Chrono24のデータから見る、コロナが世界の時計マーケットに与えた影響

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2020.05.27

コロナ禍は世界の時計マーケットにどんな影響を与えているのか。それを示す興味深いデータをドイツのオンラインサイト、Chrono24が公開した。データから推測できるのは、コロナ疲れに耐えられなくなった消費者達の「反動」である。

広田雅将(本誌):文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)


コロナ禍で注目されるオンラインセールスの可能性

 コロナ禍が進む中で、多くの経営者達は、オンラインセールスが伸びるだろうと語った。それを示すひとつの裏付けがある。ドイツのChrono24(クロノトゥエンティフォー)が、コロナ禍の中で、オンラインセールスがどのように推移したかというデータの公開だ。タイトルは「世界的なコロナウイルス危機下における、世界的な時計売買の動向」。3月26日に発表されたこのデータが示すのは、時計の市場が、少なくともオンライン市場においては、コロナ禍から立ち直りつつあるという事実だ。

 時計好きの皆さんならご存じの通り、Chrono24は、世界最大級のオンラインウォッチセールスのポータルサイトである。その規模は、普通の時計販売店をはるかに凌駕し、3000のディーラーと、2万人のプライベトセーラが、約47万点の時計を出品している。年間取引高は約15億ユーロ(日本円でおよそ1755億円/1ユーロ=117円で換算)。同社は出展者から手数料を受け取って、このサイトを運営している。いわばセールスの仲介者だが、手厚い保証制度や、ローカリゼションに積極的なこともあって、今や、世界の時計市場を語る上では欠かせない存在となった。

 データの冒頭は次のように始まっている。「コロナウイルスの危機が中国国外に広まり始めた後、セッションには急激な落ち込みがあったが、私たちはすでに回復の最初の兆候を見せている」。週間のセールスは、コロナウイルスの前に比べて15~20%の減少を見たが、各国とも3月下旬には回復傾向にある。

これは2018年1週から、2020年12週(3月16日から22日)までのセールスを記したデータである。なお、チェックアウトではないことに注意されたい。2020年の10週までは順調に伸びていたが、コロナ禍が広まり始めた、11週(3月9日から15日)と12週は大きく減少しているのが分かる。以下のデータは、それ以降、市場がどう変わったかを示すものだ。

 Chrono24は、KPIとして、アクセス数を示す「セッション」と、実際の取引を示す「チェックアウト」のふたつを持っている。同社はこのふたつのキーKPIを開示した。ただし、同社の開示した情報は、いつに比較してプラスなのかマイナスなのかが不明であり、その点は考慮すべきである。また、チェックアウトは保証サービスであるエスクローとやりとりされるものであり、成約金額と同じではない。コロナ禍により各国の郵便が遮断されている現在、支払いを済ませても、物が送れずに制約しない事例は少なくなさそうだ。そのためチェックアウトの額と、実際の成約金額には大きな開きがあると予想できる。概要は以下。

これはコロナ禍が広まり始めた2020年2月13日から、ヨーロッパで猛威をふるい始めた3月25日までのセッション(左)とチェックアウト(右)を示したデータ。なお、24日の時点でのCOVID-19感染者数は全世界で約38万人、死亡者数は1万6000人以上と、5月27日よりもはるかに少ない。しかし、消費者の動きは、3月15日を境に回復に向かったことを示している。