019SS)。18石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径37mm、厚さ9.8mm)。NH TYPE 2Aと合わせた生産本数は約20本。185万円(税別)。

「クロノグラフ」引く「クロノグラフ機構」というアプローチ

 テンワの大きなクロノグラフムーブメントからクロノグラフ機構を省き、高精度な3針ムーブメントに仕立てる。この手法を用いたムーブメントには、オーデマ ピゲのVZSS系や、A.ランゲ&ゾーネが搭載したCal.L041.2、ETAの通称「バルグランジュ」などが存在する。時計好きのみなさんならお分かりの通り、いずれも極めて優れたムーブメントである。

Cal.3019SS

Cal.3019SS
ETA7750からクロノグラフ機構と自動巻き機構を外し、独自の受けとコハゼを加えたのがCal.3019SSである。このアプローチは、かつての名機であるオーデマ ピゲのVZSS系などにまったく同じだ。プアな巻き味を持つETA7750だが、退却式のコハゼを合わせることで、かつての手巻き時計のような明確な巻き味を持つに至る。ムーブメントの直径は30mm、厚さは4.3mm。

 時計好きである飛田氏も、やはりこの“古典的”なアプローチに倣った。ベースに選んだのはETAの7750。1973年にリリースされた自動巻きクロノグラフの金字塔である。NAOYA HIDA & Co.は、このムーブメントからクロノグラフ機構と自動巻き機構(お世辞にも出来が良いとは言えない)を取り外し、シンプルな3針のCal.3019SSを作り上げた。キャリバー名の由来は、直径30mmで2019年製、そしてスモールセコンドの意味だ。直径30mmの大きなテンワを持つ手巻きムーブメントとは、つまるところ、VZSSの現代版と言えるだろう。

適切なサイズのムーブメントがもたらす巻き味

 直径30mmのムーブメントを防水ケースに収めると、どうしてもケースサイズは40mmを超えてしまう。しかし、工夫を凝らすことで、NH TYPE 1のケースサイズを37mmに留めた。そのため、スモールセコンドの位置は、古典的な高精度機を思わせるほど適切な上、リュウズにもダイレクトな巻き味が与えられた。筆者の私見を言うと、気分の良い巻き味は、ケースいっぱいにムーブメントが詰まった時計でしか味わえない魅力だ。確かに、ケースとリュウズ回りをきっちり作り込んだ時計なら、ケースに比してムーブメントが小さくとも、そこそこの感触は楽しめる。しかし、あなたが感触を突き詰めたいピューリタンならば、ケースに対して適切なムーブメントサイズを求めるべきだろう。今や、ほとんど望むべくもないけれど。

NH TYPE 1C


直径37mmのケースに対して、ムーブメントは30mmもある。サイズがギリギリのため、ケースバックはねじ込み式ではなく、スナップバックである。スナップバックの採用により、ケース厚は10mm以下に収められた。

細かなリファインが施されたNH TYPE 1C

 2019年に発表されたNH TYPE 1Bは魅力的な時計だったが、飛田氏は改善点がある、と考えたようだ。彼はリリース後、新しいNH TYPE 1の構想を練り、2020年、NH TYPE 1Cのお披露目となった。プレスリリースの表記は以下の通り、実にあっさりしたものだが、時計としてのバランスは、明らかに良くなっている。

・2019年に発表し、完売したNH TYPE 1Bの細部の仕様を変更したモデルである。

・NH TYPE 1Bと比較して、以下の点が変更されている。

 - ラグ(時計本体と革ベルトをつなぐ4本の突き出した部分)の外側を0.5mm薄くした。

 - 9時位置にあるスモールセコンド(小さな秒針)の形状を変更した。

 - カーブド・サファイアクリスタルの内側に無反射加工を施した。

 - リュウズを引いて時刻合わせのポジションに到達するまで、従来は途中に1段ステップがあったが、これを排した。

 - 文字盤上のブランドロゴ「NAOYA HIDA & Co.」を0.37mm上に移動させた。

 - 標準で付属するレザーストラップの素材が変更された。

NH TYPE 1C

既存のモデル同様、大きく湾曲したラグは、幅が0.5mm薄くなった。ケースとバックルの素材は904Lステンレススティールである。

0.5mm細くなったラグ

 飛田氏が一番悩んだのは、ラグ幅だったという。元原型師だった彼は、自らラグを削り適切なサイズを決めていった。「0.4mm、0.3mm、いろいろ試しましたが、最終的に落ち着いたのは0.5mmですね」。プロトタイプとして作られたNH TYPE 1Aは極めて太いラグを持っていたが、1Cでは標準に近づいたと言えるだろう。「1Aの太いラグを好む人がいるのは分かっていますけどね」とは飛田氏の弁である。もっとも、NAOYA HIDA & Co.の特徴である大きく曲がったラグは、本作も同じだ。ケース素材も今までに同じSUS904Lで、加工は微細加工機を導入した精密加工会社によるものだ。

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