グランドセイコーのGMTモデル。GMT機能の基礎から特徴まで解説

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2020.12.15

外国企業との取引やインターネット上のやり取りが一般的になり、海外との心理的距離は近くなったが時差が存在することに変わりはない。国際的に活動するならば、第2時間帯をスマートに把握できるGMT機構搭載モデルが実用的だ。グランドセイコーのGMTモデルを紹介する。

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グランドセイコーの成り立ちと高度な技術力

2020年に60周年を迎えたグランドセイコーは、日本が誇る高級腕時計ブランドであり、世界市場への展開も意欲的だ。グランドセイコーの歩みと、抜群の性能を誇るムーブメントについて見ていこう。

グランドセイコーの歩み

1960年、スイス製高級腕時計に対抗できる国産最高級腕時計を目指してセイコーから初代グランドセイコーが発売された。

翌年には輸入関税の緩和によって競争は過熱化するが、高級腕時計に相応しい精度や機能を求め、グランドセイコーは進化を続けていく。

95GS

「95GS」

1967年には「セイコースタイル」の基盤となる高精度な手巻モデル「44GS」、88年には年差±10秒のクォーツ式時計「95GS」、2004年には自動巻かつパワーリザーブ最大約72時間のスプリングドライブ式時計を発表した。

世界で認められ海外市場での売上高を伸ばしていったグランドセイコーは、17年にはセイコーから独立し、高級腕時計に特化したブランドとしてさらなる高みを目指している。

独自技術を搭載した3タイプのムーブメント

グランドセイコーは「9Sメカニカル」「9Fクォーツ」「9Rスプリングドライブ」という3タイプの駆動方式を使い分け、いずれも徹底して高機能化を図っている。

9Sメカニカルは、精密加工技術MEMS(メムス)製法によってヒゲゼンマイまで自社製造し、スイス・クロノメーター規格よりも高い精度基準「グランドセイコー規格」に準拠する平均日差+5秒〜−3秒の高精度を実現した。さらに、それを超える高精度をかなえた平均日差+4~-2秒の「グランドセイコースペシャル(GSS)規格」を満たすモデルも存在する。

9Fクォーツには3カ月のエイジングを行った水晶振動子のみを採用し、駆動中は毎日540回の検温も行って誤差修正を行う。トルクが弱いというクォーツ式の弱点を克服し、重く太い針を回す「ツインパルス制御モーター」や、秒針の動きを安定させる「バックラッシュオートアジャスト機構」なども秀逸だ。

9Rスプリングドライブは、機械式の主ゼンマイによる大きなトルクと、クォーツ式のIC・水晶振動子による制度制御とを兼ね備える。なめらかに秒針が動くスイープ運針も特徴だ。


グランドセイコーの特徴

グランドセイコーの腕時計のデザインの本質は、独自のデザイン「セイコースタイル」によって確立している。結果的にデザイン上の差異は少ないが、2017年の独立以降はこれまでにない挑戦が見られる。

グランドセイコーを特徴付けるデザイン性・実用性・ブランドイメージを、主に伝統的な解釈から見ていこう。

デザイン性の高さ

グランドセイコーのデザインとして特徴的なのは、1967年の「44GS」によって確立された「セイコースタイル」と呼ばれるデザインコードで、平面を基調とした見やすく美しいデザインとなっている。

ケースは「ザラツ研磨」によって丁寧な下地処理を施してから鏡面仕上げをし、派手ではないが上質な高級感を生む。

バンドはSSブレスレットやクロコダイルストラップが多く、総じてビジネスシーンに親和性の高いデザインである。

実用的な機能美

グランドセイコーが追求するのは、時計の本質。つまり実用性を伴った美である。

視認性の高いダイアルや、高精度なムーブメント、誤操作の起きづらいクロノグラフ機能などがそれに当たる。

パワーリザーブの延長にもこだわり、9Sメカニカルでは最大約80時間、9Rスプリングドライブでは最大約192時間(約8日間)にも達し、末長く安心して使っていける高級腕時計が目指されている。

国内有数のブランドイメージ

グランドセイコーは国産最高級時計を目指して誕生し、2017年には高級腕時計ブランドとして独立、20年には誕生60周年を迎えた。

ムーブメントの基本設計や部品から最高水準の品質を求めてきたグランドセイコーは、精度や機構に関してスイス高級腕時計以上の評価を受けることさえある。

ブランド独立後は海外市場をより強く意識し、数百万円以上のモデルを数多くリリースするなど、世界に通用する高級ブランドとして価値は高まっている状況だ。