リストランテ イ・ルンガ(世田谷)/この世ならぬ美味のクリエイター

LIFEIN THE LIFE
2020.07.06

イタリア版ミシュランで、日本人として初めて星を獲得した堀江純一郎氏。料理人として25年、「リストランテ イ・ルンガ」が10年を迎えた節目に、その料理への思いに迫る。

外川ゆい:取材・文 Text by Yui Togawa
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura

リストランテ イ・ルンガ

アニョロッティ ダル プリン
北海道産のホルスタインかジャージー牛のネック、ヴェネト産のウサギ、三元豚のロースを、それぞれローズマリーなどと調理し、6:3:1の割合でイタリア産米やグラナパダーノなどと合わせてパスタに詰める。ワインは、料理の複雑さが点と点で結ばれるような
バルベーラが好相性。昼夜共にコースに入れず、エクストラでオーダーできるスタイルで常に用意する。


想像を遥かに超える味わい

 皿の料理が、どのように作られているか想像すること。それは、食べ手にとっての楽しみといえる。目の前に置かれた料理のビジュアル、香り、味わい、食感に、自身の経験を加えて、食材や調理法に思いを巡らせる。こちらの「アニョロッティ ダル プリン」においては、その想像が実に難解ゆえ、より好奇心をかき立てられる。作り手である「リストランテ イ・ルンガ」のオーナーシェフ・堀江純一郎氏が、初めてこの料理に出合った時もそう感じ、自らの手で極めたいとのめり込んだ。

リストランテ イ・ルンガ

堀江純一郎(Junichiro Horie)
1971年、東京都生まれ。25歳でイタリアに渡り、トスカーナ州とピエモンテ州を中心に約9年間研鑽を積む。2007年、東京・西麻布に「リストランテ ラ・グラディスカ」をオープン。09年に奈良・東大寺門前に「リストランテ イ・ルンガ」を開業し、19年2月に東京・二子玉川に移転。

 遡ること二十数年前、イタリアに渡った堀江氏が、最初に研鑽を積んだトスカーナからピエモンテに移った頃。修業先の「イル・カシナーレ・ヌオーヴォ」で、初めて口にしたこのパスタに衝撃を覚えた。牛、ウサギ、豚のミンチとホウレン草などを詰めたパスタなのだが、塊肉で焼くところから始まり、米を炊く、パスタをつまむなど、イタリア料理の基本技術が凝縮されている。決して華やかとはいえない姿だが、計り知れない工程によって完成しているのだ。口に運べば、肉汁とバターの香りがふわりと弾け、複雑ながら見事に一体となった素材の旨味が広がっていく。初めて味わった時には目を見開くような感動に包まれ、二度三度と口にすれば懐かしさと安堵が染み渡る。

 「ピエモンテ人より美味しいピエモンテ料理を作るしかない」と孤独の中で料理と向き合った堀江氏。2002年には「ピステルナ」のオープニングシェフに抜擢され、オープンからわずか1年5カ月で日本人としては初となる現地イタリア版ミシュランでひとつ星を獲得した。

 帰国後、西麻布、奈良、そして二子玉川と場所を移しても、代表作「アニョロッティ ダル プリン」を作り続けている。「食がファストになる現在、イタリアで身をもって体験したからこそ知り得る自分ならではのディープな手を掛けた料理を表現し続けていきたい」と語る堀江氏。今、この一皿を口にできることを、心から幸せに思う。


リストランテ イ・ルンガ

「花水木の街」二子玉川をイメージし、木漏れ日のように光が差し込む店内。天井の高さを活かし、真鍮の照明がランダムに吊るされている。飾られている絵は、修業時代にイタリアで購入した数々。

東京都世田谷区玉川3-13-7 柳小路南角1F
不定休 11:30~14:30(L.O.13:30)、18:00~22:00(L.O.19:30)
昼3800円~、夜1万円~(消費税・サービス料別)
完全予約制
http://i-lunga.jp/


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