ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022レポート【その2】 右はジュネーブ、左はバーゼル!? そして2023年の「拡張の可能性」は?

FEATURE役に立つ!? 時計業界雑談通信
2022.06.19

ウォッチジャーナリスト渋谷ヤスヒトの役に立つ!? 時計業界雑談通信

バーゼルワールドのビッグブランドを吸収するかたちで、3年ぶりにリアル開催されたスイス・ジュネーブの時計フェア「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022」。何とか取材した者として、どんなフェアだったのかを報告する。今回は会場のレイアウトから、新しいこのフェアの性格や未来について。なお、前回も述べたが、これは2022年4月に現地での取材中にジュネーブで書いたものだ。

渋谷ヤスヒト:写真・文 Photographs & Text by Yasuhito Shibuya
(2022年6月19日掲載記事)
ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022レポート【その1】 たどり着いたら「マスク・ゼロ」のスイス
https://www.webchronos.net/features/81065/


ラグジュアリーな雰囲気はそのままの「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022」

 さて現地から2回目のレポートは、まず「この時計フェアがどのようなものだったのか?」「2019年まで開催されていた2大時計フェア、SIHHやバーゼルワールドとは何が違うのか?」、その説明から始めたい。

 新しい「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022」の会場のデザインやインテリアは、2019年まで開催されていたSIHHを基本的に引き継いでいる。

 入場ゲートや空港に似た手荷物検査ゲートがあるなど、会場の基本構成はSIHHと同じ。ブースの基本デザインもSIHHと同様だ。とはいえ、個々の時計ブランドのブース以外の共用部分はそれよりかなりスッキリ、シンプルな雰囲気になっている。

 ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022の会場がどのような配置だったか、来場者の視点でご紹介しよう。

 まずは、入場パスの受け取りから。プレスの場合、かつてのSIHHでは会場内の受付カウンターでの受け取りだったが、2019年以前の数年は日本で受け取る形式になっていた。

 だが今回のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022では、事前にひとりひとりにメールでQRコードが届き、それを会場外、シャトルバス乗り場の向こう側に建てられた新たなプレハブ建築内の受付で提示。そこで入場パスを受け取る形式に変更された。そして、このブレハブ建築内には、荷物預かり&新型コロナウイルス検査コーナーも設けられていた。

 入場パスを受け取ったら、いよいよパレクスポの会場内へ。最初のセキュリティーゲートでは、マスクを外して顔全体が見えるようにしてから、センサーにパスでタッチして通り、次に空港と同様のX線による手荷物検査と磁気探知機付きのゲートを無事通過。通路を左方向へ歩いていくと、いよいよ会場の入り口だ。

 まず左手に受付、その奥には時計関係の書籍を販売しているブックショップがある。そして反対側には記念写真撮影ブースがある。

 2019年以前に開催されていたSIHHで毎年感心していたのは、時計ブランドの展示以外の部分に、高級時計文化の振興と啓蒙を目的にした主催者であるFHH(高級時計財団)らしい独自の文化的な展示があることだ。

 ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022も、主催者が同じFHHだから当然だが、今回もその方針はしっかりと貫かれている。ブックショップの横にはショーケースがあり、その中には『TRAITE DE L’HORLOGERIE MECHANIQUE ET PRATIQUE』(時計の扱い方 メカニズムと実技)というフランス語の古書が展示されていた。これは時計学としては重要で、歴史的な本に違いない。

ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022会場内のブックショップ横に展示されていた、時計学の名著と思われる古書『TRAITE DE L’HORLOGERIE MECHANIQUE ET PRATIQUE』。

 さらに進むと真正面に柱型の案内板、その奥に「オーディトリアム」が見えてくる。ここはKey Noteセッション、つまり時計ブランドのCEOなどがスピーチや新作のプレゼンテーションを行うステージ。このオーディトリアムの前で通路はT字路になっている。そして、会場は右と左に大きく分かれる。


右は“ジュネーブ・サロン”、左は“ミニ・バーゼル”

正面奥がオーディトリアム。ここが、旧SIHH組と旧バーゼルワールド組のふたつの会場への分岐点だ。

 右に曲がると、そこにはおなじみのSIHHの世界があった。ボーム&メルシエ、IWC,ヴァン クリーフ&アーペル、ロジェ・デュブイ、ピアジェ、A.ランゲ&ゾーネ、ジャガー・ルクルト、カルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ピアジェ、パネライ、そしてエルメス、パルミジャーニ・フルリエ、ユリス・ナルダン。2019年のSIHHに出展していたブランドのブースが並ぶ。

 左に曲がると、通路の左側には2019年のSIHHにもあった時計ブランドが取り組む新技術を展示する「LAB」ブースが。そして、その右側が独立系のブランドが集まる「カレ・デ・オルロジェ(時計の広場)」エリアの入り口だ。さらに左側に並ぶプレス用レストランやプレスセンターの前を通り抜けると、その奥にはかつてのバーゼルワールド、メインホールの中央と同じ光景が出現した。

 パテック フィリップ、ロレックス/チューダー、そしてショパールが居並ぶ、あのおなじみのブースが、バーゼルワールドと同じ配置でそのまま展開されているのだ。

 さらに進むとシャネルに突き当たる。そこを右に曲がると正面にウブロ。さらに右に曲がると、右側にオリスとグランドセイコー。左側にはゼニス、タグ・ホイヤーのブースが並ぶ。ただ、こちらのブースのデザインはSIHHでおなじみのスタイルだ。

 これが今年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022の様子だ。つまり、かつてのバーゼルワールド組の出展ブランドは少ないが、ジュネーブとバーゼル、ふたつのフェアを統合したイベント、つまり「SIHH プラス ミニ・バーゼルワールド」というかたちで開催されたのである。